『フィリピン法人の清算』
今月の事例
フィリピン法人を清算するにあたっては、既に債務を完済していることを前提としますと、清算決議による方法と存続期間を短縮して清算するという二つの方法があり、手続がより簡便であることから一般的には後者の存続期間の短縮という方法が取られますが、本稿では両方につき解説させていただきます。
<清算決議による方法>
日本において法人を清算する場合はこの方法によることになりますが、フィリピンで同じようにこれを行おうとしますと、以下の手続が必要となります。
①取締役会決議
②20日前までに株主に対して株主総会開催通知を発送し、新聞紙上にも株主総会開催日までに株主総会開催について掲載
③株主総会の普通決議
清算につき株主総会決議が得られた後にSECに対して清算の申請を行うことになりますが、その際の添付書類の一つにBIRのTaxクリアランスが必要とされています。これは当該法人に税金の未払い等がないかを監査の上発行されるクリアランスであり、申請からその取得まで1年以上かかることが一般的となっていますので、清算の株主総会決議がなされたとしても、実際のSECへの清算の申請がさらに1年以上遅れることになりますので、現実的ではないと言えます。
<存続期間短縮による方法>
上記の理由により、フィリピン法人の清算にあたっては、法人の存続期間を短縮するという方法が実務的には取られます。もともとフィリピンの会社法には会社の存続期間に関する条文があり、株式会社の存続期間は最長50年と規定されていましたところ(旧会社法11条)、改正会社法により会社の存続期間は永久と変更されましたが(改正会社法11条)、定款を変更することにより会社の存続期間を定めることが可能であり、これを利用して会社の存続期間を定め、その日の到来により会社を消滅させることが可能です。もっとも、この方法による場合は会社の定款を変更する必要がり、フィリピンでは会社の定款の変更には株主総会特別決議に加え、SECの許可が必要となります。さらに、会社の存続期間の終期を1年以内とする定款変更申請を行うには上記
の清算決議と同様、BIRのTaxクリアランスの添付が必要とされているため、現実的には1年以上先の日付を存続期間の終期とする定款変更申請を行います。
SECがこの定款変更を許可しますと、会社は存続期間の終期を以て会社法上は存在しないこととなり、残された手続はBIRよりTaxクリアランスを得ることとなります。存続期間の終期までに従業員の解雇や資産の処分等必要な手続きを行い、後はこの手続を落ち着いて行えばよいということになります。一般的には、事前に取締役会においてその後の手続きを行う清算人等を選任し、その者が手続きを行います。
,/div>結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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