『請負に関する省令変更のポイント』
前回では新たにフィリピン駐在となった方々向けの注意点についてお話させていただいております。今回は3月に発表されました請負に関する省令Department Order No. 174 (D.O. No. 174)についてお話しいたします。
<D.O. No. 174とは?>
新省令において発注者にとって重要なポイントは以下の通りとなります。
① 禁止される労働力のためだけの請負契約の変更
② 上記以外の禁止される労働協定の拡大
③ 発注者の責任の変更
① 禁止される労働力のためだけの請負契約の変更
旧省令では、禁止される労働力のためだけの請負契約の類型の一つとして、「請負業者の従業員が、通常発注者の業務に必要又は望ましい業務を行う場合」が含まれていましたが、今回の改訂でこの条件は削除され、そのような業務を請負業者の従業員に行わせることは可能になりました。したがって、請負業者の従業員が行うことにより直ちに禁止される労働力のためだけの請負契約に該当する業務は、「発注者の主たる業務に直接関連する作業」のみとなりました。なお、いずれにせよ、請負業者が従業員の業務の遂行に対する管理監督権限を行使しない場合は、やはり労働力のためだけの請負契約であるとして禁止されることには変わりはありません。
② 上記以外の禁止される労働協定の拡大
旧省令では、労働力のためだけの請負契約にはあたらないとしても一定の例を挙げ、これらのいずれかに該当する形態で請負会社の従業員に業務を行わせることが、誠実さに欠け、業務上の要請から正当化されない場合には違法であると定めていました。しかし、新省令においては、挙げられた例に該当する形態の業務を請負会社の従業員に行わせた場合、それが誠実になされたものであり、業務上の要請から行われたものであったとしても、一律に違法であると定めています。
新省令で禁止される例として挙げられているものの一つに、「その時点で発注者の正社員に行われている役割を請負業者の従業員に行わせること」があります。すなわち、それまで発注者の正社員が行っていた業務を請負業者の従業員に替わって行わせることは禁止されますし、発注者の正社員が行っていた業務を請負業者の従業員が平行して行うことも禁止されることになります。ですから、請負業者に外注できる業務の範囲は相当限定的になったというべきでしょう。
③ 発注者の責任の変更
旧省令では、禁止される労働力だけのための請負契約に当たる場合や、その他違法な労働協定に該当する場合、実際にどうなるのかについての規定がありませんでした。しかし、本省令では上記の違反がある場合には、請負業者の従業員は発注者の従業員と見なされるとの規定が置かれることになりました。
これらが主な変更点ですが、その他にも変更された箇所が多々あります。特に、これまでとは違い、実地検査を行う係官も大幅に増員され、違反があった場合に摘発される可能性も格段に高まったといえますので、既に請負業者に業務を発注している場合、また、これから発注を行うことを考えている場合には、省令違反がないよう、専門家のチェックを受けるなどの準備をすることが必要です。
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