『フィリピンでの遺産分割協議について』
今月の事例
<フィリピンでの相続>
フィリピン国内の資産に関する相続手続についての管轄権はフィリピンにあります。有効な遺言がある場合は遺言に従って遺産分割がなされますが、遺言がない場合には、フィリピン法に定める手続にしたがった遺産分割手続が必要です。
<原則>
まず、原則的な遺言がない場合の相続手続ですが、法定相続人等が裁判所に遺産管理手続開始の申立を行います。この申立を受けて裁判所は遺産管理人を選任し、遺産管理人が相続財産を管理し、債務の支払いを行ったのちに残った財産があればこれを法定相続人に分配することになります。なお、相続に関しては日本法が適用されますので、たとえば法定相続人が配偶者と子の場合、法定相続分としては配偶者が2分の1、残りを子が均等に相続するということになります。
<裁判外の遺産分割協議>
上記の裁判所による遺産管理手続は、裁判所の手続が必要ですから、手間と時間がかかるため、以下の条件を満たす場合には裁判外の遺産分割協議に基づいて遺産分割を行うことも可能です。
①被相続人に債務がないこと
②被相続人が遺言を残していないこと
③相続人が成人か、未成年の場合、法定代理人により代理されていること
これらの条件を満たした場合には、裁判外での遺産分割協議を行うことが可能ですが、遺産分割協議書を作成するだけでは有効とはならず、以下の手続を行う必要があります。
①BIRから登録許可書(CAR)の取得
まずは、BIRに相続税(Estate Tax)の申告を行い、相続税の申告を行った上で、遺産分割協議書の登録許可書(Certificate Authorizing Registration; CAR)を取得する必要があります。ちなみに、フィリピンでは20万ペソを超える金額の資産がある場合には相続税が発生し、相続財産の金額に応じて5%から20%の税率で相続税がかかります。
②相続人保証金証書(Heirs’ Bond)の取得
相続資産に不動産以外の資産(銀行預金等)が含まれている場合には、不動産以外の資産の金額の約3%に相当する額の保証金を預託し、保証金証書を取得する必要があります。
③3週連続の新聞広告
遺産分割協議書を日刊紙において3週連続、週1回ずつ公告しなければなりません。
④遺産分割協議書の登録
上記の手続を実行したことを証明する書類を添付して登録官に申請することにより、遺産分割協議書の登録が完了します。不動産については登録官が遺産分割協議書に従った内容の権利証を発行し、銀行等については遺産分割協議書の登録完了の証書を提出することにより、それに従った払い戻し等が行われることになります。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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