『フィリピンでの社債の発行』
今月の事例
フィリピンにおいて法人が社債を発行することについて規定している法律としては、改正会社法と証券規制法(Securities Regulation Code; SRC)が挙げられます。
まず、法人が社債の発行を行う際には、社債の発行につき取締役会の普通決議及び株主総会における特別決議(発行済み株式の3分の2以上を有する株主による賛成)が必要となります。また、株主総会の開催通知には、社債発行が議案であることが明示されていることが必要です。このように取締役会及び株主総会での決議がなされた後、会社は適式に手続が行われたことや発行される社債の内容等に関する証明書を発行します。
上記の手続のみでは社債を発行することはできず、実際に発行するためには証券取引委員会(SEC)や必要な場合はフィリピン競争委員会の事前の許可及び登録が必要です。このSECへの登録を行う必要がある場合、目論見書を含め、SECに対して膨大な資料を提出して届出を行う必要があることから、専門家を交えてかなりな準備と労力が必要となり、多くの法人ではこの手続を行うことは現実的ではないと言えます。もっとも、銀行や登録投資会社、保険会社等が販売する証券は除外証券としてその手続が免除されており、それ以外の法人が発行する証券であっても、不動産や有形動産による担保が付され、単独の購入者に対して社債が発行される場合や12ヶ月の間にフィリピンにおいて20名未満に対して社債が発行される場合(いわゆる少人数私募債の発行)、SECが認めた、いわゆる適格機関投資家のみに対して社債が発行される場合などにおいてはSECへの登録を行う必要はないこととされていますので、この少人数私募債または適格機関投資家のみに対する社債の発行を検討することになると思われます。
以下では少人数私募債、すなわち、20名未満に対する社債の発行を行う場合につき説明致します。少人数私募債を発行する場合、SECに対して通常の社債の発行の登録を行うことは免除されますが、一切の手続きを行わなくてよいというものではなく、必要な手続が規定されています。それによりますと、SECに対しては予定している社債の発行がSECへの登録が免除されていることにつき通知を行い、SECから登録免除取引であることについて確認を得ることが求められ、また、購入者に対しては必要な情報を書面にて開示すること等が求められており、必要な情報としては、発行者の名称、所在地、事業の内容、役員、直近2年間の財務書類等が含まれます(IRR SRC Section 10.1.2.4.4)。
要件を充たすことなく社債を発行するなどの法令違反があった場合、法人及び役員に対する罰則が科される可能性があり、さらに、役員が外国人の場合は国外追放処分の可能性もありますので、ご注意ください。
結論
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本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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