ブログ
食べる
経済ニュース
コラム
求人情報

HOME >  フィリピンのコラム  >  フィリピンビジネス情報 by JETRO

フィリピンビジネス情報 by JETRO

フィリピンのビジネスに関した様々な情報をJETROの吉田さんに寄稿していだきます。
今回は先に成立したフィリピンでの外資規制緩和の動向について、その内容を解説していただきます。

日本貿易振興機構(ジェトロ)マニラ /
Japan External Trade Organization (JETRO) Manila
吉田 暁彦さん Mr. Akihiko Yoshida

 

2015年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ名古屋を経て、2020年9月より現職。フィリピン経済についての調査・情報発信と、日系スタートアップに対するフィリピンへの展開支援を主に担当。

 

 

 

フィリピンの外資規制緩和についての動向

 

フィリピンでの外資規制緩和の動向について説明します。なお、本情報は2022年2月6日時点での内容になります。
 昨今、フィリピンにて3つの外資規制緩和に関する法案が議会を通過しました。1つ目が「小売り自由化法の改正法案」、2つ目が「外国投資法の改正法案」、3つ目が「公共サービス法の改正法案」です。小売り自由化法の改正法案は、大統領の署名を経て既に成立済です(以下、「小売り自由化法の改正法」と記載)。また、外国投資法の改正法案と公共サービス法の改正法案は、大統領の署名待ちとなっています。

3法案について概要を解説します。

(1)小売り自由化法の改正法
2000年に施行された小売り自由化法は、国内事業者の保護の観点から、外資系企業の参入に対して高いハードルを設定していました。小売り自由化法の改正法では、小売分野へ進出をする外資系企業に対して課されていた各種の要件を緩和します。

1.外資系企業の場合、払込資本金を250万ドル(約2億8,750万円、1ドル約115円)以上と規定していた要件を、2,500万ペソ(約5,750万円、1ペソ=約2.3円)以上に引き下げ。
2.外資系企業の場合、フィリピンから事業撤退する場合を除き、払込資本金を2,500万ペソ以上の金額で維持し続けなければならない。なお、同要件を満たすことができなかった場合、罰則が科される。
3。外資系企業が実店舗を運営する場合、各店舗への投資額を83万ドル以上と規定していた要件を、1,000万ペソ以上に引き下げ。 小売り自由化法では、小売業で5年以上の実績を有することや、世界で小売店舗もしくはフランチャイズを5件以上展開していること、親会社の純資産について一定金額以上であることを要件としていたが、これらの要件を撤廃。

(2)外国投資法の改正法案
 1991年に施行された外国投資法(共和国法第7042号、1996年改正)について、同法の改正法案ではより多くの分野に対して、外国からの投資を促すことを目指しています。 法案の具体的な内容については、大統領署名後のフィリピン政府による発表を確認する必要があります。議会を通過した法案について、現地紙では以下の内容が盛り込まれているとの記載があります。

1.ネガティブリストにて外資が規制されている分野以外は、100%外資の出資が可能であるという現行の外国投資法での制度設計は維持。
2.100%外資出資が可能な、国内市場向けの分野を拡大。
3.国内市場向けの分野に属するスタートアップ企業は、最低払込資本金を10万ドルに設定。
4.最低払込資本金が10万ドルとなる要件のうち、「50人以上を直接雇用」について、大半がフィリピン人という条件付きで「15人以上を直接雇用」に修正。

(3)公共サービス法の改正法案
 1936年成立の公共サービス法は、フィリピン人もしくはフィリピン人が60%以上出資する企業だけに「公益事業」の運営・管理業務への参入を認めていました。しかし、「公益事業」の定義が明確でなかったため、これまで幅広い分野が「公益事業」とみなされ、外資系企業がフィリピンにてビジネスを行う上での参入障壁になってました。改正法案によって、「公益事業」の定義を明確化するとともに、フィリピンにとって外資参入を期待する分野について外資の出資比率の上限を撤廃し、経済活性化へとつなげることがフィリピン政府の狙いです。

 法案の具体的な内容については、大統領署名後のフィリピン政府による発表を確認する必要があります。議会を通過した法案について、現地紙では以下の内容が盛り込まれているとの記載があります。

1.通信、国内輸送、鉄道・地下鉄、航空、高速道路・有料道路、空港を「公益事業」の定義から除外。したがって、これらの分野で40%を上限とする外資出資規制を撤廃。
2.送配電、石油パイプライン、配水システム、港湾、公共交通車両は「公益事業」に含める。これら分野への外資出資比率について、40%が上限となる。

これら3法案について、ドゥテルテ大統領やフィリピン国家経済開発庁(NEDA)等の経済官庁は議会に対して可決を強く促してきました。その理由の1つとして、フィリピンの制度は比較的に外資に対する制限が強く、それがフィリピンの経済発展を阻害してきたという見解があります。例えば、2020年を対象期間とした経済協力開発機構(OECD)の分析によると、フィリピンは83カ国・地域の中で3番目に外国企業による対内直接投資に対して制限的であるとの結果が出ています(表をご参照)。

表:FDI 制限指数の順位

(出所)OECD , FDI restrictiveness (2020)よりジェトロ作成。指数は0~1の間を取り、数値が高い程、FDIに対して制限的であることを示します。

フィリピン政府は外資規制を緩和させることで、新たな雇用が国内で生み出されることや、市場での企業間の競争を通じて国内産業の生産性が向上すること、製品やサービスを選択する幅が広がるといった、消費者にとっての利便性が増大することを期待しています。

 

JETRO サイト:
https://www.jetro.go.jp/philippines/

広告

新着コラム

今回は、最近にフィリピンで話題となっているコメ価格高騰について説明します。加えて、こうした食糧問題をビジネスチャンスととらえ、果敢に農業分野へ投資する企業の動きも紹介します。
今回はフィリピンのインフレ率動向について説明します。2022年はフィリピンでも日本同様、物価高騰に悩まされた1年でした。2021年のインフレ率が3.9%に対して、2022年は5.8%まで高まり、フィリピン政府がインフレ目標としている2~4%を超過しました。一方、2023年に入ると、1月をピークにインフレ率は低下傾向にあります。
東南アジアのスタートアップの拠点として、シンガポールやインドネシアは大きな存在感があります。一方で、フィリピンにおけるスタートアップへの投資件数や投資額はここ数年で飛躍的に増加しており、新たなスタートアップの拠点として投資家の関心も着実に高まりつつあります。今回は成長経路へと突入しているフィリピンのスタートアップ・シーンについて説明します。
2023年4月、フィリピンでSaaS型の勤怠・給与管理システムを提供するSprout Solutions(以下、「Sprout」と記載)がマイナビや東京とシンガポールに拠点を置く投資会社、ACAインベストメンツなどからシリーズBにて計1,070万ドルにのぼる資金調達を行いました。今回、ジェトロはフィリピンで急成長のスタートアップとして注目を集めているSproutのCEO兼共同創設者であるパトリック・ジェントリー氏にインタビューを実施しました(インタビュー実施日:2023年5月19日)。
近年、日本企業によるクロスボーダーでの資本提携やM&A取引が増加傾向にあります。その中で、アセアンは日本企業による主要な投資先の1つとなっています。ジェトロは今回、アテネオ・デ・マニラ大学経営大学院のレベリック・T・ナン博士にフィリピン企業のコーポレート・ガバナンス(注1)や日本企業がフィリピンにて投資を行う際の注意点についてインタビューを行いました。
フィリピン不動産賃貸ポータルサイト  |   フィリピン求人 ジョブプライマー  |   BERENTA:Find the condo that suite you  |   【フィリピン在住者向け】コンシェルジュ&会員制コミュニティ Barong Club
ページトップに戻る