
『勤務成績の悪い従業員を解雇できる?』
今月の事例
フィリピンは労働者の権利が強いとよく言われています。そのような中、雇用してみたら想定外に勤務成績が悪く、会社のためにならないといったような状況が生じている場合、会社はそれでも従業員を解雇することはできないかにつき検討します。
第1の場合として、雇用契約または就業規則(EmployeeManual)に解雇理由が定められており、その定められた事由に合致する場合は解雇も可能です。雇用主は業務上求められるパフォーマンスや基準を雇用契約や就業規則に定めることができ、これらを満たさない場合は従業員を解雇する場合があることを規定することができます。もし雇用主が従業員のパフォーマンスが不足していることを認識した場合、雇用主はそのような事実を評価し、その評価を書面に記録し、適切に保管することが必要です。その上で、そのようなパフォーマンスが不足している従業員に対して業務査定を行い、雇用主がそれを疑問視していることを認識させるとともに、合理的な期間内に改善するよう、指導を行います。そして、そのような機会を与えたにもかかわらず従業員のパフォーマンスが改善しない場合、再度雇用主はその従業員の業務評価を行い、解雇を決定することが可能となります。
第2の場合として、上記の雇用契約や就業規則に基づいた解雇に加えて、労働法に基づいて勤務成績の悪い従業員を解雇することができる場合もあります。フィリピン労働法は、正当な理由に基づく解雇(termination forjust cause)を可能とする規定を置いており、同条では重大かつ継続的な職務懈怠(Gross and habitual breach of duty)やこれに類似する原因(analogous causes)がある場合、雇用主は当該労働者を解雇ができると定めています。フィリピンにおいて、いわゆる重大な非効率性(gross inefficiency)や劣ったパフォーマンス(poor performance)は、上記の重大かつ継続的な職務懈怠に類するものであると認識されており、定められた業務基準を充たすことができない場合や合理的な業務量を充たすことができないといった場合は解雇を行う正当な理由があると判断することが可能な場合があります。もっとも、この場合も雇用主が従業員に求める仕事の基準については従業員に対して適切に示されている必要がありますし、従業員が継続的に劣ったパフォーマンスしか示さなかったことを証明する必要がありますので、そのような記録を書面に残しておくことが必要となります。
いずれの場合も、解雇は対象となった従業員からクレームを入れられる可能性が極めて高いですので、実際に解雇を検討する場合は、解雇が可能かどうかにつき、慎重に判断する必要があります。
なお、今回は平社員を想定してご説明しましたが、管理職の場合はその管理職の能力に期待して雇用したにもかかわらず、実際は能力不足であることが判明したことにより、同人に対する信頼が失われたこと(loss of trust and confidence)も正当理由に基づく解雇が労働法上可能となる場合があります。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
弊事務所は、下記のフィリピンの法律事務所と提携しており、フィリピン進出中の日本企業及び在留邦人の方々に日本語での法律面でのサポートを提供させていただいております。取扱業務:会社設立、企業法務、倒産、労務問題、税務問題、一般民事、相続等
Quasha, Ancheta, Pena & Nolasco
住所: Don Pablo Building 114 Amorsolo Street, 12290Makati City, MetroManila, Philippines
電話:02-8892-3011(代表)・02-8892-3020(日本語対応)・0917-851-2987
E-mail: [email protected]
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
(左) 弁護士 上村真一郎
(右) 弁護士 鳥養雅夫
(桃尾・松尾・難波法律事務所)
〒102-0083
東京都千代田区麹町4丁目1番地
麹町ダイヤモンドビル
電話:+81-3-3288-2080
FAX:+81-3-3288-2081
E-mail: [email protected]
E-mail: [email protected]
URL: http://www.mmn-law.gr.jp/




























