現地有力グループとタッグ組み規模拡大
ファミマならではの特色を生かし有望市場に切り込む
【プロフィール】
●Philippine FamilyMart CVS,Inc.
Executive Vice President
小泉昌親さん
1964年生まれ、青森県出身。共同石油(株)、(株)エーエム・ピーエム・ジャパン、(株)ファミリーマート海外事業本部等を経て現職。
2012年3月よりフィリピンに単身赴任。趣味はゴルフ、ソフトボールなど。
日本国内外での積極的な出店攻勢で規模拡大を続けるコンビニエンスストアの雄、ファミリーマートが4月、ついにフィリピンに上陸。マカティのグロリエッタ3に1号店、MRTアヤラ駅に2号店と、絶好の立地で好調な滑り出しに成功した。店舗展開の陣頭指揮をとるフィリピン・ファミリーマートの小泉昌親さんにお話をお聞きしました。
編集部● まずは「ファミリーマート・グロリエッタ3店」の開店おめでとうございます。
小泉さん● ありがとうございます。開店準備は工事が難航するなど一筋縄ではいきませんでしたが、ついにメトロマニラで指折りの商業施設であるこの地に第1号店を構え順調にスタートできたことに感謝しています。東南アジアではタイ、ベトナム、インドネシアに次ぐ4カ 国目の出店となります。
編集部● 店舗概要を教えてください。
小泉さん● 店舗面積は約220㎡です。現地のニーズに合わせ、そのうち約50㎡とたっぷりのスペースを26席あるイートイン・コーナーにあてています。商品は弁当などの中食、菓子、飲料、日用品など約1400種の商品を扱っています。
編集部● フィリピン人がターゲットです。現在のところ売れ筋の食べ物はなんでしょうか。
小泉さん● 売上げの数字上はカツ丼が最も好調です。揚げ物が大好きな国民性ですし、甘辛い出汁も現地のお客様の好みに合うのだと思います。他社さんでは見かけないおにぎりも人気で、1日50~100個売れています。ファミリーマート・コレクションというプライベー トブランドのお菓子も、ファストフード以外ではドリンクに次ぐ売上げです。またセルフサービスのソフトクリームをP15で販売しており、1日200本以上売れる日もあります。現地スタッフの意見を採用した日本にもない新商品で、ご好評いただいています。
編集部● 接客については?
小泉さん● 日本のコンビニの接客レベルは世界でも抜きん出ています。こちらでは歌をうたいながら接客するスタッフも珍しくないですよね。お国柄もあるしそれはそれでだめじゃないかもしれないけど、、、やっぱりだめだろうと(笑)。もっと丁寧な接客をすればお客様はより気 分がいいのは、国に関係ないこと。フィリピン人は待つのが苦にならない国民性なんて言われることもあるようですが、待たなくて済むならその方がいいに決まっています。そうした発想で指導にあたっています。
編集部● 運営する「フィリピン・ファミリーマート」(PFM)の設立スキームについては?
小泉さん● PFMは、ファミリーマート、伊藤忠商事、現地のSIAL CVS RETAILERS,INC.の3社の合弁企業です。海外展開においてファミリーマートは、現地の有力パートナーとの合弁を原則にしています。SIAL社は、フィリピン最大規模の財閥で不 動産、金融、通信など幅広い事業を手掛けるAyalaグループと、同じく小売り最大手の一角であるRustanグループが共同出資して設立した企業です。それぞれからフィリピンにおける店舗の物件開発、小売、物流などについての豊富なノウハウを共有させていただいています。昨年末のPFM設立から 約4ヶ月で開店にこぎ着けたというのは、これまでの海外のファミリーマートの中で最速でした。フィリピンで最も信頼のおける2グループの協力があってこそ実現できたと考えています。
編集部● フィリピンのコンビニ業界の概況はどうでしょうか。
小泉さん● 基本的に好調ととらえています。現在先行する他のコンビニが、合計約1,000店舗を展開しています。フィリピンは人口約9,000万人。コンビニの利用層がその1/3だとして、3,000万人に対して1,000店しかない。日本は人口約1億2,000 万人に対し、大手各社合わせて約50,000店あります。日本は人口のほとんどをコンビニ利用層とみなした場合、フィリピンの利用層は日本の1/4です。だとすれば、マクロ的にはフィリピンに10,000店あってもおかしくないはずです。
編集部● 大変有望な市場ということですね。
小泉さん● はい。さらにコンビニの主たるターゲットである10〜20代前半の若年層が非常に多い。経済成長も勢いがあり、 BPO(業務委託)ビジネスなど新しい産業がどんどんこの国に進出しています。BPOの仕事についている方は24時間交代制の場合が多く、コンビニの利便性が強みを発揮できます。確実に需要は上がるはずです。
編集部● 今後の展開は?
小泉さん● 向こう5年間でフィリピン国内300店舗まで拡大していく予定です。短期的には今年中にメトロマニラで40店舗程度の開店を目指しており、その約半分はおおよその目処がついています。
編集部● 海外での勤務は初めてとのことですが、ご苦労された部分は?
小泉さん● 店舗づくりでは、常にスタッフと一緒になって汗をかいていきたいなと思います。階級社会とも言われる中で、上の人間がなんで汗をかいているんだ、と考える人間もいるでしょう。しかし、売場で商品を出したり棚を調整したり苦楽をともにすれば、結果的にフィリピ ン人スタッフのモチベーションもあがるに違いないと考えています。開店準備では「これでは工事が終わらない」という焦りで苦労しましたが、最後はスタッフに「フィリピンマジックを見せますよ」なんて言われて(笑)。焦りながらもスタッフとあれこれやりとりしながら商品陳列を考えたりしたのは非常にいい思い出ですね。
編集部● フィリピンにこられて日本との違いを感じたことはありますか。
小泉さん● まずは現地のコンビニをみて日本の店舗と比べて「暗い」と感じました。より明るく清掃の行き届いた店舗にすればもっとお客様が来るだろうなというのが第一印象。逆に言えばこの基本部分を徹底すれば先行しているコンビニと差別化できるなと。もうひとつは、 値段の安さだけではなく、ずばり美味しい商品を売っているお店にしたい。こちらのアメリカの大手コーヒーチェーンは、日本と値段がそう変わらないにも関わらず繁盛している。何故ならお客様が味や雰囲気などに価値を見出しているからでしょう。私どもも美味しいものを適正価格で提供していくことを追求してい きます。
編集部● 業界に可能性を感じるフランチャイズ参入希望者の増加も期待できますね。
小泉さん● 1、2号店は直営ですが、今後は事業家向けのパッケージも構築していきます。我々の事業はフランチャイズ方式で成り立っています。あくまでも個人的な意見ですが、ここフィリピンでは、投資対象というよりは事業主体者として取り組んでいただける方に、ぜひ 参画していただきたいですね。日本では数十店を展開する事業家さんも少なくないですが、スタート時にオーナー自らが体を動かしてスタッフと一緒に店舗運営にあたられた方が、結局は成功しているように思います。現地の雇用創出という観点からも、家族、親戚一同で愛情を持って運営していただけたら、 すごくよい店舗になるのではないかと。それこそ名前もファミリーマートですからね。
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【好きな書籍】
推理、ミステリー小説
仕事の脳ではない頭で考えながら読むのがリラックスします。横溝正史、赤川次郎、東野圭吾など、このジャンルの色々な作家の作品を読みます。
【好きな言葉】
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
チャレンジしなければお宝には巡り会えません。何でもとりあえずやってみようというのがモットーです。