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外国仲裁判断のフィリピンでの執行【フィリピン法律あらかると第九十九回】

『フィリピンでの仲裁』


今月の事例

Q.外国で得た仲裁判断をフィリピンで執行することは可能でしょうか?
 
 
前回はフィリピン国内での仲裁について説明をさせていただきましたが、現時点ではフィリピン国内で仲裁を行うケースは少ないと思われます。そこで、今回は外国で得た仲裁判断のフィリピン国内での執行の実際について解説させていただきます。

外国仲裁判断のフィリピン国内での執行に関しては、ADR法(共和国法第9285号)に規定があり、1958年外国仲裁判断の承認執行に関するニューヨーク条約の加盟国においてなされた外国仲裁判断については最高裁判所の定める規則(ADRに関する裁判所特別規則)に従って承認執行に関する手続きが行われることとされ(同法第42条)、同条約の加盟国以外でなされた外国仲裁判断に関しては、礼譲及び相互主義の精神に基づき、当該仲裁判断の承認執行が可能であるとされています(同法第43条)。ここでは、ニューヨーク条約の締結国での仲裁判断であることを想定して以下解説致します。

フィリピンにおいて外国仲裁判断の承認執行を行おうとする当事者は、地方裁判所(RTC)に対して必要書類を添付の上、承認執行を求める申し立てを行います。裁判所は原則的には外国仲裁判断を承認しますが、あらゆる場合においてこれを自動的に承認しなければならないものではなく、外国仲裁判断の執行を受ける相手方がその承認執行を拒絶することを求め、その申し立てに理由があると認める場合、裁判所は当該外国仲裁判断の承認執行を拒絶します。ただし、承認執行の拒絶理由は以下の事項に限られます(裁判所規則A.M. N o . 07-11-08-SC, Rule 13.4)。①仲裁合意の当事者が無能力であった場合、または、仲裁合意が有効でない場合

②仲裁人の選任またはその他の仲裁手続に関して、適切な通知が行われなかった場合
③仲裁の対象となる事項ではない事項につき、または対象となる事項を超える事項につき仲裁判断がなされた場合
④仲裁廷の構成または仲裁手続が仲裁合意と異なる場合
⑤仲裁判断が確定していない場合または仲裁判断がなされた国の裁判所により当該仲裁判断が取り消しもしくは停止された場合

これらのほか、裁判所は紛争の対象がフィリピン法に基づく仲裁による解決に適さない場合、または、当該仲裁判断の承認または執行がフィリピンの公共政策(public policy)に反する場合にも外国仲裁判断の承認執行を拒絶することができます。過去に外国仲裁判断の承認執行につき争われた事例は多数ありますが、外国仲裁判断がフィリピンの公共政策に反するとしてその承認執行の拒絶が申し立てられた事案では、裁判所がその主張を否定し、仲裁判断の承認執行が命じられました(G.R. No. 212734、2018年12月5日決定)。他方、承認執行申し立てのための添付書類に不備があるとして裁判所規則違反が認められ、承認執行が否定された事例もあります(G.R. No. 220250、2020年9月7日決定)。
 
 

結論

A.裁判所の承認を得ることにより、執行が可能となります。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。



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