『交渉が行き詰った場合の対処方法』
前回までは労使交渉に関する様々な点についてお話させていただいております(前回のフィリピンあらかると に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。。今回は一般的にフィリピンで紛争が生じた場合の解決方法についてお話しいたします。
今月の事例
<フィリピンにおける紛争解決手順>
日本において売り先が代金を支払わない場合、まずは当事者間で代金支払いの要請を行い、それでも支払いがない場合には弁護士を通じて支払い請求を行うことが一般的であると思います。しかし、フィリピンの場合は弁護士が会社の代理人として支払いを請求する通知を行ったとしてもこれに相手方が応じることはきわめて少ないと思います。したがって、任意に支払いを求めても応じない場合には、売買取引に際して契約書を締結しており、その中で紛争解決手段が指定されている場合にはそれにより、それ以外の場合には裁判所での手続を行うことが必要でしょう。
<フィリピンにおける仲裁手続>
まず、フィリピンにおける仲裁手続についてご説明します。フィリピンにも他の国と同様に仲裁を行う機関は存在します。紛争の内容に応じて様々な仲裁機関が設けられておりますが、設例のような一般的な商取引を扱う仲裁機関としてはフィリピン紛争解決センター(Philippine Dispute ResolutionCenter, Inc.; PDRCI)があります。PDRCIにおいて仲裁を行うためには、紛争の当事者がPDRCIで仲裁を行うことにより紛争を解決することについて合意していることが必要であり、原則として契約書の中でそのような合意(仲裁合意といいます)がなされていることが必要です。
仲裁合意に基づき仲裁が行われる場合、定められた方法により仲裁人が定められ、PDRCIの定めた規則に基づき審議が行われ、仲裁人が決定を下します。仲裁人が下した決定は両当事者を拘束し、裁判によりこれを覆すことはできません。仮に、仲裁決定に一方当事者が従わない場合には、裁判所に申立を行い、これを強制することができます。なお、仲裁を行うにも費用がかかり、紛争の大きさに応じた手数料を支払うだけでなく、仲裁人に対しても報酬を支払う必要がありますので、訴訟によるよりも費用がかかる場合も多いようです。他方、仲裁人は1年以内に決定を下すこととされており、その決定が最終のものとなりますので、裁判よりも短期間に紛争が解決される可能性は高いといえます。
<フィリピンの裁判手続>
上記のような仲裁合意がない場合ですが、支払いを受けるためには裁判所での手続を起こすことになります。日本の場合、裁判所の手続としては訴訟だけでなく、調停の申立なども存在しますが、フィリピンでは申立の時にそのような区別はありません。もっとも、フィリピンではすべての訴えの提起がなされた場合、まずは調停手続、すなわち、裁判所が強制的に判断を下すのではなく、両当事者の話を聞き、自発的に合意をすることができないかどうかを探る手続が行われ、かかる手続で合意が得られなかった場合のみ、訴訟手続を行い最終的に裁判 所が判決を下すことになります。裁判の場合、請求金額にもよりますが、第1審としては地方裁判所に訴えを提起し、判決につき不服がある場合には、第2審として高等裁判所、それでも不服がある場合には最高裁判所で審議が行われます。また、裁判手続には非常に時間がかかることは覚悟しておいた方がよいでしょう。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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