会社のための名義株の保有【フィリピン法律あらかると第八十二回】
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『会社のための名義株の保有』
今月の事例
Q.フィリピン子会社の取締役とするために現地子会社のフィリピン人従業員に子会社の株式を保有させることとしました。その際に注意することはありますか?
フィリピンでは、内国法人の取締役となるためにはその法人の株式を所持していることが必要なため、日本の親会社の完全子会社であったとしても、取締役となる個人には株式を所有させる必要があります。子会社出向中の駐在員であれば帰任時に後任の駐在員に株式を譲渡することを拒否するケースはないと考えますが、現地採用のローカル従業員を取締役とするために株式を保有させていた場合でその退任を求めるときに株式の譲渡を拒絶するケースが時折発生します。そこで、そのようなことにならないように会社として何らかの事前対策ができるのかにつき解説します。
<実質的所有者の報告>
SECは2021年1月27日付けで覚書回状を発表し、これにより内国法人はSECに対してノミニー株主及び取締役を有する場合、かかる事実が発生した日から30日以内にその事実につきSECにオンライン形式にて報告することが求められることとなりました。なお、この報告を怠った場合、罰金(5,000ペソから200万ペソ及び日額1,000ペソを超えない遅延した日数分の罰金(ただし、200万ペソを上限とする))、設立許可証の停止または失効等の罰則が科される可能性があります。また、この報告に加え、GISにおいても同様の開示を行う必要があります。
次に、取締役を交代するに当たり、これまでの取締役から新しい取締役に株式を譲渡する際の手続きですが、これは通常の株式譲渡と同じように株式譲渡証書(Deed of Assignment of Share)を新旧取締役の間で締結し、BIRにて必要な税金を納めてCARを取得の上、株式譲渡の事実を株主名簿(Stock Transfer Book)に登録すれば足りるということになります。
以上が新旧取締役の間でスムーズに株式の引き継ぎができる場合の手続きになりますが、少しであったとしても将来的に株式の譲渡を求めるときに素直に応じてもらえない可能性があるときには以下の方策があり得ます。まず、ノミニー株主として株式を譲渡する際に、その個人の株式の所持は株式の実質的所有者である親会社のためであり、あくまでノミニーとして所持していることを明確にするため、会社とノミニー株主との間で委託契約書(Trust Agreement)を締結して、会社が求めるときにはノミニー株主はその所有している株式を会社に返還または会社の指定する第三者に譲渡することを義務づけておくことが考えられます。これにより、仮に将来的に株式の譲渡を拒絶された場合、この委託契約に基づく株式の譲渡請求を行うことが法律的に可能となります。なお、このノミニー株主及び取締役は外資規制を逃れるために利用することは許されていませんので、注意が必要です。
<実質的所有者の報告>
SECは2021年1月27日付けで覚書回状を発表し、これにより内国法人はSECに対してノミニー株主及び取締役を有する場合、かかる事実が発生した日から30日以内にその事実につきSECにオンライン形式にて報告することが求められることとなりました。なお、この報告を怠った場合、罰金(5,000ペソから200万ペソ及び日額1,000ペソを超えない遅延した日数分の罰金(ただし、200万ペソを上限とする))、設立許可証の停止または失効等の罰則が科される可能性があります。また、この報告に加え、GISにおいても同様の開示を行う必要があります。
次に、取締役を交代するに当たり、これまでの取締役から新しい取締役に株式を譲渡する際の手続きですが、これは通常の株式譲渡と同じように株式譲渡証書(Deed of Assignment of Share)を新旧取締役の間で締結し、BIRにて必要な税金を納めてCARを取得の上、株式譲渡の事実を株主名簿(Stock Transfer Book)に登録すれば足りるということになります。
以上が新旧取締役の間でスムーズに株式の引き継ぎができる場合の手続きになりますが、少しであったとしても将来的に株式の譲渡を求めるときに素直に応じてもらえない可能性があるときには以下の方策があり得ます。まず、ノミニー株主として株式を譲渡する際に、その個人の株式の所持は株式の実質的所有者である親会社のためであり、あくまでノミニーとして所持していることを明確にするため、会社とノミニー株主との間で委託契約書(Trust Agreement)を締結して、会社が求めるときにはノミニー株主はその所有している株式を会社に返還または会社の指定する第三者に譲渡することを義務づけておくことが考えられます。これにより、仮に将来的に株式の譲渡を拒絶された場合、この委託契約に基づく株式の譲渡請求を行うことが法律的に可能となります。なお、このノミニー株主及び取締役は外資規制を逃れるために利用することは許されていませんので、注意が必要です。
結論
A.SECに対して実質的所有者の報告を行うと共に、委託契約等を締結してあくまで親会社のための株式所有であることを明確にするべきでしょう。
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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