『リモートワークについて』
今月の事例
<出国禁止命令の種類>
フィリピンでも日本と同様にコロナのパンデミック期間にリモートワークが拡がりを見せましたが、フィリピンにおけるリモートワークに関する法制について今回はご説明させて頂きます。
フィリピンにおいてリモートワークについて定めている法律は2018年に成立したTelecommuting Act(共和国法第11165号)と、2022年に公表された同法の施行細則(DOLE D.O. No. 237)です。同法は、”Telecommuting”とは、私企業の従業員に対して遠隔で音声、データ、電子メッセージ等を伝達、受領するシステムおよび/またはコンピューターのシステムを利用して代替的な職場において勤務することと定義しており、本稿ではこれをリモートワークと呼ぶことにします。
雇用主がリモートワークを導入する場合、リモートワークについて定める独立したポリシーを定める必要があり、その内容が現時点で適用されているポリシーや雇用契約、労働協約(CBA)その他に規定されることが必要です。具体的には、対象となる職種、作業環境、コンピュータ等の最低必要環境、業務評価基準、行為基準、データ保護の基準、リモートワークの継続期間等についての規定が必要です。また、雇用主は従業員にリモートワークを強制することはできず、対象となる従業員の自発的な同意が不可欠であり、雇用主は当該従業員がリモートワークの対象となることに同意した書面の証拠を残すこと が必要となり、また、リモートワークを採用していることについてDOLEに報告しなければなりません。
次に、リモートワークを採用する場合の制度設計について説明させて頂きます。まず大前提として、リモートワーク対象従業員の処遇は職場に出勤する従業員と同等の公平な処遇でなければなりません。施行規則にて具体的には以下の点が強調されています:
(a)残業代、夜間勤務手当て等を含む給与その他手当てにつき、法律や労働協約で定めるものを下回らない給与の支払いを受けること
(b)休日、特別休暇等を受ける権利を有すること
(c)職場に勤務する者と同等の業務量及びパフォーマンスレベルが要求されること
(d)職場に勤務する者と同一のトレーニング及びキャリア発展の機会を与えられること
(e)機器取り扱いにつき適切なトレーニングの機会を与えられること
(f)職場に勤務する者と同一の権利を有し、労働者代表とのコミュニケーションを禁止されないこと
もっとも、リモートワーク対象従業員と職場に勤務する従業員との間で取り扱いを異にすること自体を禁止するものではありませんので、合理的な理由がある場合、例えば通勤手当をリモートワーク対象従業員に支給しないことは許されます。最後に、会社側がどうやってリモートワーク対象従業員の勤怠管理を行うかですが、法律はこの点についての規定を置いていないものの、会社が勤怠管理を誠実に行う目的で行う施策である限り、基本的には経営陣の裁量(management prerogative)で行うことができると言えます。ただし、モニタリングの方法は事前に明らかにされている必要があり、従業員の知らない方法で行うことはできません。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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