豊富な経験生かし、日系企業との架け橋に
BDO Unibank,Inc. Vice President
Marisa M. Quiogue( マリサ・キョーゲ)さん
東京生まれ。セント・スコラスティカ大学卒(Financial Management専攻)。ファーイースト・バンク・アンド・トラスト、BPIを経て、2010年BDO入行。趣味は旅行。日本、イタリア、シンガポール、グアム、香港などを巡った。日本の温泉も大好き。
【好きな書籍】
「モリー先生との火曜日」ミッチ・アルボム著
難病に侵され死を目前にした老教授とジャーナリストの心の交流を描いた。多忙な中でも、家族をはじめ愛する人たちとの時間を大切にしなければいけない、と教えてくれます。
フィリピン最大の商業銀行BDO。総資産額3兆円を超え、アジア諸国のほか北米、欧州、中東にも店舗を展開。香港の経済誌FinanceAsiaにおいて、並みいる銀行の中から2013年ベスト・アジアン・バンクに選ばれた。名実共にフィリピンNo1となった銀行で、日系企業との取引を最前線で担当するジャパンデスクのマリサ・キョーゲさんにお話をお聞きしました。
編集部
まずはキョーゲさんご自身について、お聞かせいただけますでしょうか。
キョーゲさん
父がフィリピン人、母が日本人で、私は東京の祖師谷で生まれ育ちました。9歳まで聖心インターナショナルスクールに通い、その後フィリピンに帰国しました。1981年、大学卒業と同時にファーイースト・バンク・アンド・トラスト(当時)に入行し、法人金融のア ナリストとして勤務しました。
編集部
仕事上で日本との関わりは?
キョーゲさん
アナリストとしての業務では日本との接点はなかったのですが、常々日本と関連した仕事をしたいと思っていました。そこで1986年、海外で研修できる社内プログラムに応募し、ファーイーストの株主だった三井銀行(当時)の本店アジア部で、半年間お世話になりました。
編集部
どのような研修でしたか?
キョーゲさん
午前中早い時間に日本語の勉強をして、その後夕方まで通常の仕事をしました。仕事は他の女性行員の方と同じ業務を一通りさせていただきました。加えて、英文レターを書いたり、日本特有のお茶汲みをしたりもしましたよ。とてもよい経験になりました。
編集部
帰国後、1987年にご結婚されました。
キョーゲさん
主人は元々大学時代の友人です。フィリピン人ですが、やはり日本と縁があり、結婚後に横浜国立大学の大学院に留学することに決まりました。主人に帯同して再度日本に行きたいと考え、ファーイーストに三井銀行での日本勤務を申し出たところ、幸いにも双方から快諾を頂きました。この時は本店の資本市場部で約2年間働きました。金融専門用語をみっちりと覚えるなど、かなり日本語のレベルを上げることができました。
編集部
日本語を学びながらの仕事、さらに 主婦業と忙しい日々だったのでは?
キョーゲさん
アナリスト時代にも、仕事と平行して夜間にアテネオ・デ・マニラ大学大学院で3年間学び、MBA(経営学修士)を取得した経験があります。 キャリアップを目指すのであれば、こうしたことは当たり前の事ととらえていました。
編集部
2度の日本勤務の印象は?
キョーゲさん
世界中どこでも銀行というのは概して保守的ではありますが、日本に比べフィリピンの方が女性のキャリア・アップの機会がオープンだと感じましたね。日本での最初の研修は、男女の行員で全く別のカリキュラムでした。フィリピンでは性別で進むコースの区別はしません。能力がある人が上に行く、というシステムです。
編集部
フィリピンに戻られてからは?
キョーゲさん
1991年に主人が留学を終えるとともに帰国しました。ほどなくして国内はラモス大統領の時代に。外資の誘致に注力した政権で、日本の大企業によるフィリピンへの投資が盛んになっていきました。ファーイーストにおいても、東芝をはじめとする三井系の企業との取引がどんどん増えていきました。
編集部
そこで、ジャパンデスクが設けられ たというわけですね?
キョーゲさん
そうです。私にとって幸運な時代背景でしたね。創設されたジャパンデスクの初代フィリピン人責任者となり、約10年間担当させてもらいました。その後、2000年にファーイーストはBPI(フィリピン・アイランズ銀行)と合併。BPIでも引き続き同じ業務を担当し、両行合わせて足掛け20年、ジャパンデスクにいました。
編集部
2010年、満を持してBDOにヘッド ハンティングされます。
キョーゲさん
前の銀行時代の旧知の人たちが、先にBDOにいたのです。フィリピンではそうしたつながりが意思決定時に重要な役割を果たします。銀行で働くという事は、半分はその人自身の力ですが、残りの半分は一緒に働く人とどれだけ良いチームを組めるかにかかっています。それだけチームワークが求められる仕事です。 さらに、ジャパンデスクを立ち上げたばかりだったBDOで、私が培ってきた力をどこまで発揮できるか挑戦してみたかったということもあります。
編集部
BDOの中でジャパンデスクが担う 役割を具体的に教えてください。
キョーゲさん
PEZA(フィリピン経済区庁)の工業団地内に拠点を置く日系企業、日本商工会議所の会員企業などに、BDOとのおつきあいをオファーさせていただいています。従業員様の口座開設に始まり、ATMの導入、融資、資金運用など、あらゆる銀行サービスの窓口となります。また、最近では日本政府が出資する政策金融機関、国際協力銀行(JBIC)と提携し、日本国内の中小企業の海外進出のサポートをしています。
編集部
それはどのような業務でしょうか?
キョーゲさん
日本の中小企業は地方銀行や信用金庫との取引が中心です。メガバンクと違い海外取引は得意としていません。JBICを通じ、地域の金融機関と協力し合って、企業の海外ビジネスをより効率的にサポートする仕組みを構築しています。BDOは現在までに、常陽、千葉興行、八十二といった7つの銀行とタイアップしました。今年8月には阿波銀行さんとの仕事で徳島を訪ねたんです。阿波踊りの丁度1週間前で、祭りは見られなくて残念でしたが。
編集部
今後、この業務での日本出張が増えそうですね。
キョーゲさん
はい。将来BDOは連絡事務所を日本に設ける計画ですので、それが稼働するまでは日本出張が多くなるでしょうね。今後も三重県や岐阜県を訪ねる予定です。出張は月〜金曜が最も長いパターン。次回の出張は月〜木曜の予定ですから、行き帰りを考えると、実際には中2日が勝負。新幹線やバスを使ってかなりタイトなスケジュールになりますが、日本は交通網が発達して時間も正確ですから、問題ありません。
編集部
BDOの強みを教えてください。
キョーゲさん
第一に、当行は国内最大規模ということです。支店は全国に800以上、ATMは約2,000台あります。特徴的なのはSMグループの中核銀行ということで、全国展開しているSMモールの中には必ず支店やATMがあります。そして、開店時間の長さでは他行の追随を許していません。モール内の支店の多くは19時まで営業しています。その他の一般的な支店はだいたい17時まで開いています。BDO以外の他行は15〜16時には閉まってしまうところがほとんどです。さらにモール内の一部の支店は土・日曜も営業しています。これはお客様にとって決定的なメリットと言えるでしょう。
編集部
日本企業のフィリピン進出が盛んだという印象ですが、実感を聞かせて下さい。
キョーゲさん
2年前頃から、ブラザー、バンダイ、村田製作所といった大企業がフィリピンに進出してきました。それに加え特に肌身で感じるのは、英会話学校、BPO、IT、パーツメーカー、コンサルタントといった中小企業の進出が増えているということです。今後もこの流れは続くと思います。。