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『整理解雇時の退職金』【フィリピン法律あらかると第百五回】

『事業の選択と集中の一環で、工場の閉鎖を検討しており、工場労働者の整理解雇も併せて行う予定です。その際、退職金を支給する必要はありますか?』


今月の事例

Q.私は日本人父とフィリピン人母の子で、日本国籍のみを持っており、他に妹がいます。父は既に他界しており、このたび日本に住んでいる母が亡くなりました。母はフィリピンに不動産を持っていますが、どのような手続が必要ですか?
 
 
<整理解雇時の退職金の支払い>

フィリピン労働法においては、以下のとおり整理解雇のできる場合が列挙されており、それぞれの場合について、雇用主が労働者に対して支払うべき退職金(Separation Pay)が定められています。



設問のケースでは工場の閉鎖を理由とする整理解雇ですので事業の停止にあたり、上の表によりますと、整理解雇の対象となる従業員に対しては、勤務年数1年につき0.5ヶ月分または1ヶ月分のいずれか多い方を支払う必要があります。なお、勤務期間が2年5ヶ月の場合は勤務年数を2年と計算しますが、2年6ヶ月の場合は3年として計算することになります。

また、法律では退職金の金額につき、”one (one-half ) month pay for every year of service”と規定しています。この”one month pay”に何が含まれるかですが、基本給(basic salary)だけでなく、通常の手当(allowance)の金額についても計算の基礎に含む必要がありますので、ご注意ください。整理解雇の手続としては、解雇予定日の1ヶ月前までに従業員及びDOLEに対して解雇を行うことにつき通知を行い、実際の解雇日に最終の給与に加えて退職金を支払うことと引き換えに、権利放棄書(Quitclaim; 従業員と会社との間に一切の権利義務が存在しないことを確認する文書)の差し入れを求めることになります。

<退職金を支払わなくてよい場合>

事業の停止の場合も原則的には退職金を支給しなければなりませんが、例外的に事業の停止が重大な事業上の損失による場合は退職金を支給しなくてよいとされています。もっとも、そのような場合、まず会社は従業員に対して重大な事業上の損失があるために退職金を支払わない旨事前に説明を行います。そして、かかる会社の説明につき異議のある従業員はNLRCに対して不服申立を行うこととなり、その際、NLRCは会社に対して、会社がそのような重大な事業上の損失を被っていることについて証明を求めますので、会社は重大な損失を被っていることにつき、独立した監査人による監査済み財務書類をもって証明することが必要となります。万一NLRCが会社の主張を認めず、会社が重大な事業上の損失を被っていないと判断した場合、会社が退職金を支払わない限り、有効な整理解雇とは認められません。
 
 

結論

A.原則的には退職金を支給しなければなりませんが、会社が重大な事業上の損失を被っている場合はその限りではありません。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。



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