All Japanの小売り部門の一翼を担い
次世代の新しいライフスタイルを発信
MITSUKOSHI BGC
Sunshine Fort North Bonifaci Commercial Management Corp.
(ショッピングモール事業運営会社)
館長/General Manager
諸星 光典 氏
MITSUKOSHI FEDERAL RETAIL, INC. (MFRI)
(MITSUKOSHI FRESH・MITSUKOSHI Beauty事業運営会社)
President
川口 洋司 氏
フィリピン在住の日本人がその動向に注目するMITSUKOSHIBGC。7月21日にグランドオープンを迎え、BGCというエリアに根付いたフィリピンにおける富裕層にむけた新しいライフスタイルの発信基地になるべく邁進中だが、その現状と課題は?そして今後の施策は?MITSUKOSHIBGC・館長の諸星氏、モール内にMITSUKOSHI FRESH・MITSUKOSHI Beautyを出店するMITSUKOSHI FEDERAL RETAIL 社長の川口氏にお話を伺った。
編集部
これまでの経過を教えてください。
諸星氏
2017年、フィリピンのフェデラルランド(Federal Land)から三越伊勢丹ホールディングス(以下三越伊勢丹HDS)にオファーをいただき、野村不動産、フェデラルランド、三越伊勢丹HDSの三社で合弁企業を設立したのが事業の始まりです。当初、MITSUKOSHI BGCとしては2020年の開業を予定していましたが、コロナ禍の影響もあり、2022年11月18日にソフトオープン、そしてこの7月21日グランドオープンとなりました。
川口氏
コロナ禍では工事のストップやブランドとの交渉停滞に加え、我々の赴任も何度も遅延しました。22年の2月にようやくフィリピンに入国できた状態で、ほぼ2年間は遠隔での商談のみ、事業の進捗に大きな影響を受けました。
編集部
フィリピンに出店された意義は?
諸星氏
三越伊勢丹HDSは、2024年度までの中期経営計画において、「CRE・事業モデル改革」として、海外における事業展開モデルを「当社の持つ商業運営ノウハウを生かした不動産開発への参画」を中心に検討していくことと発表しました。MITSUKOSHI BGCの住宅と商業施設の複合開発プロジェクトへの参画は三越伊勢丹HDSにとって初の取組であり、新しいビジネスモデルへの挑戦です。フィリピンはまだ日系大手百貨店が進出しておらず、大きなチャンスがあります。人口ボリューム期の長さやGDP成長率の高さ、また、親日国であることも進出の大きなポイントでした。
編集部
コンセプトを教えてください。
諸星氏
MITSUKOSHI BGCとしては、「Next Manila Lifestyle」を掲げています。食や美などを通じて広がる体験や上質で新しいライフスタイルをフィリピンの方々へご紹介し体験していただくことです。実際にソフトオープンのあとフィリピンで抹茶ブームが起きていますが、これは1階入口の「THE MATCHA TOKYO」がブームの火付け役になりました。そして「紀伊國屋書店」からは日本の漫画ブームが起きています。まだ小さなブームではありますが、新しい体験をご提供する「Next Manila Lifestyle」の具現化の一つだと思います。
ファッションでいえば、フィリピンではアメリカンスタイルのファッションが主流ですが、これにあきたらない層の方は必ずいるはずで、日本の若い女性に人気のエレガントファッション「SNIDEL」から、抹茶ブームのようなものが起きるのではないかと期待しています。
川口氏
MITSUKOSHI FRESH・MITSUKOSHI Beautyとしては、「Innovating Experience, Enriching Lifestyle」(新しい体験で生活を豊かに)を掲げています。現在、多くのフィリピンの方が日本に旅行して新しい体験をされています。それをフィリピン国内でも体験していただき生活の一部にしていただきたいと考えています。そのため、まずMITSUKOSHI FRESHのスーパーでは「A Feast For Your Sence」(五感にご馳走を)を掲げ、口だけではなく五感で食を楽しむ喜びを、日本の「デパ地下」などで培ったノウハウを取りいれることで一つ一つ実現しています。日本には四季があり、季節ごとの歳時期があります。お正月の鏡割り、節分の恵方巻、ひな祭りのちらし寿司など、日本の季節の楽しみ方を食べ物や店内の装飾でもお見せして体験していただき、ご好評をいただいています。また餃子の実演販売などでまず香りでお客さまをひきつけ、試食していただき、納得して購入していただく取組を週末中心に始めました。こういった取組を着実に続けていく予定です。
編集部
ご苦労されたこと、現在の課題は?
諸星氏
何よりコロナ禍の影響があったとはいえ、開業が遅れテナント様にご迷惑をお掛けすることになったことです。グランドオープンでは残念ながら100%のオープンとは行きませんが、現在8割が営業を開始しており、事業がストップしていた日系テナントもフィリピンでの法人設立、ディストリビューターへの委託を進めています。今後のさらなるMITSUKOSHI BGCの進化にもぜひ注目していただきたいと思います。
MITSUKOSHI BGCのお客さまはエンドユーザーとテナントの方々です。その両方の方に、どのように利益はもちろん、楽しさ、満足感をご提供できるのか、どうバランスをとって進めていくか苦慮しながら進めております。
フィリピンの流通業界といえば大手財閥系が占め、三越といっても知らない方がいる中にあって、一緒にやろうと言ってくださったテナントやネットワークを駆使してくれたメンバーの皆さんには非常に感謝しています。
川口氏
現在かかえている課題は2点あります。一つは「人」です。フィリピンの従業員は想像していた以上に勤勉ですね。一方おおらかな分、几帳面さが良い意味でも悪い意味でも欠けるという側面も感じています。我々は日本的な「おもてなし」という言葉を店舗の特長としてお客さまにご提供していきたいと考えていますが、この「おもてなし」は日本人の几帳面さ、きめ細かさ、気配りに由来している部分も大きく、一朝一夕に身に着けることはできないと実感しています。日々の取組に加えてスーパーの店長に日本へ出張してもらい、スーパーに一日立つ経験をしてもらうなどの地道な取組で結実させたいと考えています。
もう一つは輸入障壁です。フリーポートのシンガポールや香港のスーパーなどに行かれたお客さまから、あちらでは買えたものがここでは買えない、品揃えが少ないという声をいただいています。ここは我々の経験値不足の点もあるかと思いますので、今後、お客さまの声にお応えできるよう、経験値を上げていくことが大切だと思っています。
編集部
有名ブランド店の出店はお考えですか?
諸星氏
日本人の方や日本に行かれているフィリピンの方の三越のイメージは、東京の三越日本橋本店、三越銀座店などラグジュアリーブランドが入った店舗のイメージが強いのではないでしょうか。三越は四国、山陰等にも店舗を構え、そのエリアに合わせた店舗展開をして参りました。ラグジュアリーブランドの出店は各国のマーケットの成熟度で発展性が異なり、生活の変化に応じて進化します。フィリピンはまだその時期ではないと考えています。
編集部
日本の皆さんへメッセージをお願いします。
川口氏
フィリピンのお客さまは「本当の日本」を求めて来店されています。その実現のためには在住日本人の皆さんのお眼鏡にかなう商品やサービスをご提供できないと、フィリピンの方の期待にお応えできません。もちろん出来ることと出来ないもありますが、皆さんに忌憚ないご意見やご要望を頂戴できればありがたいです。
最近日本の企業と一緒に、ベンゲットで日本の農業経営のノウハウを使って栽培した生鮮野菜の販売に取り組んでいます。フィリピンでは輸送・保冷設備がまだまだで野菜が輸送の途中で50%ものロスが発生していると言われています。MITSUKOSHI BGCには充分な保冷設備がありますので、できるだけ質の高い生鮮野菜をお届けすることができるようにしています。これは魚介類の流通課題も同様です。日本からの製品はもちろん、日本のノウハウをフィリピンに導入して高品質な製品をお届けする取組はぜひ、オールジャパンで、日本の企業・団体の皆さまと協力して実現したいですね。我々も力を入れて参ります。
諸星氏
ぜひオールジャパンで日本製品、文化、技術をフィリピンに広めていきたいですね。私たちはお客さまとの交流を非常に大切にしております。お互いに交流することでお互いのビジネスチャンスもみつかるかもしれません。我々を店舗で見つけたら気軽にお声がけください。
そしてフィリピンで暮らす日本人の方にとっても、MITSUKOSHI BGCがあるからフィリピンでも安心して生活ができる、そんな生活の選択肢の一つになればと考えています。
取材日:2023年6月23日
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