JETROフィリピンは25日、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に関する情報を発表しました。
RCEPの効果、フィリピン経済界の見解は分かれる
フィリピンのラモン・ロペス貿易産業相は11月15日、第4回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会議に参加し、RCEP協定に署名した(2020年11月16日記事参照)。
貿易産業省(DTI)によると、フィリピンにとって、協定締約国は2019年の輸出額の約50%、輸入額の約61%で、対内直接投資の11.4%を占める。DTIは、同協定により、縫製産業や自動車部品、缶詰食品などの主要産品の市場が拡大するだけでなく、製造業や研究開発(R&D)、金融サービス、ゲーム開発、電子商取引(EC)、IT-BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業といった重要分野でのフィリピンへの投資が促進すると発表している。国内市場への影響が大きいコメや豚肉などの農産品をはじめとするセンシティブ品目は、関税撤廃対象から除外されている。
RCEPのフィリピンへの経済効果について、経済界の見解は分かれる。「RCEPは、輸出事業者やサービス・プロバイダーに市場拡大の機会を与える。貿易を促進し、新型コロナウイルス感染拡大でダメージを受けた国際経済の迅速な回復に寄与する」と、フィリピン大手のリサール商業銀行のチーフエコノミスト、マイケル・リカフォート氏は指摘する(「フィルスター」紙11月17日)。
また、「インクワイヤラー」紙のコラムニストで、経済学者のシエリート・アビト氏は「フィリピンがインフラや税制の整備を進め、政府のガバナンスを向上させることができるならば、RCEPは『新型コロナ後』のフィリピン経済に重要な役割を果たす」とコメントする(「インクワイヤラー」紙11月17日)。
一方、フィリピン商工会議所は「関税削減によって輸出事業者は便益を得るが、フィリピンの主要な外貨獲得源は(財輸出ではなく)在外フィリピン人からの送金やBPO産業の収益で、国内への経済効果は限定的」とみる(マニラブレティン11月16日)。
なお、RCEPにおいてフィリピンは、日本からの輸入では自動車用ヒューズを15年目以降に関税撤廃するなど、一部の自動車部品の関税撤廃を行う。また、居住用不動産の賃貸・管理サービスについては、外資出資比率の上限を51%とし、現行の外資出資比率40%以下より緩和する。
(吉田暁彦)