JETROフィリピンは28日、フィリピンの金融トレンドに関する新しい情報を発表しました。
金融機関の口座保有率が上昇、電子マネー口座増加などが影響
フィリピン中央銀行(BSP)が7月16日に発表した「2019年金融包摂(注)調査」報告書によると、フィリピンの成人(15歳以上、約7,200万人)が金融機関に口座を保有する比率は、2017年の22.6%から2019年は28.6%に6.0ポイント伸びたことがわかった。
2017年調査では2015年から2017年の増加幅がわずか0.6ポイントだったのに比べて、口座保有の勢いが増している。特に、電子マネー口座の保有率が1.3%から8.0%に、NGOのマイクロファイナンス口座の保有率が8.1%から12.1%に、それぞれ拡大した。これら口座の保有率上昇が全体を押し上げた。他方、銀行口座保有率は11.5%から12.2%の微増にとどまった。
口座の開設理由では、「貯蓄(36%)」や「給与や年金の受け取り(35%)」が多く、開設後の用途は「貯蓄(76%)」と「支払い(39%)」が目立った。借入先は「家族、友人、親戚(44%)」と「NGOのマイクロファイナンス(31%)」が多く、「非公式な金貸業(10%)」の利用が「金融会社(7%)」「銀行(3%)」を上回った。また「質屋、送金サービス会社」を通じて送金を行う人が全体の9割を超えた。一方、口座を持たない理由は、「預けるだけのお金がない(45%)」が多く、「不要(27%)」「開設に必要な書類を準備できない(26%)」「使い方が分からない(17%)」などの回答が続く。
また、調査報告書によると、携帯電話の保有率69%に対して、携帯電話で決済する個人は12%にとどまるという。加えて、インターネット利用者の比率53%に対して、インターネット決済を行っている人は9%のみとなっている。電子決済を敬遠する理由は「信用できない」「通信速度が遅い」「銀行での支払いを好む」などが挙げられている。
中銀、「デジタル銀行」開設の指針策定
BSPは金融部門のデジタル化を促進するために、デジタル銀行の開設指針を策定している。7月6日付の「フィルスター」や「マニラ・タイムズ」など地元各紙によると、デジタル銀行は顧客の問い合わせに対応する部門以外は電子的な方法で金融商品やサービスを提供するという。個人や零細・中小企業向けの「基本的なデジタル銀行」は、最低資本金4億ペソ(約8億8,000万円、1ペソ=約2.2円)以上で開設でき、預金、無担保融資、振り込み、送金、料金支払いサービス、電子マネー発行を業務とする。
「先進的なデジタル銀行」は個人や企業向けにクレジットカード発行なども含めた銀行サービス全般を提供でき、最低資本金9億ペソ以上で開設できると報じられている。
(注)国民全員が基本的な金融サービスを受けられるファイナンシャル・インクルージョンを意味する。
(石原孝志)