『出国禁止命令等について』
今月の事例
<出国禁止命令の種類>
フィリピンの空港から出国しようとする際に、イミグレーションの係官に止められて出国できないという場合があり得ます。これは、出国しようとした外国人に何らかの出国を制限する命令が出ているためです。そこで、まずどのような出国禁止命令があるのかにつき解説します。
(1)Hold Departure Order (HDO)
HDOは、地区裁判所(Regional Trial Court; RTC)が発令する出国禁止命令であり、対象者が刑事裁判の被告人となっている場合の他、対象者が民事裁判における被告である場合もしくは証人として裁判所への出頭が必要な場合、また、他の政府機関からの対象者を出国させないよう要請があり、RTCがかかる要請の必要性を認めた場合等に発令されます。上記の理由がなくなり、RTCが命令を解除するまで出国禁止の効力が継続することとなります。なお、HDOが発令された場合であっても、出国することがどうしても必要な場合、RTCに出国が必要な理由を説明することにより、一時的に出国が許可されるケースもあります。
(2)Precautionary Hold Departure Order (PHDO)
PHDOは、上記のHDOと同じく、RTCが発令する出国禁止命令ですが、HDOとは異なり、対象者が刑事事件の被疑者ではあるものの、まだ事件が起訴されていない段階で対象者が出国することを禁止するものです。具体的には、刑事事件を担当する検察官がRTCに対して、当該人が犯罪を犯したと疑うに足りる合理的な証拠をRTCに対して提出し、これをRTCが認めた場合に発令がなされます。
(3)Immigration Lookout Bulletin Order (ILBO)
ILBOはRTCではなく、司法省(Department of Justice; DOJ)が発令するものです。かつてDOJは出国禁止の効力を有するWatchlist Order(WLO)を発令していましたが、2011年に裁判所の暫定禁止命令によりその発令を禁止されたことを受け、新たにILBOを発令することとなりました。ILBO自体は出国を禁止する効力はありませんが、実務の運用としては、これが発令されている場合に対象者がフィリピンから出国しようとするとイミグレーションの係官から数々の質問や書類等の提出を求められることとなり、これに対応している感に搭乗予定の航空機に搭乗することができず、結局出国することができないということが繰り返されています。なお、どのような場合にILBOが発令されるかにつきましては明らかにされておりませんが、WLOは以下の場合に発令されることとされていましたので、それと同様であると推察されます。
①RTCにおいて刑事裁判が係属している場合
②予備審問手続等が係属している場合
③自発的に、または他の政府機関からの要請がある場合、若しくは、安全保障、公共の安全または公共の福祉のために必要な場合
仮に空港で出国できなかった場合、まずはどのような理由で出国できないのかにつき調査したうえで、その対処を行う必要があります
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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