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フィリピンで弁護士になるには【フィリピンで役立つ! フィリピン法律あらかると 第一回】

皆様、はじめまして。 日本で弁護士をしております上村真一郎と申します。 これまでご縁をいただきましてフィリピンの弁護士と一緒にフィリピンの法律業務に携わる機会がありましたので、皆様方にフィリピンの法律や弁護士についてご紹介して、日々の生活や業務にお役立ていただきたいと思い、今月から法律に関する話題をお伝えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 第1回目の今回は、フィリピンの弁護士についての情報をお伝えしたいと思います。

フィリピンで弁護士になるには?


  まずは、どうやったらフィリピンで弁護士になれるのかについてお伝えします。フィリピンで弁護士になるには欠かせない条件が一つあります。それは、フィリピン人であることです。日本の場合はどの国籍であっても司法試験に合格さえすれば弁護士になることができますが、フィリピンでは、いかに英語(タガログ語)ができて司法試験に合格することができる力があるとしても、日本人含め外国人は弁護士になることはできません。そして、フィリピンで弁護士になるためには司法試験に合格することが必要になりますが、その受験資格が与えられるのは、21歳以上のフィリピンに住んでいるフィリピン人であって、善良な性格の持ち主であるという証明があり、4年間の大学の学位及び4年間のロースクールでの課程を完了しているといった条件を満たしている者であることとされています。

次にフィリピン人はどのようなプロセスを経て弁護士になるのでしょうか。日本の場合、現在では原則的にロースクールを卒業した者が司法試験を受験することができ、年1回、連続した4日間で試験が行われ、最初の3日間で公法系、民事系、刑事系および各自が選択した法律に関する論文形式での試験を行い、最終日に憲法、民法、刑法についての短答式の試験を行います。他方、フィリピンにおいては、毎年1回、原則的に10月の4回のすべての日曜日をかけて司法試験が行われます。毎日曜日の午前と午後に1科目につき4時間ずつ、合計8科目で32時間かけて論文式と短答式がミックスされた試験問題を解くことになります。最近は毎年5000人から6000人の出願者があり、1000人から2000人が合格します。合格した後は宣誓を行えば、日本でいう司法修習を行うことなく(なお、上位のロースクールではカリキュラムの一環として法律事務所等でのインターンシップが要求されています)、弁護士として登録することが可能となります。なお、近年においては、男性よりも女性の出願者及び合格者が多いという現象が続いています(日本ではまだ男性の合格者の方が多いですが、徐々に女性の合格者の割合が増えています。)。

 

司法試験合格者の就職事情

それでは、司法試験に合格した人たちはどのようにして就職先を見つけるのでしょうか。フィリピンでは、弁護士は政府機関や法律事務所、一般企業などに就職するケースが多いですが、それまでの学業の成績や職務経験、個人的なバックグランドなどを基に就職先から選考されます。なお、マニラの上位の法律事務所は、たいていの場合、UP(フィリピン大学)、Ateneo Law School、San Beda College、University of Santo Tomas出身の弁護士を採用しており、ビサヤ諸島やミンダナオ島の上位の法律事務所は、University of San Carlos、Ateneo de Davao出身の弁護士を採用しています。もし、知り合いの弁護士がこれらの学校の出身であれば、優秀な弁護士である確率が高いということが言えます。また、新人弁護士の毎月の給料は、マニラの平均で3万から3万5000ペソほどではないかと言われています。 なお、フィリピンにおいては司法試験に合格したらすぐに裁判官や検察官になれるものではなく、たとえば、下級裁判所の裁判官や検察官であれば、年齢30歳以上かつ弁護士経験が5年以上あること等が求められています。

 

フィリピンの法律事務所事情

現在、フィリピン国内に存在する弁護士の数は約5万2000名ほどであり、フィリピンではマニラに政治や経済の拠点が集中していることから、弁護士の4割強の約2万3000人がメトロマニラで業務を行っているとともに、千以上の法律事務所がメトロマニラに存在します(それ以外の都市では数百の法律事務所が存在すると思われます)。そして、フィリピンにおいて所属人数の多い事務所を挙げていきますと、Sycip, Salazar, Hernandez & Gatmaitan法律事務所の約150名を筆頭に、図表の法律事務所が続いています(注:法律事務所の名前が長いのは、一般的に法律事務所を設立したときの共同経営者の名前をすべて挙げるためです。)。

 

事務所名 所属人数(概数)
Syrip, Salazar, Herlnandez & Gatmaitan 150
Angara, Abello, Concepcion, Regala & Cruz 100
Romulo, Mabanta, Buenaventura, Sayoc & de los Angeles 100
Siguion Reyna, Montecillo & Ongsiako 50
Quisumbing Torres 50
Quasha, Ancheta, Peña& Nolasco 30

 

いいローカル弁護士の選び方

このように多数の弁護士がマニラには存在するのですが、では、その中からどうやっていい弁護士を見つければいいのでしょうか。私のところには、依頼した仕事がなかなか進まない、報告があまりない、連絡するように頼んだのに何日も返答がこない等々のフィリピンの弁護士に対するクレームが寄せられています。

    まず覚えておいていただきたいことは、多くのフィリピン人弁護士は時間に正確ではないということです。従って、日本人弁護士と同じように、迅速かつ密な報告や連絡をすべてのフィリピン人弁護士に期待することは残念ながらまだ難しいといえるでしょう。ですから、これまでに日本人相手に仕事をしたことがあり、日本人の要求を理解してそれに応えられる弁護士である方が、このようなコミュニケーション上のストレスを感じることは少ないかもしれません。

    では、そのような弁護士にすべて任せてしまっていいかと言いますと、これもまた問題があります。というのも、弁護士は法律に関する全般的な知識は持っているものの、たいていの場合特定の分野の専門家であることが多く、得意分野と不得意分野があるからです。整形外科のお医者さんにおながが痛いと言って診察してもらっても適切な診療が受けられないのと同じことです。頼みたい仕事が得意な弁護士に相談することが必要ですから、必ず、その弁護士がどういう仕事をこれまでやっており、どういう分野が得意なのかをまずは聞くことが必要です(何でもできます、という弁護士は注意です!何でもできないことが多いです。)。その点では、幅広い分野の専門家を有している、著名な法律事務所に依頼することが好ましいといえそうです。もし、信頼できる弁護士がすでにいらっしゃる場合にはまずはその弁護士にこれこれの分野が得意な弁護士を紹介してくれるように頼みましょう。なぜなら、弁護士は他の弁護士の仕事ぶりをよく見ていますので、その弁護士の力量を知っていますし、変な弁護士を紹介することは自分への信頼にも影響しますから、必ず適切な弁護士を紹介するからです。

    そして、弁護士を新たに起用する前に、料金体系はどのようになっているのかをしっかり確認しましょう。日本人的には実際に依頼してからはなかなか聞きにくく感じることもあると思いますので、依頼する前に確認することが重要です。

次回からは、フィリピンの法律についてお話ししていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。なお、本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。

►インタビュー全文はPrimer WEB(http://primer.ph)に掲載しています

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。



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弊事務所は、下記のフィリピンの法律事務所と提携しており、フィリピン進出中の日本企業及び在留邦人の方々に日本語での法律面でのサポートを提供させていただいております。取扱業務:会社設立、企業法務、倒産、労務問題、税務問題、一般民事、相続等


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(左) 弁護士 上村真一郎
(右) 弁護士 鳥養雅夫
(桃尾・松尾・難波法律事務所)
〒102-0083
東京都千代田区麹町4丁目1番地
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