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フィリピン人との結婚と離婚について【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第十一回】

『フィリピン人との結婚と離婚』

  前回はフィリピンでのプレビルド不動産の購入手続についてお話させていただきました(前回のフィリピンあらかると に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。今回は日本人とフィリピン人の結婚と離婚についてお話しさせていただきます。特に多いと思われるフィリピン在住の日本人男性とフィリピン人女性の結婚と離婚を念頭においてお話しいたします。

 

結婚のための手続

フィリピン在住の日本人がフィリピン人女性と結婚するためには、以下の手続を取ることが必要となります。

① 大使館等にて婚姻要件具備証明書の入手

② 婚姻許可証(Marriage License) の入手

③ 挙式の実施及び婚姻証明書

( Marriage Certificate)の入手

④ 婚姻届の提出

婚姻成立後、3ヶ月以内に日本の市区町村役場又はフィリピンの大使館若しくは総領事館に婚姻の届出を行います。ちなみに、③でフィリピンにおいて婚姻が成立した後に日本人の夫が亡くなったり、気が変わって婚姻の届出を行わなかったとしても、婚姻自体は成立していますので、フィリピン人の配偶者は自ら大使館又は総領事館に対して婚姻の届出を行うことができます。

在フィリピン日本国大使館HPもご参照ください。
http://www.ph.emb-japan.go.jp/visiting/consular_j/consular_update/marriage_info.pdf

 

離婚のための手続

日本では離婚が認められていますが、フィリピンでは離婚が認められていません。そこで、フィリピンに住んでいる日本人夫とフィリピン妻の離婚は認められるのか、認められるとしてどのような手続が必要かについてお話ししたいと思います。

まずは日本の場合ですが、夫婦が離婚に合意している場合は離婚が成立しますし(協議離婚)、いずれか一方が離婚に合意していなかったとしても、一方の請求により調停や裁判が提起され、裁判所において合意がなされるか、裁判所が判決で認める場合には離婚が成立します(裁判上の離婚)。

これに対し、フィリピンでは離婚は認められていませんが、婚姻無効の判決を裁判所から得ることにより、もともと婚姻自体が成立していなかったという論法で離婚と同じ結果を得ることが可能であり、そのほか、外国で離婚の判決が出た場合にはこれを承認することにより離婚を認める場合があります。

(1) 双方が離婚したい場合

双方が合意している場合には日本法に基づき離婚をすることができます。日本に在住している場合には市役所等に離婚届を提出しますが、フィリピンに在住している場合、大使館は離婚届の受理権限がありません。そこで、日本人夫の本籍地の役場に直接離婚届を届けるか、日本に常居所がある場合はその地の役場に郵送して届け出ることが必要です。

離婚届を提出することで、日本人夫とフィリピン人妻との間では日本法上は離婚が成立しますので、日本人夫は再婚することが可能です。他方、フィリピン人妻は離婚自体がフィリピン法では認められませんので、既婚の状態が続いており、このままでは再婚することはできません。フィリピン人妻が再婚するためには、婚姻が無効であったと裁判で決定される必要があります。実務上婚姻の無効原因としては、結婚に伴う不可欠な義務を履行するにあたって心理的に無能力であった(フィリピン家族法36条)という理由がよく使われています。具体的な手続としては、フィリピン人妻が家庭裁判所に対して婚姻無効の裁判を申し立てます。裁判の継続中に検察官は実際にそのような婚姻無効理由があったかどうかを調査し、その結果を裁判所に報告し、裁判所が婚姻無効理由があったと認定した場合には婚姻無効が認められます。フィリピン人妻はいかに日本人夫がひどい人間であり、心理的に婚姻生活を継続する能力がなかったことを訴え、それが報告書に記載されます。他方、日本人夫に対しても調査を行う手続が取られますが、調査に協力しない場合が多々あります。そうなりますと、フィリピン人妻の主張のみによった報告書が出来上がりますので、こんなにひどい日本人夫との婚姻は無効であるとの判決が出、婚姻の無効が認められる場合があるということになります。

(2) 日本人夫が離婚したい場合

この場合、フィリピンでフィリピン法に基づいて上記の婚姻無効の裁判を求める方法も考えられますが、一般的には日本の裁判所で離婚を求める調停を起こし、裁判で離婚が認められた場合には離婚が成立します。

離婚が成立した場合、フィリピン人妻はフィリピンの家庭裁判所に対して外国の離婚判決の承認を求める訴えを提起し、裁判所がこれを認めることにより日本人との婚姻が解消され、再婚することが可能となります。

(3) フィリピン人妻が離婚したい場合

この場合も、フィリピンでフィリピン法に基づいて婚姻無効の裁判を求める方法が考えられるほか、日本で日本法に基づいて離婚を求める調停を起こすという方法があります。しかし、(2)とは異なり、仮に日本で離婚を認める判決が出たとしても、フィリピン人が原告として提起した裁判の判決の効力をフィリピンの裁判所が認めることはありません。よって、フィリピン人が離婚したい場合には、フィリピン法に基づいて婚姻無効の裁判を求めるよりほかありません。なお、婚姻無効の判決が出た場合、離婚届を提出するのではなく、判決の謄本などを添付して戸籍訂正申請を行うことになります。

 

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。

 



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弊事務所は、下記のフィリピンの法律事務所と提携しており、フィリピン進出中の日本企業及び在留邦人の方々に日本語での法律面でのサポートを提供させていただいております。取扱業務:会社設立、企業法務、倒産、労務問題、税務問題、一般民事、相続等


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