2023年4月20日
12社の半数が減益か赤字、収入サンミゲル断トツ、利益首位SM
フィリピン証券取引所(PSE)上場の財閥系複合企業の2022年(1月~12月)の年次報告書発表がほぼ出揃った。ユーチェンコ財閥系のハウス オブ インベストメント(証券コード:HI)が提出期限延長申請中で、4月18時点で未提出となっている。
ハウス オブ インベストメントを除く財閥系複合12社に関しては、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大やそれに伴う地域隔離措置再強化の影響を大きく受けた2020年、2021年からは回復傾向にあるが、業種構成、子会社組み入れ状況などによって回復ピッチに差がある(個別動向は既報のレポートにて)。また、総じて大幅増収であったが、コスト増などで損益は伸び悩み、あるいは悪化という企業もあった。複合企業の場合、事業が多岐にわたり決算が複雑なものとなること、総純損益と帰属純損益が大きく異なるケースがあることなどから実体がわかりにくいケースがあるが、2022年の報告ベースの収益は上表のとおりである。
2022年の収入に関しては、サンミゲルが前年比(以下同様)60%増の1兆5,066億ペソと断トツ、2位のSMインベストメンツ(SM)の5,538億ペソを大きく引き離している。サンミゲルは売上規模の大きい石油販売や電力事業を有していることもあって、唯一の1兆ペソ越え企業となっている。損益に関しては、SMインベツトメンツが総純利益843億ペソ、帰属純利益617億ペソでともに断トツとなっている。名門のアヤラコーポレーションは、総純利益459億ペソ、帰属純利益274億ペソでともに第3位であった。
増益率トップは建設の老舗コンスンヒ財閥傘下のDMCIホールディングス(DMC)。総純利益は89%増、帰属純利益は69%増の311億ペソで過去最高益を更新、12社中第2位へと躍進した。これは、鉱業・電力子会社セミララ マイニング&パワー(証券コード:SCC)の石炭事業が市況高騰や出荷量拡大で極めて好調であったことによる。SCCの帰属純利益は2.5倍の399億ペソへと急増した。
帰属純損益ベースでの増益企業は6社、減益は5社、赤字転落1社であり、増益は半数にとどまった。収入断トツのサンミゲルの総純利益は44%減の268億ペソ、帰属純損益については、130億ペソの赤字で前年の139億ペソの黒字から悪化している。サンミゲルは、企業再生・企業向け税制優遇法(CREATE法)の法人所得税への影響や外為差損益を除外したコア純利益は8%減の432億ペソと発表している。すなわち、実質8%減益であったとのことである。アヤラコーポレーションの帰属純利益も1%減の274億ペソにとどまったが、一時損益を除いたコア純利益は18%増の277億ペソと発表している。