日本との犯罪捜査協力【フィリピン法律あらかると第九十五回】
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『日本との犯罪捜査協力』
今月の事例
Q.フィリピンの当局に日本の犯罪容疑者の引渡を求めることはできますか。
<犯罪者引渡の可否>
近時話題となった件に関連して、日本とフィリピンの犯罪捜査に関連して解説させていただきます。まず、日本での犯罪の容疑者がフィリピン国内にいることが判明した場合、日本がフィリピンに対して、その容疑者の引渡を求めることができるかにつきましては、日本とフィリピンとの間で犯罪者引渡条約が締結されていないため、日本がフィリピンに対して条約上の義務として引渡を求めることはできません。
<PNP(フィリピン国家警察)による捜査協力>
2021年の刑事事件に関する相互法律援助に関する司法省のガイドラインによりますと、日本は犯罪者引渡条約を締結していないものの、刑事法の執行に関し、条約に基づかない、非公式な協力要請を行うことを認めています。もっとも、捜査協力の内容としては、容疑者の逮捕は認められておらず、可能な捜査協力としては、a.証拠の収集や供述の録取、b.証拠の引渡や証人の出頭に関する調整、c.拘束中の者を証人として出頭させるための一時的な身柄の移動、d.書類の送達、e.証人や容疑者の捜索及び人定、f.対象物や場所の調査等が挙げられています。上記の刑事事件に関する相互法律援助では被疑者の逮捕を行うことはできませんが、仮に日本人がインターポールにおける国際手配がなされている場合であれば、フィリピン国家警察はその容疑者を逮捕することが可能です。
<強制退去>
フィリピンは主権国家として、国内にいる外国人に退去を求めることができます。この場合であっても、恣意的に国外退去を求めることはできず、正当な理由があり、また、正当な手続を経た場合にのみ、退去を求めることができることになります。1940年フィリピン入国管理法(共和国法第613号)によりますと、37条(A)項に該当する外国人に対しては、入国管理局長等が逮捕の上、国外退去とすることができるとされています。以下、その一部を列挙しますと、①入国時に虚偽及び誤解を生じる陳述を用いて入国した者または入国手続を経ずに入国した者、②フィリピン入国から5年以内に道徳に反する罪で1年以上の刑に処せされた者または2回以上刑に処せられた者、③非移民として許可された制限または条件に違反して在留を続けている者、④差し押さえや競売の対象となる資産を隠匿することにより債権者を騙した者などが含まれます。
なお、今回のケースでも問題となりましたが、国外退去の要件を満たす外国人がフィリピン国内において刑事裁判の対象となっている場合、その裁判が終了し、その刑期が終了した後でないと国外退去とすることができません。
なお、今回のケースでも問題となりましたが、国外退去の要件を満たす外国人がフィリピン国内において刑事裁判の対象となっている場合、その裁判が終了し、その刑期が終了した後でないと国外退去とすることができません。
結論
A.犯罪者引渡条約がないため、原則的にはできません。但し、 フィリピン当局は、外国人を国外退去させる権限があります。
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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