オンライン英会話で日本人1000万人が英語を話せる世の中に
レアジョブ 代表取締役CEO
加藤智久さん
1980年生まれ、東京都出身。
外資系戦略コンサルタント会社に勤務後、2007年株式会社レアジョブ設立。
グローバル化に背中を押され拡大の一途をたどるオンライン英会話。フィリピン人講師とスカイプを使った斬新なレッスンと、常識を打ち破る低価格戦略が功を奏し、パイオニアとして業界を牽引するレアジョブ。加藤智久社長にお話をお聞きしました。
編集部
益々高まる英語需要で、オンライン英会話レッスンの業界は活気づいています。
加藤さん
おかげさまで、これまで累計で約14万人の会員様にご登録いただきました。現在の実稼働講師数は約3000人に上ります。2007年に3人で会社を立ち上げた時、限定的なスタートでしたが2ヶ月のプレサービスで会費を払ってくれた会員様はたった2人だけでした。そこからの成長を鑑みても、今後もオンライン英会話の市場はまだまだ成長の可能性が広がっていると予測しています。
編集部
レアジョブを立ち上げたきっかけを聞かせてください。
加藤さん
2005年頃にスカイプを使い始めたのですが、その時に「スカイプ周辺でビジネスをすれば必ず拡大する」と確信しました。そこでまずはスカイプを使った中国語会話を始めたのですが、結局は頓挫してしまったんです。やはり英語だということになり、海外の講師はどこで、という模索の中でフィリピンにたどり着きました。とは言え、ビジネスの舞台をフィリピンに決めたのは正直いって直感だったんです(笑)。知り合いもいませんでしたし。とにもかくにも当時勤務した外資系コンサルタント会社の休暇を使って、まずはフィリピンに向かいました。
編集部
実際にどういった活動をされたのでしょうか?
加藤さん
全て手探りで進めました。まずは国内最高学府のフィリピン大学を訪れ、講師募集の張り紙を出したんです。その時にたった一人だけ会えた大学生が、後に創業パートナーとなったフィリピン人講師です。その講師が大変有能だったという運にも恵まれました。その後、実際に会社を立ち上げてからはパソコンの買い出しから回線の整備まで、自ら走り回りました。
編集部
オンライン英会話のみならず、学生や社会人の英語留学でもフィリピンは注目が高まっています。
加藤さん
フィリピン人は英会話講師として最高の資質を備えていると思っています。英語能力はもちろん、相手が何を言いたいのかを察する感覚や、会話を「楽しむ」ことができる気質、そういった彼らの持つホスピタリティーこそが講師にうってつけなんですね。
編集部
競合他社も増えました。レアジョブの強みとはどんな点でしょうか?
加藤さん
サービスの基本となりますが、講師の質には強い自信を持っています。競合の増加はそれほど問題にしていません。オンライン英会話は人のビジネスです。単に会員様の獲得に走るのではなく、会員様の増加に合わせて講師もバランスよく増やしていくことが極めて重要です。講師の質を保ちながら数を増やして行くのは簡単ではありません。当社は実に8割の講師を、現役講師からの紹介によって獲得しています。いい講師の知り合いは、やはりいい講師なんです。その上でさらに厳格な選考をかけ、採用後は定期的なスキル診断、会員様からのレッスン評価による日々の改善を積み重ねています。会員様は自分が話したい話題にマッチした講師を、webサイトで検索することができます。実はフィリピン在住の方でレアジョブを利用して下さっている会員様も多いんです。
編集部
順調に会員数を伸ばしてきた成長を支えてきたものはなんでしょうか?
加藤さん
最も重要視してきたのは会員様によるレッスンの口コミです。今後も、愚直に会員様が必要としている物を提供していくことに専心したいですね。何を必要とされているのかを常に的確に見極め、それに基づいた施策の実行スピードを加速させていきたい。そうした積み重ねが、更なる良い口コミを生んでくれると信じています。その上で、ビジネスの大局では波に乗ることも忘れずにいたいですね。
編集部
「波に乗る」といいますと?
加藤さん
大学時代から趣味でサーフィンをしているんですが、ビジネスとサーフィンには多くの共通点があると思います。どこでどんな波を待っているかが非常に大事。上手な人は、どこにいい波がくるのかを見極めて、すっと移動している。レアジョブのビジネスについては、まずは最初の波には乗ったかなと思います。とはいえ、オン ライン英会話のステージはまだまだ広がります。今は次の波を見極めているところです。その波に向かって、的確に動いていきたいですね。
編集部
社員をたいへん大切にされていますね。
加藤さん
本社スタッフへの福利厚生には力を入れています。寮を設けており、正社員で希望する人は誰でも無料で入寮できます。ランチも、オフィス内の食堂で無料で食べることができるようにしています。みんなで一緒にわいわい食べることで、一体感が高まります。もちろん私も一緒に食べますよ。
編集部
ご自身の英語との関わりを教えていただけますでしょうか。
加藤さん
本好きなので、高校時代からペーパーバッグを多読することで読解力をつけました。英語は得意科目だったんです。しかし、大学休学中に働いていたベンチャー企業で、たまたま取引先の外国人からの電話をとった際に、全く会話できなくて愕然としました。自分の前でスーっとドアが閉まっていくのを感じましたね。英語を話せ なくても生きていけるけれど、可能性が狭まることに気づかされました。その後、外資系の会社に就職してからは社内が多国籍でしたので必然的に英語を使わなくてはならず、ずいぶんと鍛えられました。
編集部
読者の方へのメッセージをいただけますでしょうか。
加藤さん
フィリピン人はこういう人たち、という先入観を持たずにつき合うことが大切だと思います。相手を尊重してつき合うことですね。相手を敬うのは日本人が得意とするところのはずですから。
編集部
最後に、ここから先の目標をお聞かせください。
加藤さん
現在、約1000万人の日本人が英会話の習得を望んでいるといわれています。その1000万人が実際に英語を話せるようにしたい。自動車学校の仕組みというのは素晴らしくて、受講者の9割以上が免許取得という目的を達成して卒業していきます。一つ一つの科目で、何をどう学ぶのか、誰がどう教えるのか、どうやって達成度を見極めるのか、などのプロセスが非常に明確になっています。語学の習得は、運転免許取得よりはどうしても時間はかかってしまいますが、自動車学校と同じように目的達成度の極めて高い仕組みを持つ英語学校が理想です。それを実現することで、1000万人の英会話習得に寄与したいと思います。