『フィリピンに資産がある場合の遺言』
今月の事例
まず、遺言を作成する場合、フィリピン法と日本法のいずれの方式に従って作成する必要があるのかという問題があります。この点については、フィリピンも日本も遺言をする人が遺言を作成した国、遺言の成立または死亡の時国籍を有した国の法律、遺言の成立または死亡の当時住所を有した国、または不動産に関する遺言についてはその不動産の所在地法のいずれかに適合する場合、遺言の形式については有効であると判断しています。したがって、設問のケースでは日本法またはフィリピン法のいずれの形式によっても遺言を有効に作成することができます。
そこで、ここではフィリピン法に基づく遺言の作成方法について解説致します。フィリピンにおいては、(1)自筆遺言(Holographic will)と(2)公正証書遺言(Notarial will)の2種類の遺言の作成方法があります。自筆遺言の場合、遺言の全体が遺言者の自筆にて書かれ、遺言の日付及び署名がなされることのみが必要であり、その他の条件はありません。他方、公正証書遺言の場合、遺言の内容は自筆ではなく、印字の形で行うことが可能ですが、遺言者の他に、3名の証人が必要であり、遺言書の全てのページに遺言者と証人が署名する必要が あります。そして、末尾に公証人が公証を行うことにより、有効な公正証書遺言が完成します。
次に、実際に相続が発生した場合にどうやって遺言に従った遺産相続を行うかですが、フィリピンにおいては、フィリピン法に基づいてなされた自筆遺言、公正証書遺言のいずれについても裁判所において検認手続を行う必要があります。検認手続を行う裁判所は、遺言者が死亡時に住んでいた地または不動産の場合、不動産の所在地を管轄する地方対審裁判所(Regional Trial Court)となります。遺言の執行者として指名されている者や、遺贈を受けた者を含み、利害関係を有する者が裁判所に対して検認手続を求める申し立てを行うことができます。申し立てを受け付けた裁判所は、検認手続を行う日時を決定し、3週間連続で新聞に公告するほか、申立人以外の遺贈者やフィリピンに在住する法定相続人に対して個別に通知を行う必要があります。
遺言に基づき、不動産の所有権の移転登記を行おうとする場合、相続税を含む必要な税金の支払いが税務当局(BIR)においてなされていることが必要となりますが、実際問題としてBIRは他国の遺言の取り扱いについては慣れていませんので、無用な争いを避けるため、フィリピン国内の不動産についてはフィリピン法に基づく遺言を作成されることをおすすめします。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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