ブログ
食べる
経済ニュース
コラム
求人情報

HOME >  フィリピンのコラム  >  第七十六回ビジネス烈伝 / Nomura Research Institute Singapore マニラ支店 支店長 高岡 真紀子さん

第七十六回ビジネス烈伝 / Nomura Research Institute Singapore マニラ支店 支店長 高岡 真紀子さん

価値の創造と人づくりが、社会の変革を担う力になる

Nomura Research Institute Singapore マニラ支店
支店長
高岡 真紀子さん

 

1977年福岡県生まれ。幼児期を中南米で、中学時代をイギリスやインドネシアで過ごす。神戸大学大学院総合人間科学研究科の人類学専攻に進学。フィリピンでフィールドワークを行う。2002年野村総合研究所(NRI)に入社。2006年にフィリピンに移住しNRIマニラ支店に転籍。2013年4月から現職。

 

【好きな言葉】
「すべてのことには意味がある」。辛いことや嫌なことが起きた時も、きっと何かしらの意味があるはず、と思っています。人生良い時も悪い時もありますが常に謙虚な気持ちをもち続け、良いことが起きた時も有頂天にならないように心がけています。

 

ノムラ・リサーチ・インスティテュート(NRI)シンガポールマニラ支店で支店長を務める高岡 真紀子さん。学生時代に人の心の豊さについて興味を抱き、現在は人事コンサルティングやマネジメントなど人に関わる総合的な仕事を通じて、国内外の企業の支援に注力する。熱い心と冷静な頭をもち、アジア全体を俯瞰して経済発展の礎を築く。

 

 

編集部

 

フィリピンでの事業内容を教えてください。

 

高岡さん

 

市場調査やコンサルティングのほか、基幹系情報システムの導入を手がけています。これからフィリピンに進出したいとお考えの企業様の市場・業界調査やパートナー探し、ビジネス・デュー・ディリジェンス、すでに進出されている企業様向けの新規事業開発支援や業務プロセス改革、人事コンサルなどを展開しています。人事コンサルには、正解が明確ではない「人」というものに対してアプローチする面白さや醍醐味があります。いくら優れた戦略や制度、プロセスがあってもそれを実行するのは人です。社員の意識改革や経営層のチームワークなど目には見えにくいものをどのように可視化してありたい姿にしていくかに、日々とてもやりがいを感じています。近年はフィリピンに留まらず他アジアの国でもサービスを展開しています。日本やタイ、香港のクライアント企業の次世代リーダー向けワークショップを行ったり、リモートでコーチングを行ったり、フィリピン人の英語力と適応力の高さを活かしています。

 

 

編集部

 

支店長として部下のマネジメントで大事にされていることをお聞かせください。

 

高岡さん

 

長所を伸ばす、真摯な気持ちで聴く、必要な時は厳しく対応する、の3つです。何か問題が起きた時にすぐに相談をしてもらえるような関係を日々築くのが大切ですね。相談しづらい雰囲気が社内に漂っている場合は、上司の方に問題があると思います。特に海外の方と働く際はコミュニケーションが何よりも重要です。フィリピンに来てから日本の10倍くらいのコミュニケーションをとるようになったと思います。
 部下への教育で心がけているのは、頭に汗をかくぐらいに自立的に考え抜ける人に育てること。問題が起きた際に私がすぐに答えを出すのではなく、必ず社員自身の意見を聞くようにしています。コンサルタントの仕事は、個人の能力で価値が大きく決まる個人商店のようなもの。一人ひとりが尖った専門性を持つプロ集団でありたいです。会社の肩書きではなく「このテーマだったらNRIの〇さんだよね」とご指名を受けるくらいのコンサルタントを一人でも多く輩出できるよう、今後も育成には力を入れていきたいですね。一方、マニラ支店だけで全てのニーズに応えるのは難しいので、他拠点や外部パートナーとの連携も積極的に進めています。

 

 

編集部

 

高岡さんにとってマネジメントとは何でしょうか?

 

高岡さん

 

私にとってマネジメントとは、組織が価値を最大限に発揮できるようリードとサポートをすることです。確固とした収益基盤なしに組織の成長はありませんが、売上や利益目標の達成がゴールではなく、社会課題やクライアント企業にどれだけ貢献できたか、より高い価値を提供できるために自分たちがどれだけ成長できたかを社員とも話すようにしています。 組織としての価値を高めるには、自分がプレーすることではなく、いかに個人が持つ能力を最大限に引き出してプレーしてもらうかが重要です。そのためには相手のやり方を理解する姿勢が欠かせません。そして、チームプレーなので方向性をしっかり示す必要があります。日々の業務に追われがちですが、中長期的な組織の姿についてよく妄想しています。

 

 

編集部

 

人事や社員のマネジメントといった「人」に対してのご関心がお強いのですね。

 

高岡さん

 

人に対しての想いが生まれた原点は、父親の仕事の関係でイギリスやインドネシアに滞在していた中学時代に遡ります。13歳にして自分の言葉でしっかりと意見を伝えるロンドンの子供達や、当時の私と同じくらいの年齢で働くインドネシアの子供達を見ながら「人間の幸せや本当の豊かさとはなんだろう」と考えるようになりました。大学では子供の権利について見解を深めるNGO団体に所属し、大学院では人を総合的に研究する人類学を専攻しました。

 

 

編集部

 

大学や大学院でのご経験について、詳しくお聞かせください。

 

高岡さん

 

大学は神戸大学の国際文化学部、異文化コミュニケーションに進学しました。中学時代のころから国際的な事柄や開発などに興味があり、高校では緒方貞子さんの著作を通じて難民問題にも関心を寄せていました。大学で所属したNGO団体では、主にストリートチルドレンの支援に携わっていました。児童労働をしているインドの子供達の話を、日本の小学校で伝えてワークショップを開いたりしていましたね。スタディーツアーでインドのスラム街なども訪れました。 教授に誘われたことがきっかけで、大学卒業後は就職はせず、神戸大学の大学院総合人間科学研究科の人類学専攻に進みました。社会の仕組みや人々のコミュニティーについて研究する学問です。そこでフィリピンを何度か訪れるうちに、じっくり学びたいと思い、国際交流基金アジアセンター(当時)のプログラムで1年間現地に滞在しました。フィリピンの働くこどもたちをテーマに据え、半年間はマニラに位置するUP(フィリピン大学)のディリマン校に在籍し、残りの半年間はバギオの働く子供達100人にインタビューも行いました。単なる「恵まれない可哀そうな子供達」ではなく、一人ひとり異なる生立ちや家族関係、将来の夢を持っていて、その時に子供達から「レジリエンス」を学びました。

 

 

編集部

 

現在フィリピン支店で注力している事業はございますか?

 

高岡さん

 

データやテクノロジーを使ってこれまでの業務を変革したり新しいビジネスを創造する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の新規事業を進めています。例えば人事の分野では、これまでに蓄積された人事データからハイパフォーマーの特徴を分析し、採用の際の指針を作れたら面白いですよね。他には金融分野でブロックチェーンを活用したソリューションの検討など、各コンサルタントが自ら関心のある分野で自主研究や案件形成に取り組んでいます。NRIでは「未来創発」を理念に掲げていますが、フィリピンでも各コンサルタントが自主的に常に挑戦し続けることで、お客様や社会に対してより高い価値を提供していきたいと考えています。

 

 

編集部

 

フィリピンの経済や現政権に関してご見解をお聞かせください。

 

高岡さん

 

フィリピンの注目ポイントは人口が増え続けている点です。人口が若く国内消費が活発なこともあり経済の発展は続くと思いますし、観光業にも成長の余地がありそうです。現在のドゥテルテ政権は過去のダバオでも発揮してきた実行力に加えて、自身が専門でない分野は専門家に任せるといった点に共感を覚えます。一方で国内産業が十分に育っていないので増え続ける国内消費に対して輸入に頼ざるを得なくなっています。産業政策はありますが総花的になりがちなので注力する優先産業1~2つでもきちんとインセンティブをつけて政府主導で育成する強い意志が必要だと思います。戦略で難しいのは何かを選び何かを断念することだと思いますが、国民性や直接選挙制などもあいまってそれが難しいのかなと感じています。国内産業が育って中間層がもっと増えれば社会経済格差も是正されていくと思いますが、この15年で根本的な社会構造はあまり変わっていないように感じます。一部の人だけが受益を受ける経済発展ではなく、すべての人が人間らしく尊厳をもって幸せに暮らせるようになるためにはどうすべきか。私も真剣に考えていきたいテーマのひとつです。

 

 

編集部

 

プライベートの過ごし方を教えてください。

 

高岡さん

 

家族との時間を大切にしています。12才、9才、2才の男の子が3人います。家はいつも騒々しく喧嘩も絶えないので家のマネジメントの方が大変ですね。笑 週末は公園で遊んだり一緒に買い物に出かけたり、家でカードゲームをしたり日本人会ライブラリーでDVDを借りてきて日本の映画を一緒に観たり。週末はゆっくりと話ができる時間も作るようにしています。子供には自分自身が決めたことを信じてやり遂げる強さをもって育っていってほしいなと思っています。

 

 

野村総合研究所シンガポールマニラ支店の企業情報はこちらから。

 

 

広告

ビジネス烈伝 前回のコラム

フィリピン国内最大手の総合人材会社でもあるジョンクレメンツパーソルフィリピンジャパンデスクでManagerを務める田渕大輔さん。クライアント· 求職者はもちろんのこと、社員やパートナー企業など関わるすべての人々に対して謙虚に接し、信頼関係の構築に意欲を燃やす。様々な業界で必要とされる人材の輩出を通じて、フィリピンの経済発展を後押しする。

新着コラム

材料回収・リサイクル施設の運営と環境ソリューションサービスを提供する株式会社グーンはフィリピンの不動産開発・モール運営最大手でSMグループの中核を担うSMPrime(以下SMプライム)と提携、共同出資となるSGECIを設立し、フィリピンの廃棄物管理ソリューションの開発など環境問題に取り組む。フィリピンに進出した背景は?そしてSMグループとの提携の目指すところは? 2018年からセブに駐在する小西氏にお話を伺った。
2024年3月に駐フィリピン大使として着任し、精力的に活動を続ける遠藤大使。就任から約8か月が経過した今、彼の目にフィリピンの現在と未来はどのように映っているのか。着任前に外務省国際協力局長としてODAを担当していた経験を持つ遠藤大使に、フィリピンの投資環境や二国間関係の現状、今後の協力体制についてお話を伺った。また、今回200号を迎えた本誌と読者の皆様へのメッセージもいただいた。
世界で義足が必要な人々がどのくらいいるか、ご存じだろうか?世界中には高額なために、そして義肢装具士の不足のためなどで義足が利用できない人が非常に多い。その人々に日本のテクノロジーを用いて、精工な義足を提供しようと、まずフィリピンで邁進しているのがinstalimb(インスタリム)だ。そのビジョンは?展望は?事業統括の足立氏に伺った。
フィリピンにある日本食レストランブランドの中で、最も多くのエリアで店舗を保有しているのはどこかご存じですか?答えは「BOTEJYU®(ぼてちゅう®)」。今年の8月にフィリピンで8周年を迎え、現在89店舗を展開していますが、その躍進の秘訣は?そして、目指すところは?BOTEJYU®グループの栗田氏と、フィリピン側のパートナーであり、フィリピンを代表するエンターテイメント企業VIVA Communication Inc. Chairman Vicente Del Rosario, Jr さんにお話を伺いました。
商船三井のフィリピンにおける100%出資現地法人2社、EcoMOLInc.(エコモル)とMOLBulkShipping Philippines(MOLバルクシッピングフィリピン)をMOL Enterprise (Philippines) Inc.(MOLエンタープライズ)にこの4月に事業統合、高い経済成長が見込まれるフィリピンでさらなる躍進を目指す。その背景と目指すところは? エコモルの設立に携わり、運航船のオペレーション効率化を推進して来た横橋 啓一郎氏にお話しを伺った。
フィリピン不動産賃貸ポータルサイト  |   フィリピン求人 ジョブプライマー  |   BERENTA:Find the condo that suite you  |   【フィリピン在住者向け】コンシェルジュ&会員制コミュニティ Barong Club
ページトップに戻る