オンライン証券でフィリピンの経済市場を盛り上げる
BDO野村セキュリティーズ
社長
片川 弘一さん
1964年大阪市生まれ。神奈川県横須賀支店などを経て1992年にスペインマドリード自治大学に留学。1994年から2003年までスイスやイタリアなどヨーロッパで営業を担当。2003年に東京本社勤務のため一時帰国後、2006年ドイツ支店長就任。2016年から現職。
〈心に残っている本〉
アルフレッド・ランシング著『エンデュアランス号漂流』です。新しい街マニラに来て新しい会社を創業し、システムを立ち上げ、当初は簡単に黒字になる事もないので、苦しい日々が続いている当社ですが「色々な障害や問題が重みを増して積み重なっても前に進もうとする」決して諦めない人たちの勇姿(または勇気)は、とても印象に残ります。
2016年、フィリピンの大手金融機関BDOと野村HDの合弁会社「BDO野村セキュリティーズ」の初代社長に就任した片川さん。現地の人々の力で国内の経済を盛り上げようと、個人向けのオンライン証券市場の開拓に意欲を燃やす。国内外で培ってきた営業力と持ち前の勤勉さを発揮し、成長市場を見据えて大きく舵をとる。
編集部
大学卒業後のキャリアを教えてください。
片川さん
新卒で野村證券に入社しました。私が就職活動をしていた頃は日本の金融機関が世界で一躍有名になりつつあった、まさにバブルの真っ只中。海外企業を買収したりと、積極的に世界で投資を進めていました。大阪市立大学の商学部を卒業したのですが、昔から数学は得意でした。小学生時代を過ごした奈良県では、暗算で小学生の部で3位になったほどです。「海外で大きな仕事をしたい」「業界の最大手で働きたい」と考え、最終的に野村證券に入社を決めました。
編集部
ご友人などからの反応はいかがでしたか?
片川さん
野村證券に行くと伝えると「厳しいぞ、勇気があるな」という声が多かったです。しかしそれよりも魅力的だったのは「証券会社では様々な国の経営者や、企業トップと大きな商売ができる」という社内の先輩からの一言でした。他社だと10年ほど経験を積まないとできないような仕事が、野村では3年で任されることもある。決断にゆるぎはありませんでした。
編集部
新人時代はどのように過ごされたのですか?
片川さん
神奈川県の横須賀支店に配属され、3年ほど営業をしました。入社してすぐに億単位の取引を任されたこともあります。先輩から顧客の引き継ぎというのはなく、一件ずつ地元企業を訪問したり電話営業をしたりと、地道な作業が多く本当につらかった。「新人です。よろしくお願いします」と、炎天下のなか汗まみれで塩がついたスーツを着て営業にまわっていました。嬉しかったのは、「お前結構根性あるな。いい営業マンだ」というお客様からの一言。入社して3年ほどはとにかく色々な方にお会いして、契約を断られ続けるのが仕事だったように思います。
編集部
その後福岡県北九州支店などを経て、スペインに留学されたのですね。
片川さん
「海外で挑戦したい」という思いがあったので、海外駐在前の若手社員に海外でMBAやマスターを取得させるという社内制度に応募しました。数百人のなかから10人ほどしか選抜されないという狭き門なのですが、無事に合格し、スペインのマドリード自治大学で銀行経営のマスターをとりました。2年半ほどかかりました。
編集部
なぜスペインだったのですか?
片川さん
大半の社員はアメリカに行くのですが、なぜか私には「スペインの大学院でスペイン語でマスターをとってこい」と内示が出ました。野村としてはイギリスやニューヨークといった英語圏以外にも海外拠点が多く、中南米などスペイン語圏の進出を視野に入れていたからだと思います。もちろんスペイン語は全く話せなかったので、次の日から8時間の個人授業に通いました。
編集部
スペインでの生活は大変でしたか?
片川さん
渡西したのが27歳だったのですが、ノイローゼになるほど自分にプレッシャーをかけて勉強していました。寝言がスペイン語になったこともあります(笑)。マスターを取るのが大変だったというのはいうまでもありませんが、その前に大学院入学に必要な語学力が求められる。「今日は経済新聞を読めるように」などと、語学学校の先生から毎日新しい課題が出るので単語は吐きそうになるほど詰め込み、連日23時まで勉強する日々を送りました。
編集部
語学以外はいかがでしたか?
片川さん
当時のスペインは今と環境が全然違いました。ストライキが頻繁に発生するなど日本とはあまりに違う環境で、生活面でも苦労しました。家から語学学校に行こうと思っても、ストライキで交通機関がとまっていることは日常茶飯事。通学途中に爆発で燃えている車を見かけるなど、当時は死者が出るテロも発生していました。「違う時間に歩いていたら、命はなかったかもしれない」と思ったほどです。麻薬患者も多く、注射器が道路に落ちていたりと治安が本当に悪かった。パスポート盗難に遭ったヨーロッパ旅行中の日本人旅行客の約5割が、スペインで被害にあっていましたし、失業率も30%でした。
編集部
スペイン留学後はどうされたのですか?
片川さん
人事部に少し籍をおいた後、スイスのチューリッヒに向かいました。1994年に留学を終えてスペインから帰国したのですが、留学前とは世界情勢が大きく変化していました。バブル崩壊で毎日株価は下落していて、会社の海外戦略も軌道修正が必要だった。スペイン語圏に新規進出ではなく、ヨーロッパを強化しようという方針でスイスに向かいました。
編集部
チューリッヒでは何をされていたのですか?
片川さん
機関投資家や金融機関、保険会社向けに3年ほど営業をしていました。スイス最大手のUBSやクレディスイスなど、有名な大手企業から地場の中金融機関まで幅広く担当し、日本を含めたアジア関連株の営業をしました。
編集部
どのような点に苦労されましたか?
片川さん
英語で営業するのが大変でした。現地のスイス人同僚と同じ営業成績を出さなくてはいけないのですが、語学力が伴わないせいでお客様にこちらの思いを伝えられず、くどけない。新聞などから得た経済ニュースを一生懸命に覚えるのですが、私が話す和製英語だと伝わらないことが多かった。語学力をあげるため最初の2年ほどは休日出勤して色々な媒体に目を通したり、英語を聞いたりしていました。お客様は金融のプロなので、高い水準の知識を要求されるのも大変でしたね。
編集部
営業で意識されていることはありましたか?
片川さん
私たちが提供する情報が、投資の際の重要な判断材料になるよう心がけていました。例えば最近ですと、フィリピンで直近の経済成長率が公開されました。それに対してインフレ率や中央銀行の政策はどうなっているのかなど、様々な情報を調べてからお客様に提供するようにしています。「ありがとう。良い情報だった」といってもらえるような下調べが重要です。
編集部
チューリッヒを皮切りに、ジュネーブやイタリアとその後もヨーロッパで長く活躍されています。印象的な出来事はありますか?
片川さん
それぞれの国ごとに特徴がありましたが、2002年に欧州連合で共通通貨のユーロが導入された日は忘れられません。自分の財布の中の紙幣がある日突然すべて変わる、ということが起こったのですから。当時はイタリアにいたのですが「本当に可能なのかと」疑心暗鬼になっていました。現地の金融機関は日本のように綺麗なオフィスを構えていることは少なく、両替を頼んでもお菓子を食べながら気だるそうにカウンターにいる社員もいました。偽札が出回るなど、大きなトラブルが起きるのではないかと思っていました。ユーロの価値も下落していたことが何よりの証拠です。
編集部
しかし実際に運用が始まり、ユーロの価値は上がりましたね
片川さん
ユーロが個人向けに流通する元旦の早朝に銀行に行ったのですが、感動しました。ATMにきちんとユーロの表示がでていて、暗証番号を入力すると確かにユーロを引き出せた。みんなで成し遂げようというヨーロッパ中の機運の高まりを感じて「ユーロの価値は絶対あがる」と確信しましたね。みんなでやろうという気持ち、団結力はすごかったです。
編集部
その後ドイツでは拠点長を9年間勤められています。
片川さん
2006年にドイツの拠点長に就任し、主にフランクフルトとウィーンの2つのオフィスを管轄していました。現場で営業をしていた時とは少し違って、全部自分で判断するというのは大変でしたね。この案件はすぐに答えを出す、一方でこちらはしっかりと議論が必要、などと最終的な判断を迫られることが多かった。人材をどこに配置するかなど、リーダーシップも求められました。政府の方との付き合いもありましたし、日本企業が180社ほど加盟する「フランクフルト日本法人会」の理事長も5年勤めました。大使や領事などと交流があり、非常に勉強になりましたね。
編集部
その後フィリピンにいらっしゃったのですね。
片川さん
2015年までドイツにいて、その後すぐにフィリピンに異動になりました。国境が隣合っているヨーロッパ大陸に合計で20年ほどいたので、突然「フィリピン異動」と命じられた時は驚きました。そのうえ野村の支店ではなく、BDOという現地の大手金融機関との合弁会社のトップということで、さらに衝撃的でしたね。
編集部
ヨーロッパでの経験とはがらりと変わったわけですね。
片川さん
環境は変わりましたが私はずっと株式を専門としていましたので、業務面ではあまり大きく変わりませんでした。証券会社では会社に企業買収を提案したり、債券・株式を発行する等、色々な業務があるのですが、私は一貫して株式を取り扱ってきたので、専門的な強みはあったかと思います。
編集部
フィリピン進出の決め手は何だったのでしょうか?
片川さん
野村はアジアがホームタウンという意識を強くもっていますので、今後もさらにアジアに注力していきます。主なアジア諸国全てに拠点がありますが、リテール事業に限ってはタイとフィリピンだけです。すでに進出しているタイでは、国内での知名度も高い。アジアの経済成長は著しいですし、そのなかでもフィリピンは今後長期間の成長が見込まれます。アジアで現地の金融機関のお手伝いをしながら、個人営業も強化していきたい。そういった背景からフィリピンでのビジネスが始まりました。
編集部
フィリピンではどのような業務を手がけていらっしゃいますか?
片川さん
フィリピン在住の個人投資家を主に対象としたオンライン証券会社「BDO野村セキュリティーズ」を設立し、2016年10月にリテール向けサービスを始めました。現地大手の金融機関、BDOとの合弁会社です。サービス開始から2年ほど経ちましたが、順調に口座数を増やしています。当社はメインである個人のオンライン証券ビジネス以外にも、野村證券を通じて欧米を中心に海外投資家から受注するフィリピン株式売買、および国内機関投資家の注文も取扱っていますので、個人(フィリピン国内のみ)と国内外の機関投資家という、個人と法人2つのカテゴリーのお客様へフィリピン株ビジネスを展開しています。
編集部
足元の状況はいかがでしょうか?
片川さん
2018年から口座数は急激にのび、国内のオンライン証券業界の2位にまでなりました。この国では、個人取引口座の過半数はオンラインでの取引ですが、店頭取引も含めると90万口座ほどあるそうです。
編集部
なぜオンラインだったのでしょうか?
片川さん
個人でフィリピン株を取引しようと考えている人のうち、90%はオンラインで新しく口座を開くほど人気が高まっています。証券会社の店頭までわざわざ行って「ジョリビーの株がほしいです」という人はいなくなってきている。オンラインという業態は企業側のメリットも大きく、店舗をもたないため人件費の削減につながります。BDO銀行で既にオンライン口座をもっている方は、当社の口座を開く際は15分くらいで簡易に口座を開くことができます。BDO銀行で口座を持っていない場合は、先に銀行でオンライン口座を開いてくださいという流れです。
編集部
手数料はいくらですか?
片川さん
業界で最安値の一律0・25%です。
編集部
なぜ単独での進出ではなく、BDOと組まれたのでしょうか?
片川さん
大きく分けて2点あります。まずは「現金をしっかりと保有している」と身元が判明しているお客様と取引することが重要だからです。証券ビジネスというのは、株の売買が成立して3日後に実際にお金が入ります。株価が上昇したら支払いに来るが、下落したらそのまま消えてしまう人もいる。日本の中小証券会社だと「お客さんのことは知っていますから、お金は三日後でよいですよ」という信頼関係が成り立っている場合もありますが、フィリピンでは通用しません。もう1点の狙いは、アンチ・マネー・ロンダリング(AML)といって、不正資金による取引や不正口座取引の防止です。「BDO銀行の預金なら大丈夫だ」とフィリピン当局からの信頼も得ることができます。
編集部
BDOと提携してどのようなメリットを感じますか?
片川さん
圧倒的な支店数でフィリピンの隅々までネットワークをもっている点が最大の強みです。個人客を対象にしたビジネスですので、まずは多くの人に知っていただくことが大切になります。BDOが3年前に買収したミンダナオ島の金融機関One Network Bankも含めると、支店数は1200にのぼります。三菱やみずほといった日本の大手金融機関がもつ支店数を二倍にしても及びません。
編集部
顧客分布に地理的な特徴はありますか?
片川さん
やはり人口に比例しているので、口座数が多いのはマニラ首都圏やバタンガス、パンパンガを中心とするルソン島に住むお客様が多いです。ただミンダナオ島にいようがパラワン島にいようが、オンラインでどこでも口座を開けるというビジネスですので、遠方の方の比率も高いですね。
編集部
国内にオンライン証券会社はどのくらいありますか?
片川さん
30社ほどです。口座数だけで比較すると、弊社は2番目に多いと思います。ただ新しいお客さんの中には「株ってどうしたらよいのか?」と知識をあまりお持ちでない方も多いので、売買金額はまだそこまで高くありません。
編集部
フィリピン市場の特徴はありますか?
片川さん
フィリピンの株式市場は非常にユニークで、全体の売買金額の過半数を外国人が占めています。国内の顧客が大半で、3割ほどが外国人というのが一般の市場ですので、フィリピンは国内に投資家が少ない状態です。私たちの役割は過半数に満たない国内の投資家の参加率を高め、フィリピンの市場をフィリピン人で盛り上げられるようにすることだと考えています。
編集部
そのためにはどのようなことが必要しょうか?
片川さん
まずは「投資が大事」という教育が重要です。預金をすべて株に変えるのは危険ですが、長期で現金をそのままにしているよりは、毎年10%ほど上がる株というのは収益率が高く、資金資産形成の大事な手段になる。1つの会社に投資を集中させず、10社から20社ほどにわけて投資をするようにすると、次第に資金は増えるはずです。
編集部
日本人はあくまで顧客の対象ではないのでしょうか?
片川さん
弊社のホームページやトレーディングサイトの一部は日本語や韓国語にも対応しています。中国人の方が多いですが、日本人の方のご利用もあります。ただ前提としては、英語での取引ができることが求められますね。株の注文まではできても、売買報告書などは英語で提供しますので。
編集部
ホームページなどサイトを作成する上で苦労したことはありますか?
片川さん
きちんとしたサイトを作成すべきだと思う反面、コストとの兼ね合いが大変でした。株価は短期間でかなり頻繁に変動するので、サーバーに重度の負荷がかかります。しかしコストを意識しなければ赤字にもなりやすい。維持費用も発生しますし、不具合がでないように調整するのに苦労しました。
編集部
他社では完成度が高くないサイトも多い印象です。
片川さん
すべてコストとの兼ね合いだと思います。弊社はBDOとしてのプライドもあるので、かなり良いサイトに仕上がっています。
編集部
モバイルアプリは開発されますか?
片川さん
来年以降にリリースできたらと考えています。アプリは情報量を減らして運用するなどパソコンと違った工夫も必要になるので、開発を進めているところです。
編集部
ここからはフィリピン経済全般のお話を伺います。フィリピン市場はどのように分析されていますか?
片川さん
日本の市場と比べるとフィリピンの証券市場や証券ビジネス規模は小さく、まだまだ伸び代があると思います。若い人が多いから今後も消費は確実に増える。アジアのなかで1番ポテンシャルの高い、中長期的に成長が約束された国です。
編集部
フィリピン株はいかがでしょうか?
片川さん
総じて良いのですが、時価総額でみると十分な規模があるフィリピン株ですが、流動性という点では日本株の売買金額の100分の1と低くおさまっています。投資家が少ないので、売り買いも圧倒的に少ない。SMグループのシー・ファミリーやアヤラ・グループのアヤラ一族など、財閥系株主だけが台頭している状態です。しかし企業の価値で考えるとそれなりの規模がある会社も多いので、流動性が増して売買が活性化することを期待したいですね。
編集部
フィリピン株の懸念点はありますか?
片川さん
短期的にはインフレの問題があります。為替のペソが下落すると同時に、インフレで石油の価格が上昇するなど、海外から入ってくる商品の値段があがると急激に経済バランスが悪くなる可能性があります。ドゥテルテ大統領の支持率は当面の間は高いと思いますが、ドゥテルテミクスと呼ばれる経済政策が果たしてどの程度続くのか、という課題もあるかもしれません。
編集部
足元の株価はいかがですか?
片川さん
年末にむけて1割ほど上がる可能性はあります。アキノ大統領からドゥテルテ大統領に交代する3年ほど前にかなり上昇しましたが、それよりは小規模になりそうです。しかし先ほども申し上げたように、インフレへの懸念が拭きれない。フィリピンは食品や石油などを輸入に頼っており、ペソの値段が下落するとドルで買う動きが広まります。この現象を「輸入インフレ」といいますが、そうなると生活が苦しくなる。これまでの動きをみると、国内金利が少しずつしか上がらないのに、インフレに向かっていて、目先不安定な状況になったため年初から株価が調整しているようです。
編集部
フィリピンの金利は上がっているのですか?
片川さん
上がっていますがアメリカよりはペースが遅いです。まだインフレ懸念に充分対応出来ておらず、フィリピン国内金利を更に上げていかないとペソ通貨安を防げないようです。
編集部
フィリピンで株の空売りはありますか?
片川さん
今まではありませんでしたが、近々解禁されるようです。証券会社には「準備をしてください」という指示が出始めています。
編集部
日本にある証券会社で、フィリピン株を買えるところは少ないですね。
片川さん
証券会社にとって初期投資や手数料の高さが参入障壁になっています。一方で、投資家から見るとペソを売って日本円に戻す際の為替手数料がかかるので、売買を終えて蓋を開けて見たら「手数料ばかりだった」ということになりかねません。
編集部
フィリピンに関わっている日本人も多いので、関心が高い人は多い気がします。
片川さん
BDOでオンラインの銀行口座を持っているのであれば、弊社で簡単に取引口座を開設でき、株を売買できるので便利ですよ。
編集部
株に興味はあるけれども、一方で何を買ったらよいかわからないという声もあります。
片川さん
そのあたりに弊社も現在力を入れていて、リサーチページを充実させています。42銘柄の一覧表を作成し「この株はおすすめ」などという情報とともに紹介しています。毎週情報を更新し「これは注意した方がいい」という解説も順次増やしていきます。
編集部
将来投資をする世代を育成していくことも大切ですよね。
片川さん
おっしゃる通りで、そのための方法をまさに模索しているところです。セミナー開催を増やすべきなのか、ホームページやSNSなどで情報を多く提示すべきなのか。証券投資を身近に感じてもらう工夫が必要ですね。今後はそういった部分にもしっかり手を加えていきます。
編集部
フィリピンの投資で気をつけなくてはいけないことは何でしょうか?
片川さん
海外の投資家が1番懸念しているのは、ドゥテルテ大統領の経済政策の持続性です。新しい公共投資等が果たしてどの程度計画通りに進むのか。フィリピン経済特区長(PEZA)による優遇税制に対しても、不安視する動きが広がっています。
編集部
日本人投資家と比べて、フィリピン人投資家の違いはありますか?
片川さん
フィリピンは1億人以上もの人口を抱えながら銀行口座の保有率は約3割と少ないですが、日本と比べて若い投資家が多い。弊社がオンラインで口座を開設するメリットもそこにあります。彼らはしっかりと勉強もしているので、株式市場の活性化が期待できます。フィリピンは5000円前後から株を購入できるので、気軽に始めやすいというのもありますね。
編集部
最後にプライベートな部分をお聞かせください。休日はどのように過ごされていますか?
片川さん
ヨーロッパにいた時は旅行やワイン、オペラやクラシック鑑賞、水泳が趣味でした。水泳は現在も続けていますが、フィリピンに来てからはゴルフにはまりました。これまでも機会はありましたが、人生で初めてといっていいほど真剣にゴルフに取り組んでいます(笑)。他国と比べて安いので何度もプレーできるし、天候に左右されることも少ない。
編集部
ワインは今でもお好きですか?
片川さん
毎日家内と1本あけるくらい飲んでいますし、ソムリエに負けないくらい勉強もしました(笑)。最近だとワインを楽しめるおしゃれなお店も増えたように思います。
編集部
ご自身の今後の展望は?
片川さん
これまで色々な国で働いてきた経験があるので、皆さんにとって役立つものがあれば伝えていきたいです。時間に余裕ができたら、中南米などまだ行ったことのない国を訪問して色々な人と出会いながら、研鑽を積んでいきたいですね。
編集部
座右の銘は?
片川さん
志在千里という中国の言葉で、スペイン留学時に出会いました。意味は諸説ありますが「あなたの 志(こころざし)は千里かなたの遠方にあるべきだ。目先のことに囚われずに目標を千里の先におき、少しずつ近づくように生きていきなさい」と捉え、大事にしています。今後の目標をゆっくりと考えながら、日々努力していこうと思います。
【お詫びと訂正】ビジネス烈伝について / 9月号(vol.126)の56ページ
9月号(Vol.126)56ページのビジネス烈伝の質問に誤記がございました。
(誤)
編集部:フィリビン市場の特徴はありますか?
(正)
編集部:フィリピン市場の特徴はありますか?
皆さまに大変ご迷惑お掛けしましたことを、深くお詫び申し上げます。
今後このような事のないよう、スタッフ一同細心の注意をはらうよう心がけてまいります。