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第二十回ビジネス烈伝 / 三菱商事株式会社 天野善夫さん

大型事業でフィリピンの発展に貢献
世界を舞台に活躍する商社マン

三菱商事株式会社 マニラ支店長
天野善夫さん

1958年大阪府生まれ。1982年三菱商事入社。多数の国に駐在、長期出張で滞在し、2012年4月から現職。趣味はテニス、俳句、ゴルフ。「これまであまりゴルフをできる環境になかったので、フィリピンではあえて積極的にゴルフをしています」
 
【好きな書籍】
「般若心経」。祖父は一万巻書いてあちらこちらに寄贈しました。釈迦やイエスや日本/世界の神々の物語が好きです。

〈座右の銘〉
「色即是空」。
禅の思想には幼少の頃より、常に家族と共に親しんでいました。

日本を代表する総合商社、三菱商事が戦後マニラに拠点を置いてはや60年。早くからフィリピンの財閥と提携、現在はインフラ関連と衣食住にまつわる消費ビジネスを主軸に据えながら、商社ならではのネットワークを生かしたダイナミックな事業を展開している。激動する時代の中で商社マンとして世界を舞台に活躍し、現在マニラ支店で陣頭指揮をとる天野善夫支店長にお話をお聞きしました。

 

 

編集部

 

まず初めに、入社されてからのご経歴について教えてください。

 

天野さん

 

三菱商事に新卒で入社してすぐ、中国語研修生として台湾へ留学しました。その後実務では主にプラントビジネスに関わってきました。中国、イラク、インド、トルコに駐在し、ヨーロッパや中央アジア諸国には長期に渡って出張で滞在 しました。これまでの会社生活の半分くらいを海外で過ごしています。

 

 

編集部

 

入社直後に留学とは、なんともうらやましい制度ですね。

 

天野さん

 

ええ、ただ入社の年に派遣する制度は私の代で終了してしまいましたが(笑)。入社1年目での語学研修の選択肢は、中国語とアラビア語だけでした。「英語と中国語が話せれば、世界の半分の人と話せる。中国は歴史も面白い」と叔父に聞いていたので、では中国語を勉強してみよう、と。台北の師範大学に2年間留学しました。留学が終わる頃には、日常生活には困らないものの、まだ仕事に使えるレベルまでにはなっていませんでした。それでも留学を終えれば当然現場へ行きます。中国語を話せる日本人が私一人という渤海湾での海上石油プラント建設の現場に放り込まれました。そこでビジネスマンとして随分と鍛えられましたね。最近ではそういった建設の現場に商社側から人を出すことは少なくなってきているのですが、プロジェクトを最初から最後まで遂行し、あらゆることを同時並行で実行する中で身についた考え方は、現在のように支店を預かる立場で仕事をする上で、非常に大きく役立っています。

 

 

編集部

 

長らくの海外生活の中で印象的だった経験の一端をお聞かせ下さい。

 

天野さん

 

サダム・フセイン率いるイラクがクウェートに侵攻した1990年8月当時、イラクの首都バグダッドに妻とともに駐在していました。侵攻とともに国境が封鎖され、外国人は移動を限定区域だけに制限されて“人質”のような状況に置かれてしまいました。徐々に物資が底をつきはじめ、追い込まれていきました。バグダッドで手掛けていたプラントには多くのフィリピン人も働いていて、彼らの解放が決まると、バスを手配してヨルダンとの国境まで送り出す、ということを繰り返していました。女性や子供は早い段階で出国できることになり、妻も先にイラクから出国できたのですが、あの状況下で家族と離れるときの気持ちというのは、経験した人にしかわからないものだと思います。

 

 

編集部

 

世界中がビジネスの舞台となる商社マンならではの大変なご経験ですね。

 

天野さん

 

運良く日本から差し入れられた週刊誌に「多国籍軍のイラク攻撃のXデーは○月○日」という記事を見たときは、ある種の覚悟を決めましたね。結果的に私は4ヵ月後の12月、湾岸戦争開戦直前に日本の国会議員による人質解放ミッション「夢の祭典」で出国できました。その際安全の保障がないにも関わらず、妻がミッションに同行してバグダッドまで私を迎えに来たんですよ。空港で妻と再会したときの感動は忘れられません。妻には一生頭があがりませんね(笑)。

 

 

編集部

 

マニラ支店が現在注力している事業について教えてください。

 

天野さん

 

消費市場向け、いわゆる衣食住に関わる事業の中では、アヤラランド社の子会社アルベオ社とともに、オルティガス地区にコンドミニアムを建設しています。これまで工業団地や宅地の開発はありますが、コンドミニアムは初めてです。現在フィリピンは一人当たりのGDPが2,500ドルを超えました。日本に照らすと、ちょうど1970年の大阪万博後の状況です。まさに消費が増え、インフラが充実していった時期。中間層が増えていく中で、若い世代の家族をターゲットにした不動産事業への投資を決めました。同時に、40年以上継続しているエレベーター事業は、商業施設などの建設が好調であることから堅調に推移し、フィリピンでのシェアはナンバーワンです。今後GDPが3,000ドル、3,500ドルと伸びて行けば、消費の性向が必需品から趣味的な物に拡大していく。そうすると各国の文化の特徴が出てきて、ビジネスとしても面白くなるでしょう。

 

 

編集部

 

三菱商事とアヤラグループとは関係が深いですね。

 

天野さん

 

40年前に提携を交わし、私はアヤラコーポレーションのボードメンバーも務めています。様々な事業でアヤラグループと協業していますが、事業によっては適宜他の財閥系の会社と提携することもあります。

 

 

編集部

 

インフラ関連事業については?

 

天野さん

 

最近ではミンダナオ島の石炭火力発電プラントを受注しました。実は、フィリピンが国として更に発展を続けるには、ミンダナオの発展が起爆剤になると思っています。三菱商事は、ミンダナオでの苛性ソーダやヤシ殻活性炭の事業に 40年ほど前から投資しています。ミンダナオは政府と反政府勢力の対立から情勢が非常に不安定な時期もありましたが、アキノ大統領が力を入れており、和平合意を一歩ずつ進めています。電力プラントの建設を通じて、当社としてもミンダナオの発展に役立ちたい、との大きな思いがこもっている事業です。

 

 

編集部

 

昨年の台風ヨランダの被害に際しては、アヤラ財団を通じて2000万円の義捐金を拠出されました。

 

天野さん

 

社会貢献は三菱商事の社是です。毎年全世界の拠点から本社に「今年はこういう活動をしたい」という希望を挙げています。台風ヨランダの被災地には、その義捐金でシェルターとして耐え得る学校を建築する予定です。その他、アテネオ・デ・マニラ大学の奨学金制度に継続的に参加しています。現在当社がサポートする8名の奨学生がいて、彼らとは交流会もしています。毎年のように起こるマニラ近郊での洪水被害の際は、何千という救援物資の袋詰め作業をし、それを届けるところまで、駐在員を含めた社員が自主的に参加しています。

 

 

編集部

 

さすが、スタッフの方たちを含め、オフィス内がとても整然としている印象を受けました。

 

天野さん

 

今日はたまたまだったのでは?(笑)。月に一度、マブハイアワーと言って終業後に軽食片手に少しお酒も出して、社内で親睦を図る会があり、その時は皆賑やかにしていますよ。これは十数年続いていて、社員同士が円滑なコミュニケーションを持つ助けになっています。諸先輩が、様々な試行錯誤の上で良い慣習をのこしてくれているので、ありがたく思っています。

 

 

編集部

 

フィリピン人スタッフと接する上で気をつけていることは?

 

天野さん

 

フィリピン人の性質を従順だと表現する人もいますが、私はそうは思っていません。どこの国でもノーと言う人言わない人はいるわけで、人として接する基本はどこへ行っても同じだと思っています。ビジネスは相手の文化を尊重するものでなければ成立しません。強いて言えば、大声で怒鳴らない、キリスト教的価値観に触れるようなことは言わない、相手の家族へのリスペクトを念頭において会話をする、ということだと思います。

 

 

 

 

三菱商事株式会社 マニラ支店長

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