
『Heir’s Bondとは何ですか?』
今月の事例
被相続人が遺言を残さずに亡くなった場合、フィリピン国内に存在する遺産を分配するためには、訴訟外の遺産分割協議(Extrajudicial Settlement)を行うことが一般的です。被相続人に債務がなく、相続人間で遺産分割の方法につき協議が整う場合は、訴訟外の遺産分割協議にて合意した内容で遺産分割を行うことが可能となります。今回は、この訴訟外の遺産分割協議の方法による場合で必要となるHeirʼs Bondについて説明させていただきます。
改定裁判所規則ルール74は、遺産分割協議に基づいて遺産を実際に相続人間で分配するためには、Heirʼs Bond(以下、相続人預託金といいます)を証書登録所(Register of Deeds)に提供する必要があると規定しています。これが必要とされる理由は、たとえ遺産分割協議が相続人間でなされたとしても影響を受ける相続人がある可能性があること(たとえば、まだ判明していない相続人が存在する場合)や被相続人には見つかっていない債務がある場合があり、それらの者が不利益を受けないようにする必要があるからです。実際に訴訟外の遺産分割協議により遺産分割を行うためには、その遺産分割協議の内容を三週連続で一般新聞紙上に掲載する必要があり、遺産の分配の日から2年間は、訴訟外の遺産分割協議により影響を受けた相続人や債権者が権利を主張することが可能とされていますので、その担保として、相続人預託金は3回目の新聞掲載の日から2年間、預託をし続ける必要があります。次に相続人預託金の金額ですが、これは遺産の金額であるとされています。もっとも、不動産については除外され、それ以外の個人資産(金銭(銀行預金や株式等を含む)や動産類)の金額について預託金を積む必要があるとされています。これは、不動産を相続により名義変更する場合、登録書類上に当該所有権移転が遺産分割によることが記載され、遺産分割から2年間は影響を受けた相続人や債権者がその不動産に対して権利主張をすることが可能であるからです。
先に述べた通り、相続人預託金については裁判所規則にて規定されていますが、実際には全ての事案において守られているとは限りません。というのも、例えば遺産がタンス預金であるとすると、相続人間で自由に分配することも可能だからです。もっとも、対象となる資産を管理している者(例えば銀行や証券会社等)が預金や株式の引き出しや処分にあたり、相続人預託金が積まれていることの証明を求めた場合などはこれが必要となります。
相続人預託金は遺産の金額を積む必要があるとされていますが、例えば遺産額が莫大な場合など、実際にその金額を積むことは困難となる場合もあります。そこで、そのような場合は保証会社(surety company)に保証料を払うことで代用することが一般的です。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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