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フィリピン人を解雇する場合の注意点パート2【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第七回】

『フィリピン人を解雇する場合の注意点』

  前回はフィリピン人を試用期間付きで雇用する場合の注意点についてお話させていただきました(前回のフィリピンあらかると に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。今回は実際に雇用したあとに解雇する場合の注意点についてお話しさせていただきます。

 

1. フィリピン人の解雇に関する注意点

前回も申し上げましたように、フィリピンにおいても一度正社員として雇用しますと、なかなか解雇することが難しいです。そのため、フィリピン人を雇用するに当たっては、試用期間付きで契約し、正社員とするにそぐわないと思われる労働者は試用期間満了前に契約を終了させるという実務が一般的です。しかしながら、例えば、正社員となったあとに突如勤務態度が悪化したり、または会社の業績の悪化等により、正社員として雇用したあとにその社員を解雇しなくてはならないケースも出てきます。もちろん、解雇は労働者にとっても収入の途が途絶えることを意味するものですから、解雇は労働者と雇用主が争う可能性が最も高いポイントになります。そこで、なるべく争わないで解雇するにはどのようにすればよいのか、そもそもどのような場合に解雇が許されるのかについてお話いたします。

 

2. 正当な事由がある場合の解雇

  フィリピンの労働法288条(旧282条)は労働者側に責めがあるために、雇用主が労働者を解雇できる場合について規定しています。同条が定める解雇事由は以下のとおりです。

①著しい非行または雇用主の合法な命令に故意に従わなかった場合
②著しいまたは常習的な職務懈怠
③詐欺または雇用主からの信頼を故意に裏切った場合
④雇用主等に対して犯罪または民事上の攻撃を行った場合
⑤上記に類する行為があった場合

就業規則で解雇事由が定められている場合の解雇も上記①や⑤に当たるものとして上記の事由が発生した場合であったとしても、雇用主は直ちに労働者を解雇できるものではなく、以下に定める適切な手続を取る必要があります。

①解雇理由を明らかにした上で、労働者に最低5日以上の猶予を与えて弁明をする機会を与える旨の書面による通知を行うこと
②労働者が希望する場合には代理人の同席を認めた上で、解雇事由としてあげられた事由についての反論、反対の証拠等の提出を行うヒアリング手続きを行うこと
③すべての事情を考慮した上でも解雇が相当と認めるときには、解雇する旨の書面による通知を行うこと(いわゆる二重の通知)

なお、288条に基づく解雇の場合、雇用主は労働者に対して退職金等の支払いを行う必要はありません。

 

  3.取締役等の連帯責任承諾書

取締役及び役員による、労働者に対して認められた請求及び損害賠償につき、会社と連帯して責任を負担することを認める承諾書の提出が求められます。

 

整理解雇

上記に加え、フィリピンの労働法289条(旧283条)は以下に掲げる事情がある場合には労働者を整理解雇することを認めています。

① 労働力削減のための設備の導入
② 余剰人員の発生
③ 事業上の損失防止のための人員整理
④ 事業の停止

上記の事由に基づく解雇の場合には、先ほどの労働者に原因がある場合の解雇に比べてさらに適切な手続きを取ることが必要であることは明らかですが、では、どのような手続きを取る必要があるのかについてお話ししたいと思います。
①解雇対象となる労働者及び労働雇用省に対する書面による通知
これらの通知には解雇を行う理由を明示する必要があるとともに、解雇予定日の30日前までに通知が行われる必要があります。
②退職金の支払い
解雇の理由が上記①または②である場合、雇用主は労働者に対して最低1ヶ月分の賃金または1ヶ月分の賃金に勤続年数を乗じた金額のいずれか高い方を支払わなくてはなりません。
解雇の理由が上記③または④である場合、雇用主は労働者に対して最低1ヶ月分の賃金または1ヶ月分の賃金の2分の1に勤続年数を乗じた金額のいずれか高い方を支払わなくてはなりません。 いずれの場合においても、6ヶ月以上勤務している場合には、1年勤務したものとして計算します(例えば、1年7ヶ月勤務している場合には、2年間勤務したものとして計算します)。

 

解雇に関する紛争を防止する方法

冒頭でも触れましたが、解雇された労働者は定期的な収入を失うことになるため、解雇を争う可能性も決して少なくありません。従って、解雇を行う会社側としては、なるべく争いにならないように、また、争いになったとしてもしっかりと解雇の正当性を主張できるような準備をしておく必要があります。そこで、そのためにはどのような方法が考えられるのかについて説明します。

①解雇手続きの遵守
先ほど述べましたような解雇手続きを遵守することがまずは必要です。例えば、288条に基づく解雇の場合で、いわゆる二重の通知を行わないと、仮に法律に定める解雇事由があったとしても、争われた場合には負けると考えてよいでしょう。289条に基づく場合でも通知から30日を経過しない日を解雇美とする解雇は無効であると判断されます。

②請求権の放棄に関する文書の取り付け
労働者を解雇するに際して、労働者から会社に対する請求を行わない旨の書面を取り付けることが望ましいでしょう。この方法は整理解雇の場合、このような書面と引き替えに退職金を支払うこととすれば、取り付けやすいと思います。282条に基づく解雇の場合には退職金の支給がありませんので、なかなか難しいかも知れませんが、できる限りこの書面を取り付けることが望ましいでしょう。

③自主退職の場合の書面
このほか、労働者が自主的に退職する場合であっても、労働者が自主的に退職を申し出ることを内容とする書面の提出を受けることが、後に退職を強制されたなどの主張を防ぐためには望ましいでしょう。なお、書面中に雇用主に対する感謝の言葉などが入っていれば、友好的に労働契約が終了したことを証明することになりますので、さらに有効です。

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。

 



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フィリピン法律あらかると 前回のコラム

『フィリピン人を試用期間付で雇用する場合の注意点』
今回は具体的にフィリピンにおいて労働問題となりやすい、フィリピン人の雇用についてお話しさせていただきます。

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