『フィリピンの手形』
今月の事例
Q.新たな取引先と取引を開始し、今月納品した商品の代金を2ヵ月後に受け取ることになり、2ヶ月先の日付の入った小切手を受け取りました。これは必ず支払われるのでしょうか?
<フィリピンのチェック>
日本ではあまり使われない小切手ですが、フィリピンでは将来の支払いのために将来の日付の入った小切手(いわゆるpost dated check)が使われることがよくあります。この場合、商品の売買取引の場合で買主が売主に対して商品代金相当の小切手を渡します。
小切手を受け取った売主はその小切手を銀行に持ち込み、小切手交換所を経由して買主が小切手を発行した銀行の口座において決済がなされ、売主の口座に入金がなされることにより支払いが完了することになります。このように無事に支払いが完了すれば問題はありませんが、小切手が現金化のため銀行に持ち込まれた際に、小切手振出人の銀行口座に十分な残高がなかったために小切手が決済されないということが起こりえます(いわゆる、バウンス・チェック)。
日本では約束手形や小切手が不渡りになった場合には1回目で不渡り報告がなされ、更に1回目の不渡りから6ヶ月以内に2回目の不渡りとなった場合には取引停止処分がなされ、事実上は事業の継続が難しくなるため、振出人はなんとしてでも不渡りが発生することを防ごうと努力します。
フィリピンにおいては、日本のように小切手が不渡りになることによる銀行取引停止処分というペナルティーはありませんが、決済口座の残高不足等により小切手を不渡りにすることは、Anti-Bouncing Checks Law(BatasPambansa No. 22)違反として刑事罰の対象となりますし(30日から1年間の禁固に加え、額面の2倍(但し、最大20万ペソ)までの罰金刑となる可能性があります)、当初から払えないことを知りながら小切手を振り出したような場合には刑法が定めるEstafaに該当します(最高で20年の禁固)。
このような罰則があるにもかかわらず、小切手の不渡りはよく発生しますので、取引を行うに当たっては、相手方の信用力について慎重に調査の上、必要に応じては保証人や担保を求めるなど、取引条件を定める必要があると言えます。なお、不渡りが発生した場合、任意での支払いを求め、それでも支払いがなされない場合には裁判により回収することになります。
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<Promissory Noteとは?>
ちなみに、フィリピンではPromissory Noteと呼ばれる文書が存在します。これを日本語に約した場合、約束手形と翻訳する例がありますが、これはあくまでも文書の作成者が名宛人に対して文書に書かれた内容について約束するに過ぎませんので、約束手形と言うよりも、誓約書と表現するほうが正しいといえます。
よって、その内容が守られなかった場合には任意に約束を守るよう請求するか、それでも守られない場合には裁判を起こすより他ありません。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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