『フィリピンの倒産法制』
今月の事例
フィリピンにおいて倒産について定めている法律は2010年に改定されたFinancial Rehabilitation and Insolvency Act(FRIA) of 2010(以下、FRIAといいます。)です。FRIAは個人と法人が支払不能状態となった場合に取られる手続について規定しています。なお、破産に対応する英語としてBankruptcyという単語を思い浮かべる方も多いと思いますが、フィリピン法ではBankruptcyという単語は使わず、Insolvencyという単語が一般的には使われています。
FRIAでは、法人の破産に関する手続として、以下の手続を定めています。
再生手続とは、債務者を正常な経営と支払能力の状態に回復することと定義されており、日本法における民事再生手続に近いものと言えます。 裁判所監督の再生手続には債務者が申し立てる場合と債権者が申し立てる場合の2種類がありますが、本稿では、上記のうち、債務者が申し立てを行う裁判所監督の再生手続につき説明させて頂きます。
<裁判所監督の再生手続(Court-Supervised Rehabilitation)>
債務者が再生手続を申し立てる場合、支払不能に陥った原因、裁判所に求める救済の内容、債務者名簿、再生計画案、管財人候補者の名簿(最低3名を候補者として挙げる)、その他法律により要求された情報を記載した申し立て書類を裁判所に提出することが必要です。
裁判所が申請書類を審査し、十分であると判断した場合、開始命令(Commencement Order)を発令します。開始命令が出されますと、(i)開始命令が出された旨の新聞公告がなされ、(ii)債務総額の10%以上の債権者には個別に通知がなされ、(iii)管財人が指名され、(iv)債権者はその債権の額および内容につき第1回債権者集会の5日前までに通知することが要請され、(v)債務者に対するサプライヤーは債務者が支払いを継続することを前提に供給を停止することが禁じられ、(vi)債権者による債務の取り立てや債務者による通常の事業の過程で行われる以外の財産の処分を禁止する維持停止命令(Stay or Suspension Order)等が出されます。
第1回債権者集会で債権者は意見を述べることができ、管財人は集会から40日以内に裁判所に対して報告書を提出します。報告書をもとに裁判所は再生の可能性につき判断を行い、さらに管財人は債務者、債権者双方と意見交換を行い、最終の再生計画案を策定し、債権者に提案します。そして、再度開催された債権者集会において債権者の過半数の同意を得た上で裁判所に承認を求め、裁判所の承認を得ると再生計画は各当事者を拘束し、再生計画に従った弁済等が行われることになります。なお、債権者の同意が得られなかった場合であっても裁判所が計画の承認を行う場合もあります。
なお、再生手続申請前に行われた抜け駆け弁済等は、日本における場合と同様、偏頗弁済として無効とされることもありますので、注意が必要です。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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