海外で日本食文化を広め、世界中に日本のファンを増やす
株式会社ダイニングイノベーション
代表取締役会長 CEO
西山知義さん
1966年東京都生まれ。「炭火焼肉酒家 牛角」の創業者。「しゃぶしゃぶ温野菜」や居酒屋「土間土間」などを経営するレインズインターナショナルの代表取締役社長を経て、2013年にダイニングイノベーションを設立。外食事業への投資や経営コンサルティング、業態開発に従事する。
〈座右の銘〉
「人生有限」です。人生には限りがあるので一秒一秒を大切にしています。人生をサッカーで例えると、人生で与えられた時間はサッカーの試合時間です。ゲームが一度終了してしまうと何もすることができません。限りある時間を大切に過ごし、自分が会社を経営しているうちはスピード感をもって最前を尽くしたいと思います。
焼肉やしゃぶしゃぶが楽しめる和食ビュッフェ店を7月に開業したダイニングイノベーションの西山知義代表取締役会長。焼き肉レストラン牛角など、これまでに様々な業態の店舗を国内外で幅広く展開してきた。「お客様が喜んでくれることがモチベーションにつながる」と語る西山氏は、アジアで多くの人々の胃袋を掴み始めている。
編集部
日本食「SHABURI & KINTAN BUFFET」のマニラ出店を決めたきっかけを教えてください
西山さん
フィリピンは人口が多く、経済成長が期待できる有望な国のひとつです。現地の人々も肉や日本食を好んで食べています。GDPの成長とともに市場が成長していく段階から店舗を展開することで、しっかりとした収益基盤を築けるのではないかと考えました。立地が良く人通りも多いマカティのグロリエッタに第一号を出店したので、知名度を短期間で上げていきたいと思います。
編集部
今後フィリピンでの出店計画はどのようにお考えでしょうか?
西山さん
様々な業態を検討していますが、フィリピン全体でフランチャイズ展開することを目標にしています。アジアでは日本食ビジネスで成功している競合会社がまだ出ていないので、チャンスは確実にあると思います。
編集部
フランチャイズ展開で重視されていることを教えてください
西山さん
最初から店舗数などの数字目標を設定することが重要です。パートナーにオペレーション能力があるか、フランチャイズ経験があるかどうかも重要な判断基準になります。出店数を増やすとなると自社の力だけでは難しいので、有力なパートナーを見つけて大きく展開していきたいですね。ダイニングイノベーション全体では海外で85店舗、日本で223店舗を出店しています。2030年ごろまでのグループ全体の長期計画では、全体に占める海外売り上げが7割ほどになる予定です。海外の多くの方々に日本食を楽しんでいただけてるので、今後は展開スピードを加速していきたいと思います。
編集部
日本食ビジネスを海外で成功させる秘訣は何でしょうか?
西山さん
現地の嗜好に合う食事を適正な価格で提供する「ローカリゼーション」が大切です。「SHABURI & KINTAN BUFFET」は肉の専門店ではなく、様々な日本食が食べられるというコンセプトを打ち出しています。焼肉やしゃぶしゃぶだけを提供するお店よりも、幅広い日本食を楽しめるお店の方がフィリピンの方々に選んでいただけると考えたからです。ターゲットを中間所得層に据え、客単価は1300~1500円に設定しました。来店していただけることが、私たちにとってのモチベーションになっていますね。
編集部
飲食業を経営するうえで重要なポイントを教えてください
西山さん
飲食業は釣りに似ています。釣りたい魚の種類を決めると釣りをする場所が決まります。すると魚に合わせてエサの種類も変えていきます。すべての条件がぴったりとあっていないと、魚は釣れないからです。飲食業では狙いたいお客様のターゲットに合わせて彼らが好きなメニューを開発し、適正な価格で提供することが重要です。1つひとつの要素を丁寧に分析し目標を定めることが、成功につながるのだと思います。
編集部
様々な飲食業態を開発されていますが、失敗した経験はございますか?
西山さん
過去にスイーツ専門店を出店しましたがうまくいきませんでした。スイーツは流行り腐りがとても早い商品だと実感しましたね。飲食業の経営で難しいのは、成功の見極めと店舗の展開スピードの調整です。短期間で多店舗展開するとブランドのイメージが浸透しやすいため、成功率が上がります。しかし売上が上がっていないため状態で店舗を出しすぎると、事業が失敗した際の撤退に大変な苦労が生じるのです。失敗した時に重要なのは何がダメだったかを徹底的に分析すること。他社の成功要因や失敗要因を分析する作業もとても勉強になるはずです。
編集部
プライベートはどのようにお過ごしですか?
西山さん
月の約3分の1は海外に行くようにしています。世界中を旅するなかで感じるのは、自分の考えは絶対的な尺度ではないということです。食べ物や住環境はもちろん、考え方や価値観も国や文化圏ごとに全く異なるので、自分の常識が当たり前ではないと気付かされます。できるだけ相手の立場に立ち想像力をもって人と接する姿勢は、旅行だけでなく商売やマーケティングにおいても重要だと感じています。
編集部
好きな本を教えてください
西山さん
物事を論理的に考える手法を勉強するには、ジム・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー ー 時代を超える生存の原則」がおすすめです。非常に論理的でありながら情熱も感じることができます。私も常に「なぜ、なぜ、なぜ」と分解しきれなくなるところまで論理的に考えるようにしています。