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フィリピン 飲食業への投資・起業の可能性を探る

フィリピン 飲食業への投資・起業の可能性を探る

フィリピンで起業・投資をお考えの方へ向けて、マニラで10年以上に渡り飲食業を営む事業家・瀬戸正和氏に、フィリピンにおける飲食ビジネス参入のポイントを取材してきました。

 

急速な経済成長を背景として、フィリピンに投資をする個人資産家が増えています。特に昨今ではマニラを中心としたコンドミニアムの建築ラッシュも手伝い、コンドミニアム等への不動産投資が非常に活発です。確かに定期預金ですら年に0.数%の日本の銀行金利を考えれば、高級コンドミニアムの賃貸利回りは 9%~12% 程度(諸経費を差し引いた後のネット利回り)が見込め魅力的です。しかし、そこで誰もが考えることは「もっと効率の良い投資はないものか」と言うことではないでしょうか。
そこで今回は、不動産以外の投資案件としてフィリピンにおける飲食事業に目を向けてみました。今回取り上げるのは昨年11月に開業したジャパニーズファーストフードショップ『J.BOY』です。マニラで10年以上に渡り飲食店経営をしている瀬戸正和氏が「フィリピン人にも美味しい日本食を手軽に食べて欲 しい」と開業させた同店は、開業時より多くのフィリピン人で賑わっており、昼夜のピーク時にはカウンターに長蛇の列が出来る盛況ぶりです。そこで瀬戸氏にフィリピンにおける飲食事業の魅力に付いて訪ねてみました。

 


■フィリピンにおける飲食業の魅力

 

「フィリピンにおける飲食事業の魅力とは、ずばりなんでしょうか」


瀬戸 「それは色々ありますが、第一に高い利益率ではないでしょうか」


「利益率が高いと言うことは、儲けが大きいと言うことですか」


瀬戸 「ハッキリ言えばそうです。日本と比較するとフィリピンの方が利益率は高いです。飲食店の場合大きな支出は3つあります。1つは材料費、そして人件費、最後が家賃です。この中で材料費については、日本より安く購入できるものが多いですが、販売価格も日本より安くなりますから相対 比率からするとさほど変わりません。逆に日本食の場合は、調味料など輸入品に頼る割合が高くなればそれだけ割高になります。次の人件費はポイントです。分かりやすく言えば、日本の時給がマニラの日給が同じです。これは大きいですね。また、日本の場合はスタッフが中々集まらず、求人費用も馬鹿にな りませんが、こちらでは店頭に募集の張り紙をすれば人が集まりますから、マンパワーに頼るところの大きい飲食店にとってはありがたいことです」


「なるほど。その違いは大きいですね」


瀬戸 「はい。更に家賃についても、好立地を選べば賃料も高くなりますが、日本に比べればまだまだ安い訳です。また、ターゲットとする顧客の層次第によっては、それほど好立地を選ぶ必要は無いです。J.BOYは天ぷらが79ペソと、フィリピンの約80%を占める低所得者層でも利用が可能 な価格設定です。従って、出店地には事欠きません。その中で条件の良い物件を選べば良い訳です。因みに今のJ.BOYの家賃は日本円で月に19万円弱です。広さは約55坪です。周囲には有名ファーストフード店が軒を連ね、大型スーパーも有り決して悪い立地とは言えませんが、その値段で借りられ る訳です。日本では考えられませんよね」


「そうですね。日本だったら都心部のファミリータイプ・マンションでもそれくらいしますね」


瀬戸 「はい。それに投資効率に重要な初期投資もかなり抑えられます。日本では飲食店は過当競争が激化し、他店との差別化を図るため、店舗内装にも大きな資金をつぎ込む傾向にあります。これが経営を大きく圧迫している訳です。私から見たら、これで元が取れるのかなと言う店も結 構多いです」


「確かにそうですね。お洒落で豪華な飲食店が増えてますよね」


瀬戸 「そうです。日本ではお洒落で素敵な飲食店が乱立しています。店内外に趣向を凝らし、新メニューを次から次に投入し、様々な付帯サービスを提供する。でも、飲食業界のデフレ現象は歯止めが利かない状態。人件費は高騰する割りに良い人材の確保は難しい。現状、日本の飲食 業界は非常に厳しい状況が続いています。一方でフィリピンはどうかというと、まずデフレでは無いことは確かです。最近マニラではラーメンブームが到来し、日本から様々なラーメンチェーンが上陸しています。人気店では行列が出来るほどです。このラーメンの価格ですが、日本と変わらないのです。1杯のラーメンが 700~800円するんです。当然ターゲットは裕福層になります。低所得者層も狙っているJ.BOYでは天丼が99ペソですから約240円で、こちらでは安いと言われています。日本の牛丼と大差ありませんから、安いという感覚を持っていただけると思いますが、マニラの最低賃金は一日約1000円です。それ でも240円の天丼が安いと言われる訳です。日本の感覚で言えば1500円以上になりるのにですよ。この点を見ただけでも、デフレ状態が続く日本の飲食業界よりも、フィリピンの方が飲食起業のチャンスがあるとお解りいただけると思います」


■既存店との差別化



「フィリピンには和食のファーストフード店は他にもありますが、既存店とJ.BOYの違いは何ですか」


瀬戸 「J.BOYでは、伝統的な日本食の基本調理法に従い、日本人でも安心して食べられる料理を造るようにしています。フィリピン人向けに多少のアレンジが必要な場合でも、日本食の枠の中でアレンジする。日本人が首をかしげるような料理は造らないと言うことです。例えば天ぷらは、 天つゆを添えるのではなく、天丼用のたれをかけて出します。甘辛い味が好きなフィリピン人を意識してのことです。既存店の中には『日本の味にこだわらない』と公言する店もあります。しかし、日本食は長い歴史の中で培われた伝統の技術がある訳で、それは美味しい料理を造る事を追求する中で生まれた 技術なのです。それに生意気な言い方ですか、日本食という文化を正しく伝えたいという気持ちもあります」


「特にこだわりを持っていることなどございますか」


瀬戸 「一手間を惜しまないと言うことです。例えば天ぷら用のエビ。低価格で提供するためにはどうしてもエビのサイズを落とさなくてはなりません。小さなエビを天ぷら用にのしてしまうと、エビの『プリッ』と言う食感が無くなります。それを補うためにエビに下処理を施して食感を出すようにする。また、 天ぷらに掛けるタレやカツ丼のタレについては、日本そばなどで使われる醤油をベースとした『本返し』を4日間掛けて造り、その本かえしを使って仕込んでいます。そうすることで醤油の角が取れてまろやかになります。また、照り焼きのソースについても醤油とミリンだけで無く、数種類の果物をタップリと入れて果物 の甘味を引き立てるようにしています。低価格のために素材の質を落とさなくてはならない分、タレやソースはこだわっていくようにしています」


「ご飯も美味しいですよね」


瀬戸 「有り難うございます。私も日本人ですので、ご飯に対する思い入れは強いです。どんなに美味しい天ぷらとタレが出来ても、現地のポソポソの細長い米では幻滅ですよね。ここフィリピンも主食は米です。毎日米を食べている訳で、一日に食べる米の量は現代の日本人より遙かに多いと思 います。フライドチキン1つをおかずに茶碗2~3杯のごはんを食べている風景をよく見ることがあります。とにかくご飯が好きなんですね。ですから、ご飯の美味しさは簡単に分かると思いました。J.BOYでは、全品ジャパニーズライスを使用しています。ジャパニーズライスと言っても日本から輸入した米を使っている 訳では無いのです。こちらでジャパニーズライスと言われるほとんどは、日本種の米を中国で栽培された物です。純粋な日本米と比べれば当然味は落ちますが、米の研ぎ方から炊き方に手間を掛けることで、かなり美味しいご飯が炊けていると思います。フィリピン人のお客さんにも、ご飯が美味しいとよく言ってい ただいています」




■事業投資と投資効率について

「少し踏み込んだ質問をさせていただきますが、今回のJ.BOYはどれくらいの初期投資だったんですか」


瀬戸 「初期投資は1200万円程度です。これを2年以内に投資回収できるように計画しました」


「2年回収ですか。単純に投資効率は年50%ですよね」


瀬戸 「はい。現在のところそれ以上の実績が上がっています。元々このJ.BOYはフランチャイズ展開することを念頭に業態開発をしていますので、2年から2年半で投資回収を可能にする必要性がありました。



銀行金利が高く、投資効率の良い案件が多いフィリピンで、フランチャイズ加盟者を獲得するには魅力的な投資案件にすることが必要な訳です」



「でも、天ぷら78ペソなど低価格商売ですよね。その価格設定でそんなに効率の良いビジネスになるのですか」


瀬戸 「単価が安くても原価率を安定させれば、薄利多売で業績を上げることはできます。高単価=高利益という数式は絶対ではありません。それよりも、単価を下げてターゲットのマーケットを広げた方が安定した事業が出来ると思います。無論、単に安いというだけでなく、きちんと利益を出せ るシステムが構築されていると言うことは不可欠です。また、低価格設定のため、ターゲットとする市場はとても大きくなり、多店化も可能になる訳です」



■フィリピンで飲食業を考えている方へ


「フィリピンで飲食業を始めたい方や、飲食事業に投資したい方にアドバイスをお願いします」


瀬戸 「まず、日本人の名義では基本的に飲食業を始めることは出来ません。これがとても重要なことで、店を造っても自分の名義にならないと言うことです。奥さんがフィリピン人の方は、奥さんの名義で出来ますが、それ以外の方は大変大きな問題ですよね。名義を借りるにしても、本当に信 用できるかどうか分かりませんし、知り合いの女性の名義を借りて、完成後そのまま乗っ取られたという話は良くあります。こうなれば裁判をしても勝てないでしょうし、長い時間と大きな費用が発生します。このリスクを解決することが第一。次に、多少料理の心得があるとか、日本で飲食店の経験があるからと言っ て安易に考えないこと。国が変われば全てが変わると思って下さい。仕入れ方法から従業員の雇用、法律に税制もそうです。これらをきちんと理解して始めることです。投資する場合も同様です。きちんと投資先のことを調べることです」


「そうですね。ところ変わればと言いますが、お国が変わる訳ですからね」


瀬戸 「それからこれはフィリピンだからと言うことではなく、飲食店経営全般について言えることですが、私は飲食店を繁盛させるには『美味しい料理を適正な価格で提供し、心地よい接客サービスを行き届かせること。そして顧客のニーズきちんと把握している』と言うことがポイントであると思います 。美味しいについては、全ての人に美味しいと言っていただくことは不可能ですが、8割方のお客様に満足していただける味であること。価格設定については、当然安い方が喜ばれますが、健全な経営が成り立つ範囲で低価格を実現させると言うことです。接客については様々なスタイルがありますが、基本とな るおもてなしのツボを押さえていること。そしてニーズについてですが、これはまずターゲットを明確にすることから始めるべきです。ターゲットが変わればニーズも変わります。ターゲットを絞り込めば、自ずとニーズが見えてきます。きつい言い方をすれば、このポイントをクリアできないようであれば、もう一度計画を再考す ることをお勧めします。


「そうですよね。そうしたことを考えると、開業までの道のりは遠そうですが・・・・」


瀬戸 「開業は簡単にできると思いますが、大切なのは収益を上げて商売として成り立たせることと、リスクを回避すると言うことです。先程の話しは、そのための手段です。手っ取り早い方法としては、現地人と共同経営するという方法が1つ。ただし、信頼できるパートナーを見つける必要はありま す。もう1つとしては、フランチャイズ方式で出店することです」


「J.BOYでもフランチャイズ加盟店の募集をしていますよね」


瀬戸 「はい。J.BOYでは通常のフランチャイズ加盟店の募集もしていますが、日本人向けの加盟募集もしています」


「日本人向けというのはどういうことですか」


瀬戸 「先程の名義の問題をカバーするシステムや、投資を目的とした方向けに開業後の運営受託をプラスしたプランなど様々なご提案をさせていただいています」


「例えば、飲食店のことやフィリピン事情が全く分からない方でも大丈夫なのですか」


瀬戸 「はい。問題ありません。ご自身で運営をされる場合には、運営に必要な全てのノウハウをご提供しますし、慣れるまでの開業当初のみ、私どもで運営をお受けすることも出来ます。また、運営を私どもに委託される場合には、店舗の運営は全て私どもで責任を持って行いますのでご安 心下さい。IT技術の発達のおかげで、日本に居ながらにして店舗の売上や、店内の様子を映したテレビカメラの映像がリアルタイムで確認も出来ます」


「ではJ.BOYの場合、加盟して出店するまでにどれくらいの費用が必要なのですか」


瀬戸 「出店場所や規模により異なりますが、500万ペソ位が目安と思って下さい」


「500万ペソというと現在(2013/3/24)のレートで言うと1,200万円くらいですね。投資の場合はどれくらいの利回りが見込めますか」


瀬戸 「投資効率を何%とお約束することは出来ませんが、運営委託費等を差し引いても年20%以上は見込めるのではないでしょうか」


「先程、既存店が年50%で推移しているとお伺いしましたが」


瀬戸 「控えめな提示でしたか(笑 事業ですから、やってみないと分からないという面もありますしリスクもあります。それはご理解いただきたいです。ただ、お金の臭いに目ざといフィリピン人のお金持ちから、フランチャイズに対する問い合わせを多数いただいています。これが何を意味するかお考えい ただけばお解りいただけると思います」


「そうですね。現地のことに一番詳しい地元の方が注目するビジネスという訳ですね」


J.BOYのフランチャイズについてや、その他問い合わせについては、下記のJ.BOY Webサイト中のFranchiseのページにある問い合わせフォーマットからお願いします。

http://www.j.boy-ph.com/

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瀬戸正和氏

瀬戸正和氏
1966年栃木県生まれ
株式会社ベネフィット 代表取締役
一般社団法人日本スパ協会理事

大学在学中に起業。旅行代理店、飲食店経営を手がける。30歳の時にマンションデベロッパーに入社。異業種開発を任され、当時日本ではメジャーではなかったスパに着目。海外からスパブランドを導入するなどし、日本のスパブームの仕掛け人と言われる。

その後独立し、株式会社ベネフィットを設立、スパ及び飲食コンサルタントとしてプリンスホテルを始めとし多くのクライアントの案件を手がける一方で、講演やスパ・飲食店の業界誌に寄稿。平行して2000年からはマニラにおける飲食店経営を始め、日本とマニラを行き来する生活を続けて いる。現在マニラにおいて2店舗を経営中。

 

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