『外国人との協議離婚に関する最高裁判決』
今月の事例
フィリピンの最高裁判所は、2024年2月27日にフィリピン人と外国人夫婦が国外で成立した協議離婚に関する判決を出しました(G.R. No. 249238)。この裁判では、過去に日本人男性と結婚したフィリピン人女性が協議離婚をし、
その後再婚するにあたり、地方裁判所に対して前の離婚の承認及び再婚の許可を求める申し立てを行ったところ、地方裁判所はその申し立てを許可しましたが、国はその判断を不服として最高裁に上告を行ったものです。
最高裁では、以下の2点が争点となりました。
(1) 外国での協議離婚はフィリピンにおいて承認されるか
過去においては、フィリピン人と外国人の離婚については、外国人が原告として離婚の判決を得た場合のみ、フィリピンにおいても離婚の承認が得られる(その後フィリピン人が再婚可能となる)と認識されていた時期がありましたが、今回の最高裁判決は、当該外国にて協議離婚が認められている場合は、判決による離婚ではなくとも、また、外国人が申し出た場合でなくとも、他の判決と同様に、協議離婚を承認することを再確認しました。なお、フィリピン家族法26条2項は、フィリピン人と外国人が結婚し、その後外国人配偶者が有効な離婚を得、再婚可能となった場合は、フィリピン人配偶者も再婚が可能であると規定しており、この規定をどう解釈するかが争われていましたが、今回の判決は協議離婚の場合もフィリピン人は再婚可能と判断しました。
(2) 外国の離婚に関する法律が立証されたか
上記の通り、外国での協議離婚もフィリピンの裁判所において承認可能ではありますが、かかる承認を受けるためには、原告が協議離婚のあったこと及び日本の離婚に関する法律の存在について立証する必要があります。本件において、原告であるフィリピン人女性は協議離婚に関する在フィリピン日本国大使館発行の離婚証明書や戸籍謄本の英訳等を提出してはいましたが、日本の離婚に関する法律についての証拠としては、日本の民法の離婚に関する箇所の認証されていないコピー及びその翻訳のみを提出しました。しかし、最高裁は原告の提出した証拠のみでは日本の離婚に関する法律について立証がなされていないとして、原審に差し戻すという判断を下しました。
なお、フィリピンの証拠規則によりますと(規則132のセクション24)、公文書(この事件では日本の民法の内容)について立証を行う際は、記録の法的保管権限を持つ職員によって証明された公式出版物またはコピーを提出する必要があり、その公式出版物がフィリピン国外で作成された場合は、そのような職員が保管権限を持つという証明書によることが必要であり、さらにその証明書に対して認証が必要であると規定しています。本判決を受け、今後はどのような証明を行えば足りるのかが注目されます。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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