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シングル・エントリー・アプローチ(SEA)とは【フィリピン法律あらかると第七十四回】

『シングル・エントリー・アプローチ(SEA)とは』


今月の事例

Q.コミュニティ隔離措置により工場が一時操業停止になったことにより、他の工場への異動を求められたところ、出勤しなかった従業員がNLRCに異議を申し立て、当社に通知が届きました。これはどのような手続でしょうか?
 
 
<個別労働紛争解決の手続>
労働者が雇用者に対して不服申立を行う場合、以下のとおり手続が流れます。

≪労働雇用庁(DOLE)レベル≫
① Single Entry Approach (SEnA)
② Regional Arbitration Branch (RAB)
③ Commission Proper Level (CP)

≪裁判所レベル≫
④ Court of Appeals (控訴裁判所)
⑤ Supreme Court (最高裁判所)
設問の会社が受領した通知は①Single Entry Approach (SEnA) に関するものです。この手続は、②と③の強制的な仲 裁手続を行うに先立ち、担当官(Desk Officer)のもと、短時間で両当事者間において和解的な解決を図るために新設された手続で、規則上、30日以内に問題解決を図ることが定められています。
この手続を申し立ては、労働者だけでなく、労働組合、労働者の集団、さらに、雇用者側も可能であり、おおよその個別的な労働者と雇用主との間の紛争については取り扱いが可能となっています。
 
SEnAの手続を開始するためには、申立人が援助要請書 (Request for Assistance)に記入の上、中央労使関係委員会(National Labor Relations Commission; NLRC)担当官に提出することが必要です。申立を受理した担当官は、定められた30日間の期間内に紛争を解決するため、事案に内容を精査し、申立人の請求や、当事者の状況を検討し、打ち合わせなどを持つことにより、両当事者が任意で合意に至るよう、必要な努力を行います。なお、コロナウィルス対策のコミュニティ隔離措置がとられて以降、当事者が直接出席しての手続きは行われておらず、代わりに雇用主は書面で和解案等を提出することが求められています。30日の期間は両者の合意があれば最大で7日間延長することが可能とされています。もっとも、この手続はあくまで両当事者が任意に合意に至ることを目指す制度ですので、両者が任意の和解に合意することができなかった場合、担当官は紹介状(Referral)を作成し、別の機関での紛争解決を促すことになります。一般的には、上記の②Regional Arbitration Branch (RAB)における強制的な仲裁手続が行われ、労働仲裁官(Labor Arbiter)が両者の主張を聞いた上で、事件につき判断し、その判断にも不服が申したてられた場合は、③Commission Proper Level (CP)の労働仲裁官による判断、それでも不服がある場合は④控訴裁判所、⑤最高裁判所の裁判による判決が下されるという流れになります。本件の事案においては、会社はコロナウィルスにより影響を受けた事業の再構築のため、代替的な勤務スケジュールや一時的な操業停止等を行うことが可能となっており、それに沿った措置を会社が行うことは許されていますので、これに従わずに出勤しなかった従業員に対して賃金を支払わないことは認められる余地があると思われます。なお、個別事情により異なりますので、詳しくは専門家にご相談ください。
 
 

結論

A.これはSingle Entry Approachの通知であり、任意に当事者間の紛争を解決する手続です。この手続で解決がなされなかった場合、強制的な仲裁手続が行われます。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。



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