『フィリピンのフランチャイズ法制』
今月の事例
フランチャイズ契約はフィリピンにおいては技術移転契約の一類型として分類されており、これに対する規制は知的財産法(共和国法第8293号)でなされていましたが、2022年5月12日に公布された大統領令第169号(中小企業の保護のためのフランチャイズ産業強化に関する大統領令)による規制も受けることとなりました。
<知的財産法での規制>
知的財産法では、フランチャイズ契約を含む技術移転契約において、規定しなければならない事項と規定してはならない事項について定めています。具体的に規定しなければならない事項としては、フランチャイズ契約の準拠法をフィリピン法とし、紛争が発生した場合にはライセンシーの本店所在地を管轄する裁判所が管轄を有すること、仲裁条項を設ける場合は、フィリピン仲裁法またはUNCITRALまたはICCの手続法を適用し、仲裁地をフィリピンまたは第三国とすること、技術移転に関連してフィリピン国内で発生する税金の支払いはライセンサーが負担することが求められています(法第87条)。他方、規定してはならない事項としては、特定の者からの資本財や中間製品、原材料等の購入を義務づけること、ライセンサーに販売価格等を決定する権限を付与すること、ライセンスに基づく製造量等に制限を加えること等が挙げられています(法第88条)。
<大統領令第169号での規制>
2022年に出された大統領令では初めてフランチャイズ契約の定義づけが行われ、フランチャイズ契約とはフランチャイザーとフランチャイジーとの間の書面による合意であって、前者が後者に対して商品またはサービスを提供、販売または頒布する事業を行う権利を付与する契約と定義しています。
もっとも、この大統領令は全てのフランチャイズ契約に対して適用されるものではなく、フランチャイジーがMSMEに分類される中小企業(総資産が1億ペソ以下)である場合にのみ適用され、それ以外の大企業がフランチャイジーの場合には適用されません。
次に、この大統領令の適用を受ける場合にどのような規制を受けるかということですが、MSME企業と締結するフランチャイズ契約は、書面で締結され、公証を受けなければならないことに加え、付与される権利の内容、契約締結前また契約期間中に必要となる費用、各当事者の義務の内容、契約解除の事由および効果、2004年ADR法に定める調停を含む、紛争解決方法などの条項が最低でも定められている必要があります。
さらに、フランライザーの義務として、契約書をDTIに登録することが求められており、これを怠った場合、フランチャイザーはフィリピン政府から与えられるインセンティブや特典を受けることができなくなるとされています。もっとも、現時点では、契約書を登録するシステムがDTI内には整っておらず、また、インセンティブ等の内容も明らかになっていませんが、いずれこれらは整備されるものと思われますので、今後フランチャイズ契約を締結する際は、上記の規制に合致した契約であることが望ましいと言えます。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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