2020年4月30日
4月25日付けフィリピン政府通信社オンラインニュースによると、フィリピン政府は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の治療の可能性がある日本の抗ウイルス薬「アビガン(一般名:ファビピラビル)」のCOVID-19感染症治療の臨床試験に関して、日本政府と連携するための初期的交渉段階に入ったとのことである。
フィリピン政府は「アビガン」投与だけでなく、他の医薬品や回復期血漿療法の臨床試験も開始しつつあるが、ドゥテルテ大統領やフィリピン保健省(DOH)のフランシスコ・デュケ長官などが、「アビガン」の治療効果に大いに注目している。フィリピン政府通信社も「アビガン」関連のニュースを何度も掲載している。ドゥテルテ大統領は、4月14日開催のCOVID-19に関するASEAN+3(日中韓)特別首脳テレビ会議においても「COVID-19疾患の治療の可能性がある日本の抗ウイルス薬であるアビガンのCOVID-19治療の臨床試験を開始、他の国々と協力する用意がある。フィリピンは、アビガンなどの潜在的な医薬品やワクチンの臨床試験や医学研究に参加する準備ができている」とも発言している。
なお、富士フイルムは、4月15日、富士フイルム富山化学にて、COVID-19向けに抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」の生産体制を拡大し、増産を開始したと発表している。「アビガン」は、既に国内では抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得している薬剤で、ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを有している。このようなメカニズムの特徴から、インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスであるCOVID-19に対しても効果が期待されており、既に臨床研究や観察研究の枠組みの中でCOVID-19患者に対する「アビガン」投与が開始されている。
日本政府は、COVID-19がますます拡大する中、緊急経済対策の1つとして「アビガン」の備蓄量を200万人分まで拡大することを決定した。「アビガン」は富士フイルム富山化学が開発し、2014年3月に新型又は再興型インフルエンザウイルスを適応症として国内で製造販売承認を取得した抗インフルエンザウイルス薬である。既に日本政府は、新型インフルエンザに備えて「アビガン」を備蓄している。
今回、富士フイルムは、グループ会社である富士フイルム和光純薬にて医薬品中間体の生産設備を増強するとともに、原料メーカーや各生産工程における協力会社など国内外の企業との連携により「アビガン」の増産を推進。今後、段階的に生産能力を向上させて、本年7月には約10万人分/月(生産を開始した3月上旬と比べて約2.5倍)、同9月には約30万人分/月(同約7倍)の生産を実現していく。さらに、「アビガン」の原薬製造設備も増強して生産能力のさらなる拡大を図り、日本政府の備蓄増や海外からの提供要請に対応していく。