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【フィリピン医療事情】現場で活躍する日本人へのインタビュー
2022年04月22日更新

フィリピンと日本とでは、医療システムが異なる部分が多く、特に初めての人にとってみては、戸惑うこともあるのではないでしょうか。そこで今回は、現場で活躍する医療関係者の皆さんにインタビューを実施!フィリピンの医療事情をお伝えします。

東京ヘルスリンク:岡田由香さん(日本人アカウントマネージャー)

 

2004年からここフィリピン・マニラでクリニックを運営されている東京ヘルスリンクの岡田さんに、フィリピン医療の変遷などを伺いました。

 

Q. フィリピンで医療機関を運営されようと思われたきっかけを教えてください。

 

かれこれ30年ほど前の話になりますが、当時クリニックを設立した父は医療機器の販売に携わっていました。遠くはミンダナオまで営業に行くこともあり、医師の方々に出会ったことが、フィリピンのクリニックを開くきっかけになりました。

 

医療機器導入の際には運用などに関するトレーニングが不可欠です。医療機器を医院に導入してもらうには、まずは展示場が必要です。そこで展示場とトレーニング場を一緒にした場を作ることにしたのですが、かなりの設備投資になることもあり、更に一石三鳥を狙ってクリニックを設立したのが、東京ヘルスリンクです。

 

会社設立は2003年8月、当時は日本人向けのクリニックではなく、日本の方が来てくれたらありがたいというくらいでした。

大型病院並みの設備を誇る東京ヘルスリンク

 

Q. 当時と今の医療事情の変遷を教えてください。

一般の住民は金銭的な理由ですぐに民間の病院に行けない状態で、ほとんどの人は公立病院を利用していました。当時一番大きかった国立のPGH(Philippine General Hospital)の院内を見ましたが、入院患者は廊下にベッドを並べている状態で、医療機械はドネーションされたものを使っていたようです。公立、民間の病院でも医療機器ほとんど揃っていない状態でした。

 

医療機器の販売について、当時はフィリピン国内の治安もまだ悪く、営業に出向くのも困難でした。ビジネスが軌道にのったのは1996年以降、ラモス政権の後くらいだったと思います。2000年頃から民間病院が徐々に増え、医療機器に関しても設備投資で導入が進んでいきました。CTスキャンなどの大型機械は2000年問題を抱えて、対応に苦慮したのを覚えています。

 

フィリピンの医療事情は日進月歩、徐々に進歩しています。今ではマカティメディカル、セントルークスのように民間の医療機器を充分整備した総合病院もありますし、民間のすぐれたクリニックも多く設立されています。

 

Q. 日本人が医療機関を利用するときのために、アドバイスをいただけますか?

日本人の先生がいらっしゃるかで、大きく変わってくると思います。日本人の先生は患者さんへ日本語で細かく症状、治療内容などを説明してくれるので、日本人の患者様にとっては非常に安心できますね。通訳を介するのと、ダイレクトとでは全然違ってきます。実際に当院の患者様も、質問を直接ドクターに回答していただけるのが一番ありがたいとおっしゃっています。

 

当クリニックも、病気でお困りの方のお手伝いができればと考えております。今は日本人のドクターも在籍しており、患者様からも好評をいただいております。この4月には日本人の方向けの専用待合室も設置することになっています。重篤な場合はアジアンホスピタル、セントルークスに籍を置いているドクターも在籍していますので、連携することが可能です。

 

医療ですので宣伝をするようなものでもないのですが、どこか頭の片隅で、東京ヘルスリンクに行けば設備も日本人の先生もいるということを覚えていただけると、私どもも大変うれしく思います。

 

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神戸クリニック:山本先生(医師)

アラバンで神戸クリニックを経営する山本先生は、フィリピンで数少ない医師資格もつ日本人医師。YouTubeチャンネル「行列の出来る日本人医師医療相談所inフィリピン」も大好評。

 

Q. フィリピンで医師になろうとされたきっかけはなんですか?

祖父が医者だったことも影響していますが、当時日本で起きていた医学ブームの影響が最も大きいですね。フィリピンの場合、外国人は医師の国家試験に合格すれば証明書を受領することはできますが、医師免許は下りません。ですから私の場合も合格しても医者として治療に携わることはできず、当初はまた大学に行って病院経営学を学んだりしていましたね。

 

Q. フィリピンと日本の医療現場は、どのような相違点がありますか?また、どんな疾患が多いのでしょうか。

フィリピンの病院は両極端ですね。高度な医院は高度、ひどいところはひどいというのが印象です。最新の設備を完備しているセントルークスなどは素晴らしいと思いますね。ある患者さんはローカル病院に診察に行った際に、あれこれたくさんの検査を受けたが必要なのか、疑問だと話していました。

 

少し前までは、まだ検査機器も少なく問診と簡単な検査で終わっていたものが、今は最新の設備を導入したことで、逆にそれに頼りがちな面もあるかもしれませんね。

 

また、日本人の場合、自分の症状を英語で的確に説明するのは容易ではありません。ですから、検査で確かめるしかないという面もあるかと思います。本来は問診をして既往症を辿れば大体疾患の状況が見えてくるものです。

 

 

Q. 日本人がフィリピンの医療を受ける際に気を付けるべき点を教えてください。

 

まず病院の窓口である受付の態度を見るのがおすすめです。そっけなく対応してくれるか、親切に対応してくれるか。そして次はファーストラインにいる看護師です。体温を正確に測るなど基本的なことができているのかを確認してみましょう。あと言葉の問題ですね。やはり多くの日本人が日本語で症状を説明できた方が的確に伝わりやすいと思いますね。日系の医師のいるクリニックなどは、やはり日本人にとってはおさえておきたいですね。

 

Q. フィリピンで暮らしていて気を付けた方がいいことを教えてください。

私がよく患者さんに言っていることですが、飲料水には注意が必要です。注意しているつもりでも、たまにアメーバにかかってくる患者さんがいらっしゃいます。水は精製水だけを飲むようにし、レストランでは念のため飲まないようにするのも手です。

 

アメーバにかかると腹痛や下痢が続いてしまいます。あとは生もの、賞味期限切れの食材にも注意です。最近、和食関係の飲食店も増えていますが、中には和食系の食材を扱う知識のない人が調理しているレストランなどもあるようです。そんな時は注意が必要ですね。

 

住居の面でいえば、アレルギー体質の人は気温の変化などで、花粉症と似た症状を出す人はいます。日本人の方の場合は、コンドに住んでいらっしゃる方も多いと思いますが、エアコンのメンテナンスを怠っているケースが多いと思います。フィルターのメンテナンスを業者に頼んでみたら、症状が直ったという方もいらっしゃいます。使用頻度に寄りますが、半年に1回はエアコンの掃除をした方がよいと思います。

 

あと、邦人の場合、すぐに相談できる医師の知り合いを作っておくのは重要です。以前、日系企業の方と食事をしていた時に、突然彼が調子が悪いから横になると奥に行ってしまい、秘書の方が社長が痛がっているので診てもらえないかと。調べたら盲腸でした。すぐに近くのアジアンホスピタルにインターン時代の友人が務めていましたので、彼に相談して、その日のうちに手術、幸い2日後にはケロッと退院されていました(笑)。ただ、あと少し遅かったら破裂していたそうです。少し調子が悪かったらすぐに相談できる環境を作っておくことも、心がけておいてください。

 

アラバンのフェスティバルモール内にある神戸クリニックは

「身近なクリニック」として親しまれている

 

Q 神戸クリニックの特長を教えてください

当院はアラバンのクリニックとして総合診療を行っています。産婦人科のドクターも含め、今はレギュラーの先生が5人在籍しています。

 

当クリニックは高速を降りてすぐにあるフェスティバルモールの中ですので、気軽に立ちれると患者さまからも好評を頂いております。私もフィリピンにいて罹患しがちな大体の病気の治療経験を持っております。身近なクリニックとして利用していただけると思います。

 

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サンラザロ病院:サンラザロ病院長崎大学共同研究拠点マネージャー 鈴木秀一先生

400年の歴史を持つサンラザロ病院で、現在コロナ治療チームの最前線で研究活動をする鈴木秀一先生(サンラザロ病院長崎大学共同研究拠点マネージャー、長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科所属、元薬剤師)。専門分野は薬学、糖尿病、臨床疫学研究だ。

 

今回はフィリピン国内の国立感染症病院・サンラザロ病院のコロナ治療の最前線の状況や、フィリピンの国立病院の状況、フィリピンで生活する上で注意したいことなどを伺った。

 

Q. コロナの治療最前線で研究チームを仕切っていらっしゃいますが、今の状態はいかがですか?

フィリピンも感染数は落ち着いているように見えます。去年は世界的にコロナのアルファ株とデルタ株が流行りましたが、フィリピンでは既に多くの方がコロナの既往歴があり、免疫がついている方も多く、感染者数が日本に比べて増えにくい状況であったと考えています。

 

ただし、フィリピンの場合は感染しても検査を受けないケースも多く、この数字はあくまで参考値です。実際のところは今年に入ってから、マニラの半数以上の方はコロナに感染していたのではないかと私は見ています。

 

病院の状況としては、コロナ前と比較するとまだまだ平常運転とは行かず、未だにコロナ専用病棟やスタッフが配置されています。ただ、去年のデルタ株流行の頃と比較すると、患者数はそれほどではありません。デルタ株の時は重症化する患者さんが多く、特に重症化した患者さんを対象にしている当サンラザロやフィリピン総合病院では、患者さんは病院内では収まり切れない程でした。今年に入ってからは、空いている病床も昨年より多い状況です。ワクチンの影響もあると思いますが、重症化する患者さんは少なくなっていますね。

 

Q. フィリピンの国立病院の状況はいかがでしょうか。

フィリピンの国立病院が日本と大きく違うところは、患者さんの医療費は基本的に無料で、国費によって運営されているため、医療機器、薬剤、人材が限られているところです。この中で多くの患者さんを診なければいけないのは、公立病院に勤務する者の大きな課題です。

 

また、院内環境でいえば、屋外のテントで患者対応する状況で、当然ながらエアコンがなく気温が高いのですが、特にコロナ禍初期当時は、感染コントロールの為にどの程度の防護服が必要か把握できてなかったこともあって、防護服を完全に全身に身に着け、汗だくになりながらその環境の中で治療をするという環境にありました。

 

サンラザロは元々感染症専門病院なので、医療従事者は感染症防止のトレーニングが必須で、予防の知識も豊富です。そのためか、コロナ禍に突入した直後にサンラザロと一般病院の医療従事者の感染者数を比較したところ、他の病院の方が罹患者が圧倒的に多かったですね。しかし治療の最前線にいる医療関係者にとって、コロナが起きたときの恐怖や不安は凄まじく、マネージメントレベルの人間がそれぞれのスタッフにメンタルサポートをするなどして、運営を続けてきました。

 

また、これはサンラザロ特有の問題かもしれませんが、フィリピンの方の傾向として、ある程度悪くならないと病院に来ない人が多く、既に重症化してしまった患者さんを救うことができない空しさを感じることも多いです。日本ではあまり見られない結核などの患者さんも、症状がひどくなってから来るケースがよくありますね。

400年の歴史を持つサンラザロ病院

Q. コロナ以外の感染症でも、フィリピンで生活する上で注意すべき点を教えてください。

 

結核、A型肺炎、レプトスピラ症、デング熱、狂犬病など、日本ではあまり見られない感染症にかかる可能性が、日本に比べフィリピンでは高い傾向にあります。結核は空気感染しますので、換気が悪く人が多いところに行くときは注意が必要です。外から帰ったら、基本の手洗いやうがいを欠かさないようにしてください。特に結核はコロナよりも感染率が高いと言われているので、個人的に一番注意しています。

 

また、フィリピンは洪水が多いですが、万が一汚水に浸かってしまったら、傷口からの病原菌が入らないためにも、すぐに洗ってアルコール消毒をするようにしてください。そして野良犬や野良猫には、かわいいからと言ってむやみに近寄らないこと。そして、A型肺炎の場合、例えばストリートフードを食べた後、どこかおかしいなと気づいたら感染の可能性があるのだと念頭に入れて、すぐに対応しましょう。

 

Q. 健康を維持するために、どんなことに注意すればいいでしょうか?

 

私が個人的に気をつけていることは、筋肉量の維持と食事です。これはフィリピンだけではないのですが、1時間座ってると寿命が6分縮むと言われているのをご存じですか?座っている時間が長ければ長いほど寿命が短くなるそうです。特に足の筋肉やおしりの筋肉は寿命とすごく相関があるというデータがあります。長生きしても寝たきりで10年過ごすのは、人生ですごく勿体ないと思いませんか?僕もできるだけ歩いたり、食事に気をつけるようにしていますが、オフィスワークの時も1時間ごとに少し歩いたり、背筋を伸ばして姿勢に気をつけたりしています。

 

また、食事面では、食物繊維に気をつけています。食事にリンゴやバナナ、玄米を取り入れ、食物繊維を積極的にとるように心がけたり、肉魚をバランスよく食べるようにしたりしています。

 

Q. フィリピンの薬剤や調剤の上手な活用法を教えてください。

以前は、糖尿病治療と患者さんのQOLの質が研究テーマの一つだったのですが、お世話になった先生の話では、患者さんに食事に気をつけなさい、運動しなさいと注意しても、モチベーションや優先順位は人それぞれなので、逆にその注意がストレスになってしまうこともある、だから心や身体の平穏を保つためには、薬に頼るのも一つの手ではないかとおっしゃっており、私もそう思っています。

 

私自身、血圧の薬を2種類飲んでいます。自分で努力するところはするし、薬に頼れるところは頼ってしまってもよいと考えています。

 

基本的に日本で普通に処方されるような薬は、ここフィリピンでもほとんどの場合手に入ります。同じブランド名の薬があるか、なければジェネリックはあるか、なければ同効薬はないかの順で探してみましょう。処方箋無しで購入できる薬剤も多いので、薬局薬剤師の方に確認してみてはいかがでしょうか。

 

Q. フィリピンに暮らす人たちにアドバイスをお願いします

海外に住む日本人が気をつけるべき疾患に、心血管系の疾患、メンタル系の疾患があると報告されています。心血管系の疾患はメンタルの影響も大きく、いかにストレスを溜め込まないようにするのかは重要です。自分なりのストレスの対処法を見つけ、例えば、日本人の友達を作ったり、美味しい物を食べたり、フィリピンでも楽しみを見つけ、楽しく健康に過ごして頂きたいと思っています。

 

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