新型コロナウイルスの拡大をうけ、フィリピン国内外でも影響が広く出始めています。対策として会社はどのようなことに留意しておくべきなのか。関連する労務上の取り扱いについて、 桃尾・松尾・難波法律事務所の上村真一郎弁護士と鳥養雅夫弁護士に伺いました。
本稿を準備している3月上旬の段階で、徐々にフィリピンにおいてもコロナウィルスに感染した人の数が増えてきており、問題が深刻化の様相を見せています。従業員本人がまず感染する可能性もありますし、フィリピンは大家族ですので、家族の中に感染者が出ると濃厚接触している従業員も感染する可能性があります。
さらに、感染に気づくまで工場や事務所で勤務していたとすると、社内でさらに他の従業員が感染するリスクもあります。
そこで、会社としてどう対処するのかについて検討をしておくことが急務となりますが、本稿では労務に関する法律等はどうなっているのかについてお知らせ致します。
1.従業員が罹患している可能性がある場合
従業員本人からコロナウィルスにかかっている可能性があるとの連絡を受けた場合、会社はどうするべきでしょうか。
フィリピン保健省はコロナウィルスに感染している可能性のある者に接触した者及び/又はコロナウィルスの感染者が出た地域に旅行をしたことがある者で、熱や咳、倦怠感、痰、喉の痛みや頭痛といった軽い症状が出た場合、14日間自宅に待機することを推奨しており、より重い症状が出た場合は直ちに医療機関に連絡するとともに、保健省のホットラインに連絡をするように求めています。
したがって、雇用主が従業員からそのような申出を受けた場合、出社しないよう要請するとともに、症状に応じて自宅待機または医療機関等への連絡をするよう要請することになります。かかる要請に応じて従業員が出社しなかった場合、従業員がまだ有給休暇を残していたのであれば、それを使用したこととして給与を支払うか、既に使い切っている場合は、欠勤した分の給与を支払う必要はありません。
2.従業員が罹患した場合
次に、従業員がコロナウィルスに感染したことが判明した場合、会社としてはどうすべきでしょうか。従業員がコロナウィルスに感染していることを知らずに工場や事務所で勤務していた間に他の従業員に移してしまった可能性もあることから、会社としてどのように対処すべきでしょうか。
フィリピン保健省は3月4日付勧告第09号(Labor Advisory No. 09 Series of 2020)にて、コロナウィルスの大流行を原因とする救済策としてのフレキシブルな労働調整を行うことに関するガイドラインを発表しました。これによりますと、通常の労働条件を継続することによる整理解雇や事業の閉鎖などが起こらないよう、雇用主は従業員と協議の後、フレキシブルな労働調整を一時的に行うことができることとしています。
具体的には、労働時間や労働日の短縮、従業員の就業場所の変更(ローテーション)、強制的な有休取得などが具体例として挙げられています。これらを定めた場合、雇用主はその内容を掲示するとともに、管轄のDOLE事務所にその内容を報告する必要があります。
この設例の場合においてもかかる手続きを取り、濃厚接触が疑われる従業員の出勤の停止、その他必要な措置をとることが可能です。
具体的な事例が発生した場合は、専門家にご相談ください。
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