2021年11月19日
フィリピン証券取引所(PSE)上場の不動産企業の2021年9カ月間(1月~9月)の事業報告書提出がほぼ出揃った。主要不動産企業12社の収益・資産動向は下表のとおりである。主要企業の1社であるフィルインベストランド(証券コード:FLI)は、11月12日に9カ月間事業報告書提出期限猶予申請を行い、11月18日時点で未提出につき集計対象から除外している。
<2年前比では総じて大幅減収減益>
2021年9カ月間の不動産業界は、非常に不振であった前年上半期との比較では回復傾向を見せ、12社中10社が増益となった。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)感染再拡大やデルタ変異株の出現、その対策としての断続的な地域隔離措置厳格化など収益抑制要因も依然多く、回復ピッチは総じて緩慢なものであった。ショッピングモールの業務制限、ソーシャルディスタンス措置による営業活動の妨げ、外国人投資家のフィリピン入国制限などが響き、収入や利益額は、新型コロナウイルスパニック前の2019年9カ月間と比較すると総じて低水準である。
<収入首位アヤラランド、利益首位はSMプライム>
フィリピン最大級の不動産企業であるアヤラランド(証券コード:ALI)の2021年9カ月間の収入は前年同期比(以下同様)14.7%増の726億ペソ、帰属純利益は34.9%増の86億ペソであったが、COVID-19パンデミック発生直前の2019年9カ月間の収入1,217億ペソ、帰属純利益232億ペソには遠く及ばない。
アヤラランドと首位を争う総合不動産企業であり最大のショッピングモール開発企業であるSMプライム ホールディングス(証券コード:SMPH)の今9カ月間の収入575億ペソ、帰属純利益156億ペソも、2年前の収入850億ペソ、帰属純利益276億ペソを大きく下回っている。
<モール事業不振、低価格住宅堅調>
ショッピングモールの営業制限やオンライン取引志向の高まりで、SMプライムの国内モール事業収入は14%減の158億ペソ、アヤラランドのモール賃貸収入は35%減の49億ペソと不振であった。一方、手頃な価格の住宅需要は堅調であり、低価格の住宅分譲企業8990ホールディングス(証券コード:8990)の収入は58%増、帰属純利益は63%増の54億ペソと好調、2年前の帰属純利益42億ペソを29%上回った。
センチュリー プロパティーズ グループ(証券コード:CPG)が三菱商事と展開する低価格住宅分譲事業の収入や予約販売額も大幅増加、CPG収入の45%を占めるに至った。
<不動産各社の株価も下落続く>
業績回復ピッチが緩慢なことを背景に不動産各社の株価は総じて軟調に推移している。表2のように、PSEにおける不動産株指数は2020年に11.80%下落(PSE指数は8.64%下落)、2021年9カ月間では17.47%下落(PSE指数は2.62%下落)。
すなわち、2020年以降の不動産セクター指数の下落率は、相場全体の下落率を大幅に上回っている。ただし、2019年まで、不動産セクターは相場上昇のけん引役となっており、その反動という要素もある。また、米国の量的緩和縮小開始や利上げ時期前倒し懸念により、金利敏感株の代表である不動産株の下落率が大きくなっている。