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ビジネス烈伝 シミズフィリピン社 社長 平松 定勝氏

一気通貫の体制で、お客様の未来を築くーー
市場と向き合うシミズフィリピン社の挑戦

 

シミズフィリピン社
社長 平松 定勝氏

 

 

 

現地法人設立以来、36年にわたりフィリピンの建設業界とともに歩んできたシミズフィリピン社。社長・平松定勝氏は、11カ国にわたる海外経験を活かし、日系企業との堅固な信頼を礎に建設事業を展開するほか、フィリピン日本商工会の建設部会長としても活躍する。市場の複雑な構造を読み解きながら、挑戦を続ける同社のビジョンとは? 平松社長にお話を伺った。

 

 

編集部

 

シミズフィリピン社の沿革と業務内容を教えてください。

 

平松氏

 

シミズフィリピン社の設立は1989年、現在の社員数は173名で多国籍かつ専門性の高いスタッフが在籍し、日系・非日系を問わず、市場の変化に応じた幅広い建設ビジネスを展開してきました。
私たちシミズフィリピン社が展開する民間建設ビジネスは、ローカル建設ライセンス(PCAB(フィリピン建設業認可委員会)の規定による建設許可証)に基づいて行っており、マニラ地下鉄プロジェクトなどのODA(政府開発援助)プロジェクトは、そのプロジェクト単位の特別な建設ライセンスに基づき、親会社である清水建設が担っています。

 

 

編集部

 

シミズフィリピン社の強みは?

 

平松氏

 

「設計施工スキーム」、すなわちシングルウィンドウ体制による建設トータルコーディネーションにあります。単に建物を建てるのではなく、お客様のビジョンを共有し、課題解決型のご提案を通じて、プロジェクト全体の品質と価値を最大化することです。

私たちは「建設の総合プロフェッショナル」として、プロジェクト初期段階のデザインから積算、スケジューリング、施工、引き渡し、さらにはアフターメンテナンスサービスに至るまで、一気通貫の建設プロセスにてお客様をサポートしています。プロジェクトの初期段階から深く関与することで、より的確なコスト管理とスケジュール調整、そして高品質な成果物の提供が可能になると考えています。

 

 

編集部

 

フィリピンの建設業界の特徴は?

 

平松氏

 

フィリピンの建設業界は、ローカルゼネコンが多数を占めており、激しい価格競争が常態化しています。私たち日系ゼネコンは品質・安全・工程管理等で高い基準を維持していますが、コスト面では地元企業には敵いません。そしてコスト重視ゆえに、先進技術導入が進みにくいという課題があります。

さらに、アヤラやSMなど財閥系企業が市場を支配し、自社ゼネコンを持つため、外国系企業が新規参入するのは容易ではないという事情もあります。PCABライセンス制度の運用実態も外資参入の大きな障壁となっており、制度的・商習慣的な壁が依然として高く存在しています。また、フィリピン市場においては分離発注が一般的で、我々の強みである設計施工の一括対応の技術が十分に活かされにくい環境にあります。設計施工のメリットを理解していただくための活動が、ますます重要だと考えています。

 

 

編集部

 

日本商工会建設部会長をお務めですが、これらの課題にどう取り組んでいますか。

 

平松氏

 

フィリピン日本商工会建設部会では、フィリピンの建設業界における公平性と法の支配を守るため、特に外資企業に対する不公平な規制の是正を重要な課題として取り組んでいます。中でも、100%外資企業がPCABの建設ライセンスを取得できないという制度的な障壁は、建設業界全体の透明性と健全な競争性を損なう重大な問題だと捉えています。

フィリピン最高裁ではこうした外資規制が違憲であると判決も出ているのですが、現場レベルでは未だ「外国企業」として特別な枠組みに分類され、対等な競争の場に立てません。我々が求めるのは、「公平な入札機会」と「透明で開かれた競争環境」の実現です。
また外資に対する、事業保証金の積立や再渡航義務など、コスト増にもつながる不公平な取り扱いに対しても、在フィリピン日本大使館のご協力もいただき、継続的な対話と交渉を重ねています。制度改訂に向けた前向きな姿勢も一部には見られますが、まだ十分とは言い難い状況です。

この課題の解決はフィリピンの建設業界が国際的な信頼を獲得し、より開かれた市場環境を築くためには、制度改革は避けて通れないと確信しています。

 

 

編集部

 

フィリピンにおける建設業界の役割は?

 

平松氏

 

フィリピン経済は、ASEAN諸国の中でも高い成長率を維持しており、インフラ整備の進展に伴い、駅周辺を中心とした都市開発も今後ますます活発になるでしょう。私たちも、オフィスやホテル、ショッピングモール、飲食関連施設など、内装を含む新たな分野への展開を視野に入れています。

ただし、経済成長の恩恵が社会全体に十分に行き渡っているとは言い難く、建設投資が拡大する一方で、市場構造の閉鎖性や制度上の障壁が依然として高いのが現実です。 
私たち建設業界は、表面的な数字だけに惑わされず、市場の本質や構造的な課題を見据えて、中長期的な視点でどう貢献していけるかを真剣に考える必要があると感じます。 今後、私たちはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などのエンジニアリング支援や、ローカル企業とのアライアンスも視野に、 ローカルマーケットインを模索していく予定です。これは品質管理やマネジメントに課題を抱えるフィリピン市場で、私たちが果たすべき重要な役割だと認識しています。

私たちが常に大切にしているのは、「お客様にとって最良の選択肢であること」。そのために必要なのは、技術や知見を一方的に押しつけるのではなく、お客様の視点に立ち、本当に必要とされる提案を行うことです。たとえ小規模な案件であっても、そこに誠実に向き合い、確かな信頼を積み重ねていくことが、やがて大きな成果につながると信じています。

フィリピンは、大きな可能性を秘めた国であると同時に、制度の不透明さや経済の閉鎖性、税制上の不均衡といった構造的な課題にも直面しています。私たちは、こうした現実と誠実に向き合い、柔軟に変化に対応しながらも、シミズフィリピン社として、確かな品質と信頼をもって事業を進めてまいります。

私たちシミズフィリピン社は実績と誠意をもって、皆さまの信頼できるパートナーとなることを目指しています。どのような小さなご相談でも構いません。どうぞお気軽にお声がけください。フィリピンの地での皆さまの発展のお手伝いをさせていただきます。

 

※シミズフィリピン社のマネジメント法は? また豊富な海外経験を持つ平松氏が永住するならこの国!とおっしゃる国は? 気になる続きはUP次第SNSでお知らせします!

 

【プロフィール】
1992年に大学卒業後、清水建設株式会社へ入社。横浜支店にてキャリアをスタートしたのち、96年より海外勤務を開始。以来、香港、中国、マレーシア、ドバイ、インド、メキシコ、シンガポール、タイ、バングラデシュ、ベトナムと10カ国に赴任し、2021年から現職。各国の建設現場に深く関わりながら、“現場主義”を貫く国際派ゼネコンマン。

 

【趣味】
ゴルフと料理です(笑)。単身赴任が長いので、自然に身につきました。

 

 

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