
『フィリピンの労働不服申立制度(SEnA)』
今月の事例
<SEnAとは?>
日本でも労働者と雇用主との間に発生した個別労働関係紛争に関して、労働者側がその紛争の解決を求めるために用いることができるいくつかの手段(あっせんの申請など)が存在しますが、フィリピンではどのような制度になっているのかにつき、解説します。
設問の件では、従業員が会社に対する労働問題に関する不服の解決のため、NLRC(National Labor Relations Commission;中央労使関係委員会)に対して援助を求める申し立てが行われたものです。この手続はシングル・エントリー・アプローチ(Single Entry Approach; SEnA)と呼ばれるもので、2014年に創設された手続です。それまで個別労働関係紛争の解決手段としては、NLRCにおける強制的な仲裁手続のみが存在していましたが、紛争解決に至るまでかなりの時間を要していましたため利用者から不満の声が出ており、そこでこのSEnAが創設されました。この手続では申し立てから30日以内に結論を出すことを規定しており、この期間内の期日において担当官が双方から話を聞き、双方が納得できる条件で紛争を解決するよう、仲裁を行います。双方が納得して合意した場合はそれで一件落着となりますが、合意に至らなかった場合は担当官はその紛争を次の手続である強制的な仲裁手続に回します。その場合は、NLRCの労働仲裁官(Labor Arbiter)が紛争の内容を審査し、最終的には自ら決定を下します。
具体的なSEnAの手続ですが、まず労働者がNLRCに対して援助を求める申し立てを行い、NLRCが雇用主に対して、打ち合わせを行う旨の通知(Notice of Conference)を送ります。今回会社が受領した通知はこれであり、この通知には、申立人の名前、紛争の大まかな種類(紛争の具体的な内容については開示されません)ならびに出頭する場所および日時が記載されているに過ぎず、紛争の内容については出頭して初めて明らかになります。もっとも、会社は紛争の内容については想像できるとは思いますので、打ち合わせの場において労働者の不服申立に対して、会社の主張をあらかじめ準備して臨むことが必要です。指定された期日の都合が悪い場合は延期を求めることも可能ですが、出頭に応じなかった場合は手続が不調として強制的な仲裁手続に移行することになります。
なお、労働者の権利が強いと言われているフィリピンではありますが、会社が労働法に基づき、適法な措置を講じている場合は、SEnAやそれに続く強制的な仲裁手続においても会社の主張が認められることは十分にありますので、日頃から法律に則った処分を行うこと、また、後に紛争が起こることを想定して労働者の権利義務を書面化することなどが重要です。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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