コスパに優れた製品と強固な販売・サポート網で躍進!
新製品投入で“次の成長の柱”となる新規事業に挑む

Brother International Philippines CORP.
Product Manager, Corporate Sales Manager 高木 駿 氏
プリンターの世界的ブランドBrother。そのフィリピン法人が、現地進出から25年を迎え、今、新たな挑戦に乗り出している。スポットクーラー「ピュアドライブ」の発売開始は、単なる新製品の登場ではなく、そこにある同社の強み、フィリピンでの戦略、そして「At your side」という企業理念に裏打ちされた思いが含有されているという。同社で唯一日本人として活躍する高木氏にお話を伺った。
編集部
ブラザーグループの中での御社の位置づけを教えてください。
高木氏
ブラザー工業(以下ブラザー)は1908年、愛知県で創業しました。当初はミシンの修理業からスタートし、その後ミシンの製造へと事業を拡大。やがてタイプライター、プリンターへと技術を発展させ、現在ではプリンターが主力製品ですが、その他にも工作機械や産業用プリンターなど幅広い製品展開を行っています。
ブラザーの特徴の一つに、海外売上比率の高さがあります。現在は、およそ9割が海外市場売上で構成されており、中国、ベトナム、フィリピンといったアジア諸国にも製造・販売拠点を構えています。その中にあってフィリピンは、製造を担うBrother Industries (Philippines), Inc.と、販売を担う弊社 Brother International Philippines Corp.の両法人が存在する数少ない拠点として、戦略的に重要なポジションを占めています。
編集部
これまでのフィリピン市場展開は?
高木氏
Brother International Philippines Corp.は2001年設立、来年で25周年を迎えます。 これまで「売上の拡大」、「地域拠点の増加」という2軸で業務を推進してきました。設立以来、パンデミック期を除き売上を順調に伸ばしており、特にインクジェットプリンターの分野では、着実に市場の信頼を獲得できたと実感しています。
パンデミック中は、在宅勤務やオンライン授業の普及により、A4サイズのインクジェットプリンターへの需要が急増しました。フィリピンでは、このサイズのプリンターが業務用途でも使われるケースが多く、役所への提出書類や各種申請に必要な印刷業務を支える存在になっています。一時期、世界的な物流の混乱で供給が追いつかず、販売台数は一旦減少したものの、21年以降は供給体制も徐々に安定し、再び売上・台数ともに成長軌道に戻りました。
フィリピン市場で重点をおいているのは、お客様との距離感の近さです。当社のグローバルスローガンでもある「At your side」の精神に基づき、製品を売るだけでなく、その後のアフターサービスも含めて、お客様に安心して弊社製品を利用していただける体制づくりに尽力しています。
販売面では、地方にも迅速なサポートが届けられるように全国に7支店を構え、今後も拡大していく予定です。また、販売パートナーとは長期的な信頼関係を築いています。20年以上の取引のあるパートナーもおり、密に連携しながら、ブランド価値を損なわないよう慎重に販売網を拡大しています。
現在、フィリピンにおける事業戦略は、現地の環境課題や産業構造に寄り添った製品展開を軸に進めています。たとえば、ラベリングプリンターなどの業務用製品は、データセンターや出荷現場といった具体的なユースケースを前提に展開し、ハードウェア販売にとどまらず、システム連携やカスタマイズ対応などの「スペシャルソリューション」を提供しています。こうした現地密着型の戦略は弊社ならではの強みだと考えています。
編集部
新製品の発売とその意義は?
高木氏
ブラザー製品の特徴は、独自の技術力とコストパフォーマンスの高さにあります。高性能でありながら価格を抑えた製品は、お客様から「コストパフォーマンスが良い」と高く評価されています。そうしたニーズに応える設計と、強固な販売体制、きめ細やかなアフターサポートが、ブラザーの競争力を支えています。
今回発売となる新製品「ピュアドライブ」は、スポットクーラーで、従来のプリンターやミシンとは異なる新しいカテゴリーの製品です。暑さ対策や高まる環境意識に応えるソリューションとして開発しました。最大の特徴は、冷却にフロンガスを使わず、水を利用した気化冷却方式を採用している点です。これにより環境負荷を大幅に抑え、排熱もなく、電力消費も従来型スポットクーラーの約7~9割を削減できます。
ターゲットは、工場や倉庫など広い空間で働く作業員の「局所冷却」です。また、それ以外にも屋内外のイベントや、体育館などの運動施設など、ルームエアコンが効きにくい場所でも活用していただけます。1台で複数名を快適に冷やせる設計で、労働環境の改善にも寄与します。価格は約6万5千ペソと、同等性能の他社製品に比べても非常にリーズナブルです。これからのフィリピン市場において、快適さと環境性能を両立する新しい選択肢として、多くの企業の皆さんに当製品を採用していただきたいと考えています。ご興味がありましたらぜひご一報ください。
編集部
中期的な今後の展開は?
高木氏
弊社の中期的な目標は、既存の主力事業を安定的に維持しながら、“次の柱”を確立することです。プリンターでは法人向けの契約型サービスなどビジネス分野への比重を高めながら、同時にプリンター以外の新規事業を成長の柱の一つとして育てていく考えです。
特に、「ピュアドライブ」やラベリングプリンターなどの業務用製品を中心に、製造・物流現場への提案力を強化し、“業務用ソリューション企業”としてのポジションの確立を目指していきたいと考えています。また、ローカライズ対応も重要であり、販売やサービスだけでなく、製品提案や仕様調整、システム連携に至るまで、フィリピン特有のニーズに応える柔軟な対応を進めていきます。
また近年はソフトウェア連携への要望も高まっており、日本本社と密に連携しながら、現地企業に合わせたカスタマイズを行うことで、より高い付加価値を提供していきたいと考えています。
編集部
人材育成で傾注しているのは?
高木氏
日本では当たり前のように行われる進捗報告やスケジュール管理が、フィリピンでは必ずしも自発的に行われるとは限らず、何度もリマインドが必要なことも多いですね。現地スタッフの業務スタイルや価値観の違いは感じます。外部業者との連携も含めた全体管理となると、さらに難易度は高まり、トレーニングも必要です。しかしブラザーの企業理念である“At your side”の精神を現場にも根づかせ、お客様に安心と満足を提供できる体制づくりを社員、パートナーとともに進めていきたいと思っています。
また、クリスマスパーティーや従業員の家族を招いて行うファミリーデーなど、様々な従業員向けアクティビティーを行っています。みんなそれらを楽しみにしながら、日々業務に励んでいます。
【プロフィール】
神奈川県出身。大阪大学経済学部卒業後、ブラザー工業株式会社に新卒入社。商品企画部門に所属し、インクジェットプリンターやモバイルアプリの開発・商品戦略に従事。2023年より唯一の日本人として現職に就任。
【趣味】
サイクリング。最近はあまりできていませんが、ルソン島南部まで行ったことも。
【仕事上大切にしていること】
常に意識しているのは、相手の性格や状況を見極めて、最適なコミュニケーションを取るように心がけています。それは、“At your side”というBrotherの精神にも通じるところがあると感じています。




























