2023年8月15日
株価大幅下落、収入首位アヤラランド、利益はSMプライム断トツ
フィリピン証券取引所(PSE)上場の不動産企業の2023年上半期(1月~6月)事業報告書が出揃った。それによると、新型コロナウイルス対策規制の大幅緩和や経済再開本格などにより、商業施設やオフィスの入居率が上昇、住宅事業も堅調、総じて回復ピッチが高まった。集計13社中、12社が増益(帰属純損益ベース、以下同様)、そのうち9社が二桁増益であった。
ただし、主力事業、プロジェクトの立地、保有物件などによって回復ピッチに差がある。また、COVID-19パンデミック直前の2019年との比較では減益という企業もある。特に、最大手(収入規模)のアヤラランド(証券コード:ALI)の帰属純利益は114億ペソで、新型コロナパンデミック前の2019年上半期の152億ペソを約25%下回っている。また、2022年来の急ピッチの金利上昇が回復ピッチを鈍らせているという要素もあり、他業種に比べると収益拡大ピッチは緩慢ともいえる。
<収入首位アヤラランド、利益首位はSMプライム>
アヤラランドの総収入は前年同期比(以下同様)26%増の660億ペソ、帰属純利益は41%増の114億ペソであった。一方、アヤラランドと首位を争う総合不動産企業であり最大のショッピングモール開発企業であるSMプライム ホールディングス(証券コード:SMPH)の収入は29%増の608億ペソ、帰属純利益は38%増の194億ペソであった。すなわち、アヤラランドは収入では辛うじて首位を維持したが、帰属純利益ではSMPHの約60%の水準にとどまっている。なお、SMPHの帰属純利益194億ペソは、2019年上半期の193億ペソを僅かながら上回るに至った。
外出・移動制限大幅緩和などで、SMPHの国内ショッピングモール賃貸収入は国内のモール賃貸収入が42%増の263億ペソ、アヤラランドは49%増の102億ペソなど総じて大幅増収であった。
なお、アヤラランドの2022年の年間帰属純利益はSMPHの約62%であった。アヤラランドは不動産投資信託(REIT)創設、SMPHは未創設(2023年下半期にREIT創設予定)ということを考慮する必要もあろうが、帰属純利益ではアヤラランドがSMPH大きく下回っている。
<増益率ではビスタランド83%が首位>
上半期の帰属増益率では、マニュエル・ビリャール元上院議員傘下のビスタランド&ライフスケープス(ビスタランド、証券コード:VLL)の83%が首位であった。次いで、クオック・グループのフィリピン拠点でありフィリピンでのシャングリラ事業などを推進しているシャン プロパティーズ(証券コード:SHNG)の59%、アヤラランドの41%、SMプライムの38%と続く。
<不動産各社の株価下落続く>
業績回復ピッチが相対的に緩慢なこと、金利上昇が業績回復の妨げになるとの懸念、中国の不動産業界の高水準の債務問題などを背景に、不動産各社の株価は総じて軟調に推移している。PSEにおける不動産株指数は2020年に11.80%下落(PSE指数は8.64%下落)、2021年は12.14%下落(PSE指数は0.24%下落)、2022年は9.04%下落(PSE指数は7.81%下落)、3年連続で大幅下落。2023年上半期も10.95%下落(PSE指数は1.50%下落)している。金利敏感セクターの代表格として売られている要素もある。