『小売業自由化法の改正審議状況』
今月の事例
現行法において、小売業については払込資本金が250万米ドル未満以下の法人の場合、外国資本が少しでも入ることは許されておらず、 他方、外国資本が入る場合、最低でも250万米ドルの払込資本金が必要であり、更に、一店舗あたり、83万米ドルの投資を行うことに加え、(a)親会社の純資産が2億ドル以上であること、(b)当該小売業者が最低2500万米ドルの投資を行った店舗を有さない場合、世界で5以上の小売店舗またはフランチャイズ店を有し、(c)小売業で5年以上の実績を有し、(d)当該小売業者の設立国がフィリピンの小売業者の参入を認めていることが必要とされています。これらに加え、事業開始から8年以内に最低30%の株式をフィリピンの証券取引所を通じて公開する義務等が課されています。
現行法の厳しい要件は外国法人が子会社を設立して小売業に参入することに対する大きな制限となっており、これを緩和することが国外から強く要請されていましたが、他方、フィリピン国内からは外資に市場を開放することにより、国内の中小業者等が影響を受けることに対する懸念もあり、両者のせめぎ合いが続いていましたが、ようやく法律改正のための法案が国会で審議され、まず、下院において改正法案(下院法案 第59号)が可決され、上院においても改正法案(上院第1840号)が2021年4月に可決されました。もっとも、下院と上院で可決された法案の主な内容は以下の表に示しますとおり、いくつかの点で違いがあります。
下院法案 |
上院法案 |
|
最低払込資本金 |
20万米ドル |
5000万ペソ(3年ごとに見直し) |
一店舗あたりの最低投資額 |
規定を廃止 |
2500万ペソ(フィリピン人資本が60%以上である場合を除く) |
株式公開義務 |
廃止 |
廃止 |
国産製品取扱義務 |
10%の取扱義務 |
10%の取扱義務 |
外国人雇用 |
規定なし |
労働法に従う |
上院と下院で議案の内容が異なる可決を行った場合、各院から4名ずつの代表者が選任されて両院協議会が設置され、そこで法案の一本化が行われ、その結果一本化された議案について、再度上院下院の両方において議決が行われます。これが両院で可決された場合、法案は大統領に送付され、そこで大統領が拒否権を発動せず、署名した場合、法案は法律として正式に成立します。法案の一本化に際して内容が大きく変わる可能性があり、また、大統領が拒否権を発動するかどうかもわかりませんので、果たして現行法が改正されるかどうかも含め、引き続き注目する必要があります。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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