2020年5月22日
フィリピン航空(PAL)の持株会社であるPALホールディングス(PALHD)が、5月20日、2019年(1月~12月)の年次報告書を開示した。
それによると、PALHDの2019年の営業収入は前年比(以下同様)2.7%増の1,545億ペソに達した。増収は、主に運航便数の増加や新航路就航に伴う旅客数増加によるものである。旅客収入は4.2%増の1,343億ペソと堅調だった。しかし、航空貨物収入は8.2%減少、付帯事業収入は5%減少した。一方、総営業費用は3.1%減の1,516億ペソにとどまったが、航空機取得などに伴う金融費用が2.3倍へ大幅増加したことなどで、その他費用が9.2倍の141億ペソへと急増した。
これらの結果、包括的純損失は3.6倍の101億9,894万ペソへ、帰属損失は2.4倍の103億1,090万ペソへと悪化した。1株当たり純損失(完全希薄化ベース)も3.1倍の0.9685ペソへと悪化した。なお、ANAホールディングス(ANA)は、2019年2月28日、PALHD発行済株式総数の9.5%を9,500万米ドル(約105億円相当)で取得した。
一方、格安航空(LCC)最大手であるセブ航空(CEB、ブランド名:セブ・パシフィック航空)は、既に3月30日に2019年年次報告書を公表している。CEBの総収入は前年比(以下同様)14.4%増の848億0,700万ペソとなった。そのうち旅客収入は13.7%増の616億8,200万ペソ。旅客数が10.8%増、平均運賃が2.6%増と前年から増えたことによる。営業利益は79.0%増の126億2,100万ペソ、帰属純利益は132.6%(2.3倍)増の91億2,295万ペソと大幅な増益になった。
このように、2019年決算においてPALHDとCEBは明暗を分けた。もっとも、CEBですら2020年は新型コロナ感染拡大やその対策としての地域閉鎖措置の影響を大きく受けそうである。CEBは、既に4月29日、2020年第1四半期(1月~3月)の事業報告書を発表した。
それによると、CEBの今第1四半期の収入は前年同期比(以下同様)24.9%減の159億ペソへと二桁減少となった。新型コロナウイルス感染拡大にともなう旅行需要の減退、中国や韓国線運休、さらには、3月央からの全便運休が響いた。旅客収入は27.4%減の114億ペソにとどまった。乗客数が16.5%減の440万人へと減少したうえ、平均運賃も13%減の2,580ペソへと低下した。
運航便数の減少、燃料費値下がり、ペソ高効果などにより営業費用も4.2%減の166億ペソへと減少したが、その減少率は、減収率24.9%を大幅に下回った。その結果、営業損益は7億ペソの赤字となり、前年同期の38億ペソの黒字から悪化した。更に、金利収入が48.1%減少したうえ、4億ペソのヘッジ損失発生(前年同期は10億ペソのヘッジ益)、1億8,000万ペソの航空機売却損失も発生したことなどから、最終損益は11億8,300万ペソの赤字となり、前年同期の33億5,600万ペソから急悪化した。
4月は完全に全面運休、5月もほぼ同様な状況が続いている。第2四半期(4月~6月)は更に厳しくなりそうである。