『フィリピン法人の増資』
今月の事例
フィリピン法人(株式会社)において増資をする必要が生じた場合の手続は、授権株式数を超えるか超えないかで違いがありますので、それぞれについて説明させて頂きます。フィリピンの株式会社において授権株式数を超える増資をすることとなった場合、取締役会での過半数の賛成決議及び株主総会における特別決議(全株主の3分の2以上の賛成が必要となる決議)が必要です(フィリピン改正会社法第37条)。かかる決議を受けて、過半数の取締役が証明書に署名を行い、取締役会議長及び秘書役が確認の署名を行います。これに続き、SEC及び必要な場合はフィリピン競争委員会(PCC)からの承認を受ける必要があります。
また、法人が授権株式数(authorized capital)を超えて新株を発行する形で増資を行う場合は、定款の変更も必要となりますので、株主総会の際には上記増資の決議の際に増資に加えて定款変更の特別決議が必要となります。さらに、定款の変更についてもSECの承認を求めることが必要です。
上記の手続を行い実際に増資を行う場合には、増資された株式の25%以上が引き受けられ、引き受けられた株式のうち25%以上については払い込みがなされることが必要となります。既に何度か説明させて頂きましたが、フィリピンでは引き受けられた株式の全てが一度に払い込みがなされる必要はありません。日本の新株発行とは若干異なることにつきお気を付けください。次に授権株式数までまだ余裕があり、その範囲内で増資をする場合は上記とは異なり、取締役会の普通決議のみで株式を発行することが可能であり、株主総会の特別決議やSEC等からの承認を受ける必要はありません(授権株式を増加するときのSEC等からの承認で、将来行われる授権株式数までの増資についての承認がなされたということになります)。
<Preemptive Rightとは?>
なお、法人が合弁会社として設立され、既に複数の株主がいる場合の増資について追加で説明させて頂きます。フィリピンにおいては、原則として既存株主は増資の際には従前の持株比率に応じた新株引受権(Preemptive Right)を有します(フィリピン改正会社法第38条)。従いまして、従来の持株比率を変更させるような形で増資を行う場合、例えば、新たな株主または従来の株主の一部のみが増資を引
き受ける場合は、新株引受権を有する既存株主から新株引受権を放棄することに同意を得る必要があります。なお、新株引受権は定款の定めによりこれを与えないこととすることもできます。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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