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飲食業への投資・起業の可能性を探る 第二弾

大きな反響を生んだ昨年の特集から一年。

フィリピン 飲食業への投資・起業の可能性を探る

昨年掲載しました「飲食業で企業・投資の可能性を探る」は、本誌にも沢山の問い合わせがあるなど大きな反響がありました。そこで、その後の動向について第2弾として前回登場していただいた瀬戸氏に再度お話を伺ってきました。

 

 

 

昨年本紙にインタビュー記事が掲載されましたが、反響はいかがでしたか。

 

瀬戸

 

反響は凄かったですね。驚くほど多くの方からお問い合わせをいただきました。

 

 

 

それは御社が展開中のジャパニーズ・ファーーストフードショップ J.BOYに関する問い合わせと言うことですか。

 

瀬戸

 

J.BOYに関する問い合わせも沢山いただきましたが、フランチャイズではなく独自の飲食店をフィリピンで開業したいという方からの問い合わせも沢山いただきました。

 

 

 

そういった問い合わせにもご対応なさっているのですか。

 

瀬戸

 

まあ、本業がコンサルタントですから、できる限りの対応はさせていただいております。

 

 

 

そのような問い合わせを見てどんな感想をお持ちですか。

 

瀬戸

 

そうですね、フィリピンへの進出熱が非常に高まっていると言うことですね。と言うのも、独自で飲食店を出店されたいという問い合わせのほとんどが、既に日本である程度の飲食事業を展開している会社からでした。名前は挙げられませんが、だれもが知る有名外食チェーンからの問い合わせも数社ありました。
この様な状況の背景には、3つの要因があると思います。1つ目は、既に飽和状態でデフレに見舞われている日本国内市場から、新たなマーケットを求めて海外に進出する飲食店が増えていると言うこと。そして、海外市場の中でアジア諸国は、これまでタイやシンガポールが脚光を浴びてきましたが、既に多くの企業が進出し競争が激化したことも有り、これまで手つかずと言って良いほど日本からの進出が少なかったフィリピンが脚光を浴びたと言うこと。
2つ目として、フィリピンの急速な経済成長も大きな要因でしょうね。私は海外市場で和食のマーケットが熟成するには、ある程度の経済基盤の安定が必要であると思っています。健康に気遣う風潮や、食事を楽しむと言った土壌が整った時に、和食への需要が高まる訳です。フィリピンも、ここ数年そういった土壌が出来てきたと思います。
最後3つ目として、世界的に広がる和食ブームが後押ししているのは確かです。今回、世界遺産に「和食」が登録されたと言うことも更に追い風となるでしょう。

 

 

 

なるほど。確かに昨年は日本から多くの企業が出店していますね。

 

瀬戸

 

ラーメンと豚カツがマニラでブームを巻き起こしたことは、皆さんご存じだと思います。そのブームに乗じて多くの店が日本から上陸しました。まだまだ出店の計画はあると耳にしています。

 

J.BOY

 

 

こんなに増えて大丈夫なのでしょうか。

 

瀬戸

 

フィリピンのマーケットから考えれば、まだまだ少ないとも考えられます。しかし、現在出店されている店の価格帯を見ると、決して万人向けの単価設定をしているとは思えません。フィリピンでは所得に応じマーケットをA~Dの4ランクで分類します。現在ブームのラーメン店やとんかつ店のマーケットはAとBです。ところがフィリピンマーケットの分布を見ればCとDのマーケットが最も大きく、全体の80%以上を占めると言われています。従って、今後はこのAとBのマーケットの動向を見極めていく必要性はあると思われます。

 

 

 

御社で展開されているファーストフード店はCとDのマーケットを対象とされていましたよね。その後いかがですか。

 

瀬戸

 

はい。現在展開しているJ.BOYは、天ぷらが79ペソで天丼でも99ペソと、他とは一線を画した低価格形態を取っています。ターゲットとしているマーケットは、CとDの巨大マーケットです。開店当初は、警戒感もあり当初狙っていたCとDのマーケット層よりもBマーケットの顧客が目立っていま したが、だいぶん浸透したと言うこともあり、狙い通りCとDのマーケット層の顧客が増えています。それに伴い客数も伸びています。低所得者層の顧客が増えたことで、客単価が落ちましたから相対的な売上は客数の伸びほどありませんが、私としては良い傾向であると思っています。

 

 

 

新たにご出店の計画があると伺っていますが。

 

瀬戸

 

はい。2号店がオルティガスにオープンしました。こちらは直営店で、1階がJ.BOYで2階が開業9年目を迎える弊社直営の「相撲茶や関取」2号店と言う形態です。コールセンターの多いビジネス街と言うことでJ.BOYは24時間営業にしました。この他に、ショーボリバードとクバオのアラネタセンターにフランチャイズ店が今春オープンします。この2店はどちらともオーナーは日本人の方で、前回の特集記事を読まれて問い合わせいただいた方です。また、出店場所が確定していませんがフランチャイズの申し込みを受けているのが他に6件ございますので、本年中に 10店舗を目指したいです。

 

 

 

凄い勢いですね。

 

瀬戸

 

商品構成も一つの要因と考えられます。私もマニラで14年レストラン経営をしていますので、フィリピン人の好む味覚は熟知していますし、日本食の好みも理解しています。その中で、天ぷらはフィリピン人の好む和食の中では代表格ですね。そして何よりも米を好みます。またご飯にたれやソースを掛けて食べることを好み、味的には甘塩っぱいものを好む。こう考えると「天丼」がピッタリなんですよね。ですから天ぷら単品でオーダーいただいても、あえて天つゆを添えるのではなく、天丼の甘だれを掛けて提供する。追加のソースを頼まれても、天つゆではなく甘だれをベースとしたつけダレを作って添えるようにしています。日本人の方から、この天つゆは甘いと言われたこともありますが、私どもとしては天つゆをお出ししている訳ではないのです。本来であれば、充分に甘だれが掛かっていますので、そのままお召し上がりいただけるのですが、こちらの方はどうしても何か付つけるタレを欲しがります。それでつけダレを添えるようにしたのですが、味も見ないでつけてしまうため、つけダレ用の甘だれは薄めにしてお出ししている訳です。

 

 

 

充分にフィリピン人の味覚を研究した上でアレンジしている訳ですね。

 

瀬戸

 

アレンジという言葉がふさわしいかどうかは分かりませんが、現地の方に美味しく召し上がっていただくように工夫はしています。私も日本人ですから、日本人から見て首をかしげるようなアレンジはしません。あくまでも日本食の域の中で出来る工夫をしているつもりです。また、味だけではなく提供の仕方1つでも、フォークとスプーンで食べやすいように丼ではなくお皿で食べることも出来るようにしています。

 

 

 

なるほど。様々な工夫がヒットの要因と言うことですね。メニューも増えたようですが。

 

瀬戸

 

提供商品については、テスト的に色々と導入しています。最近ではカレーライスや、デリバリーの需要が多いことでデリバリー向けの幕の内弁当や、鶏の唐揚げ弁当なども始めています。また、現在提供しているうどんに替わり、ラーメンもテスト的に導入する予定です。

 

J.BOY

 

 

これからもメニューは増やしていかれるのですか。

 

瀬戸

 

いえいえ、現在はテスト的に販売していますが、結果を見ながら絞り込む、すなわち減らしていこうと思います。グランドメニューは人気商品で揃えて、期間限定メニューを導入することで目新しさを演出します。また、メニューを絞り込むことで原価率の安定と、人件費の削減を図りフランチャイズ加盟 者の方々の利益を確保するという目的もあります。

 

 

 

着々と形が固まってきている訳ですね。

 

瀬戸

 

そうですね。やってみて解ることもありますから、様々なアイデアを検証しています。私としては、これでなくてはいけないという型にはめるつもりはないのです。現在は天ぷらが主力ですが、数年後には違う主力商品に変わっているかもしれない。それはそれで良いと思います。主力商品というのは、最もお客様から支持を集めた商品ですから、私たちが決めるものではない訳です。私たちがやるべき事は、お客様が求める商品は何かと言うことを考えて商品化するだけです。実際に現在天ぷらが売れていますが、これは天ぷらがフィリピンの方にとって最も解りやすい和食だからと言うことも考えられます。天ぷら以外にも、もっと沢山美味しい和食があることが解れば、需要も変わってくるのではないでしょうか。反対に、天ぷら以外にも美味しい和食は沢山あると言うことを知って欲しいという願いもあります。

 

 

 

私も日本人として、和食の素晴らしさをもっと知って欲しいという気持ちはありますね。ところで、J.BOYは投資対象としてみた場合に何か変化はございますか。現状の数字なども踏まえてお話を聞ければありがたいのですが。

 

瀬戸

 

テスト店として1号店を出店して1年が経過しましたが、マイナスを計上した月はございませんし、当初の狙い通り投資回収2年を切る数字で推移しています。立地条件を考えても充分な実績と思っています。現在取り組んでいるのは、まず初期投資の圧縮です。投資効率が良いとはいっても、加盟される方は少ない投資で大きく儲けたいと言う気持ちをお持ちです。また、現在の実績が好調であっても、新規に出す店にはリスクはつきものです。そのためにも初期投資を出来るだけ軽くしたい訳です。しかし、施工費などは年々上昇傾向にあります。そのような状況下で、いかに投資を抑えるか様々な取り組みをしています。例えば、施工材料の一括購入や、施工業者を絞り込んで一括発注することで施工単価を抑えるなどと言うことから、オリジナルの調理器具を開発することで生産性を向上させるなど、テスト的な段階ですが取り組んでいます。そうした工夫の積み重ねで、更なる投資効率のアップを狙っていきます。投資効率が上がることで加盟者が増える。加盟者が増え店舗数が増加することで、知名度も上がり業績を後押しする。そんな好循環を作り上げることが、今最も必要なことであると考えています。

 

 

 

J.BOYの場合、初期投資は5~6百万ペソでしたよね。確かに大金ですね。

 

瀬戸

 

はい。私どももその大金を投資していただくと言うことを、非常に重たくとらえています。だから考えることを止めないと言うことに繋がるんですよね。もっと良い方法はないか。もっと節約は出来ないか。もっと売れる商品はないか。決して現状に満足することなく、次のことを考えています。先程初期投資のことをお話ししましたが、日々の運営の中でもいかに無駄を無くすか、例えば天ぷらを揚げた際に出る大量の天かす。この天かすも捨てるのではなく、天かすを使ったメニューを開発してお金を生ませる。野菜の屑からも商品開発をする。そうして食材が高騰する中で原価率の安定を図る。そんな小さな積み重ねを着実に続けていくことが強さになるのではないでしょうか。

 

 

 

日々の積み重ねが強さの秘訣と言うことですね。今回も色々と興味深いお話をしていただきましたが、最後にフィリピンで飲食業をお考えの方へ何かアドバイスをいただけますか。

 

瀬戸

 

アドバイスになるかどうか解りませんが、まず日本で飲食店を経営されている方や開業をお考えの方には、これまで飲食店を出店する場合に、どこのエリアで最寄り駅はどこが良いかと考えてきたと思いますが、これからは海外マーケットも視野に入れられてはどうかと思います。それがフィリピンだとは言いませんが、私の知る限りではフィリピンは現在進出するに相応しい市場を形成しています。土壌は出来ています。まず必要なことは、1歩踏み出してご自身の目で見てみることではないでしょうか。フィリピンは治安が悪いとか、政情が不安定だとか風潮に惑わされることなく、ご自身の目で可能性を見極めることだと思います。成功するかどうかの保証はありません。言えることは、釣りに例えれば、魚がいるから釣れるとは限らないが、魚がいない場所では魚は釣れないと言うこと。フィリピンには魚となる潜在需要は日本国内より遙かにあると思います。日給1000円の人が、800円のランチをとる国です。
 
次にフィリピンで飲食店を開業させたいと思われている方へは、「フィリピンだからこの程度で大丈夫だろう」と言うような安易な考えは危険です。安易な考えで開業させても、結果はたかが知れているのではないでしょうか。飲食店は「商い」です。飽きずに飽きられないように続けていかなくてはならないですよね。そのため には、ご自身で納得がいく内容に仕上げること。「まあ、いいか」では駄目な訳です。目先をごまかしても長くは続きません。成功させるにはブランドとして確立させる必要があります。私はブランドとは「こだわりと信用」だと思っています。突き詰めるこだわりがお客様に伝わり、やがて信用を生む。そしてブランドとして認められる訳です。また、「日本で受けたからフィリピンでも・・・」という考えも危険かもしれませんね。日本では世界各国の料理が食べられます。その中で人気店が、本場の店を忠実に再現しているかというと違いますよね。日本人に受け入れられるように様々な工夫がなされています。日本のマーケットを充分に熟知した上で、単に味を日本人向けにアレンジするのではなく多岐にわたり工夫を凝らす。先程お話しした「こだわり」と反すると思われるかも知れませんが、こだわりは持っても臨機応変さも兼ね備える。後はさじ加減だけです。フィリピンのマーケットをよく理解した上で、一ひねりすることが成功のポイントではないでしょうか。

 

 

J.BOYにフランチャイズ加盟されて、開業も目前に控えた秋田さんにもお話をお伺いしました。秋田さんは茨城県在住で、奥様とお子様は現在英語習得のためにセブでお過ごしです。現在、石材業を営んでおられ飲食業とは全く無縁であると言うことです。
 

 

 

 

飲食業とは全く無縁とお伺いしていますが、J.BOYに興味を持たれたのはなぜですか。

 

秋田

 

本業である石材店の将来性を考えた時、先細りの感がぬぐいきれずに、何か良いビジネスはないかと考えていました。そんな折にプライマーの記事に目がとまった訳です。若い頃海外で生活した経験もあり、海外でのビジネスと言うことに抵抗はありませんでしたし、先行きの見えない日本の経済を考えればむしろ海外に惹かれる気持ちもありました。

 

 

 

その中でJ.BOYに加盟を決められたポイントは何でしょうか。

 

秋田

 

やはり利回りですね。私の場合、飲食店経営の経験もありませんし、日本での本業もありますから自分で運営まですることは難しい状態でした。J.BOYの場合は、運営までセットになったパッケージが有り、それが魅力的な利回りを生んでくれるのではないかと実感したからです。

 

 

 

開業も目前に控えて、現在の心境はいかがですか。

 

秋田

 

やはり楽しみですね。不安がないと言えば嘘になりますが、出来上がっていく店舗を見て実感も湧きましたし、楽しみという気持ちが強いですね。

 

 

 

間もなく開業と言うことですが、その後のプランなどはおありですか。

 

秋田

 

まだ開業していないのですが、この店を軌道に乗せていただいたら、最終的には10店舗ぐらい展開出来れば良いなと考えています。今は無理ですが、将来的には運営も自分でやることも視野に入れています。

 

 

秋田さんがフランチャイズ開業する店舗は、LRTのショーボリバード駅より徒歩3分のWCCビルの1階で2014年3月上旬開業予定です。

 

 

前回の記事は本紙ホームページ
https://primer.ph/column/genre/business/post_90/ をご覧下さい。

 

瀬戸正和氏

瀬戸正和氏
1966年栃木県生まれ
株式会社ベネフィット 代表取締役
一般社団法人日本スパ協会理事
 
大学在学中に起業。旅行代理店、飲食店経営を手がける。30歳の時にマンションデベロッパーに入社。異業種開発を任され、当時日本ではメジャーではなかったスパに着目。海外からスパブランドを導入するなどし、日本のスパブームの仕掛け人と言われる。
その後独立し、株式会社ベネフィットを設立、スパ及び飲食コンサルタントとしてプリンスホテルを始めとし多くのクライアントの案件を手がける一方で、講演やスパ・飲食店の業界誌に寄稿。平行して2000年からはマニラにおける飲食店経営を始め、日本とマニラを行き来する生活を続けている。現在マニラにおいて「相撲茶や関取」「Japanese Fastfood Shop J.BOY」の2ブランドで4店を経営するほか、フランチャイズ事業を展開中。

 

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