『フィリピンでのスクイーズ・アウト』
今月の事例
スクイーズ・アウトとは、株式の売却に応じない株主から強制的に株式を取得することにより、当該会社の全株式を取得することを指します。日本ではM&Aの手法として、このスクイーズ・アウトが可能となっていますが、フィリピンではこの方法が認められていません。
そこで、対象会社の全株式の取得を目的とする場合において、株式の売却に応じない株主に対して自発的に株式の売却に応じるよう有利な条件を持ちかけるなどのオファーをしたにもかかわらず株式の譲渡に応じてもらえないときは、他の方法を考える必要があります。 そこで、これを解決する方法の一つとして、吸収合併を行うことが考えられます。具体的には、全株式の取得を目標とする会社を消滅会社として、あらたに消滅会社の業務を行うための受け皿会社を設立し、それを存続会社とする合併を行うといういわゆる吸収合併を行い、消滅会社の株主に対して合併の対価として現金を交付するという方法が考えられます。これによれば、合併に賛成しない株主がいたとしても、合併を進めるために必要な議決権を有する株主による賛成があれば、合併を進めることができることになります。
フィリピンで合併を行う際、概略、以下の手続が必要となります。
① 取締役会の普通決議
消滅会社と存続会社の双方の取締役会において、合併計画を過半数の賛成にて承認する決議を行います。なお、合併計画には、合併する当事会社の名前、合併の条件およびその実行方法、存続会社の定款が変更される場合はその変更内容、その他合併を行うに際して必要となる事項が記載されている必要があります。
② 株主総会の特別決議
消滅会社と存続会社の双方の株主総会において、特別決議(発行済み株式数の3分の2以上の株主による賛成)にて合併計画を承認します。なお、合併に反対する株主は会社に対して公正な価格で株式を買い取るよう請求することができます。
③ SECの許可
上記手続の後、消滅会社と存続会社の双方において必要書類を作成し、合併の条項(articles of merger)がSECに提出され、審査の結果、現行法や規制に反する点がないと認めた場合、SECは合併を認める証明書を発行し、これにより合併が有効となります。
次に、フィリピンにおける吸収合併の対価としては何が許されているかが問題となりますが、フィリピンにおいては、存続会社の株式だけでなく、現金を対価とすることも可能とされています。したがいまして、合併を承認する株主総会の特別決議が取得できた場合は、仮に消滅会社に合併に反対の株主がいたとしても対価を現金とすること、または、株式買い取り請求が行われた場合もこれに応じることにより、所定の目的を達成することが可能です。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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