『ライセンス契約について』
今月の事例
<フィリピンで有効なライセンス契約とは>
日本の会社がフィリピンの会社に技術ライセンスを提供して製品の製造等を行わせるケースが多いと思われますが、仮に問題が起こった際に不利にならないよう、自社の権利を十分に保護した上でライセンスを供与することが必要となります。もっとも、ライセンシーとの契約はフィリピン法上有効でなければなりません。そこで、日本の会社がフィリピンの会社に対してライセンスを付与する契約を締結するに当たっての注意点を説明致します。
まず、フィリピンにおいては、このような技術のライセンスに関する契約をTechnology Transfer Agreement(TTA)に分類し、TTAがフィリピンにおいて有効かつ強制可能なものであるためには、フィリピン知的財産法(The Philippine Intellectual Property Code)が必ず規定されなければならない事項、および、規定してはならない事項を定めていますので、前者についてはこれを必ず盛り込み、後者についてはこれを含まないようにしなければなりません。
<規定しなければならない事項>
(1)フィリピン法が準拠法であり、紛争が発生した際にはライセンシーの本店所在地を管轄する裁判所が管轄を有すること
(2) TTAの期間中、技術の改良等があった場合、ライセンシーがそれらにアクセスすることができること
(3) 紛争解決手段として仲裁を選択する場合、フィリピン仲裁法、UNCITRALまたはICCの手続法を適用し、仲裁地がフィリピンまたは第三国とされている(日本ではない)こと
(4) フィリピンで発生する税金はライセンサーが負担すること
<規定してはならない事項>
(1)定められた者から重要な物、中間製品、原材料等を購入することを義務づけること等
(2)ライセンサーに再販価格を決定する権限を与えること
(3)製造量及び構造に制限を加えること
(4)非独占的なTTAにおいて、競合する技術の利用を禁止すること
(5)ライセンサーに有利な購入権を規定すること
(6)ライセンシーによる発明や改良を無料でライセンサーに移転することを義務づけること
(7)使用されない特許の使用料の支払いを義務づけること
(8)合理的理由なくしてライセンス製品の輸出を禁止すること
(9)TTAの有効期間経過後におけるライセンス技術の利用を制限すること
(10)特許その他知的財産権の失効後もその使用料の支払いを求めること
(11)特許の有効性を争うことを禁止すること
(12)ライセンシーによるリサーチ活動を制限すること
(13)輸入された技術をローカルの現状に適合させることを禁止すること
(14)ライセンサーの責任を免責すること
(15)その他同等の効果を持つ条項を規定すること
規定することが義務づけられている事項についての規定がない、または、規定してはならない事項を含むライセンス契約は、フィリピンにおいては強制不可能な契約となります。もっとも、かかる契約であったとしても、フィリピン側にメリットが大きい場合などは当局(Documentation Information and Technology Transfer Bureau;DITTB)から認定を受けることにより、例外的に強制可能な契約として認められる場合があります。
なお、知的財産局(Intellectual Property Office; IPO)にライセンス契約を登録することは義務づけられてはいませんが、登録がなされたライセンス契約は当局により強制可能なライセンス契約と認められたことを意味しますので、特段の事情がない場合には登録されることをお勧めします。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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