“最新のICT技術でフィリピンのデジタル化を加速させる”
DTSIグループ
CEO
Miguel C. Garcia さん
1997年にDTSI(Diversified Technologies Solution International) を設立。当初は富士通とのジョイントベンチャーとして設立したが、後にNTTグループに。現在もDTSIグループのCEOを務める。
DTSIグループ
取締役バイスプレジデント
井出広達氏
1997年日本電信電話株式会社(NTT)入社。長年NTTのグローバルネットワークの拡大や、新興国の通信事業者との接続交渉に従事。2017年にNTT Communicationsの出資会社のDTSIGROUPの取締役としてフィリピンに赴任。
いまではフィリピンを代表する産業に発展したBPO業界。その成長を牽引してきたのがDTSI(Diversified Technologies Solution International)グループだ。NTTグループとして発展を続けながら長年蓄積されたノウハウをいかし、IT·デジタル領域で果敢に挑戦を続ける。
編集部
御社の事業内容を教えてください。
ミゲル氏:NTTグループのフィリピンの事業会社として、コールセンターを中心としたBPO及び企業向けのICTソリューションやインフラの構築、そしてオフィス内装といったサービスを主に提供しています。私は1997年にDTSIを設立し現在もCEOも務めております。グローバル事業の拡大を目指し、2019年7月からは順次サービスなどの統合も進め、私達が活躍できるフィールドはこれまでの40か国から70か国に拡大しました。これまでリーチできていなかった南アフリカや南米などもカバーできるので、今後のグローバルでの事業展開を楽しみにしています。
井出氏:お客様の職場やICTインフラなどの基盤設計・構築からセキュリティまでワンストップでソリューションを提供できることです。お客様のCIOと意見交換する中で、セキュリティへの対策、さらに経営資源であるデータを利活用した事業活動の実現が急務であることを理解しました。これらの課題認識に対して、弊社では、事業ドメインをInteligent Business, Inteligent Workplace, Inteligent Infrastrucure, Inteligent Cyber Securityの4つに進化させ、お客様の課題をヒヤリングし、的確な提言を行いつつ、最適なソリューションを提供するために、コンサルティングの強化とサービスの拡大に注力しています。
編集部
BPO業界は今やフィリピンを代表する産業です。テクノロジーの変化に合わせて今後どのように変化するとお考えですか?
ミゲル氏:まだまだフィリピンが秘めているポテンシャルは非常に大きいとみています。従来のように年間15~20%の勢いで成長するスピード感はありませんが、BPO産業に従事している人口は140万人を超えています。純粋に人件費を比較するとインドの方が15~18%ほど安価ですが、フィリピンでは英語やホスピタリティを活かしたサービスを提供できるので、フィリピンでサービスを提供できる価値は大きいと確信しています。
井出氏:NTTのフィリピンでの事業活動は、BPO産業の発展と共に、大きな成長を遂げてきました。RPAやAIを代表とする昨今のテクノロジーは、私たちの仕事のやり方を著しく変えています。これに倣うと、業務をアウトソースする企業側のBPO事業者に対する期待もこれまでのものと大きく変わるため、BPO業界としては、お客様である企業に対して新たな付加価値を創出して行くことが求められます。新たに求められる付加価値の一つとして、テクノロジーを使って顧客満足度を高めること、が考えられますが、BPO事業者が長年に渡り集積した業務設計、運用ノウハウをテクノロジーと掛け合わせることで、企業が抱える本質的な課題を掘り起こし、それらを解決して行くことで、この国のBPO産業の価値は更に高くなると思います。
編集部
他国との競争もあり、人件費の安さだけでは成長の余地が限られる可能性もあるかと思います。フィリピンにおけるBPOのメリット、またデメリットについてどのようにお考えでしょうか?
井出氏:これまでフィリピンのBPOでは、数多くの欧米企業のカスタマーサポートの業務を対応してきました。また、バックオフィス業務やエンジニアリング業務の受け入れ先としても注目され、数多くの日系企業もこれまで内製で行なっていたプロセスをフィリピンに切り出しています。フィリピンのメリットである「若い、英語、ホスピタリティ」に加えて、他国に比べて競争力ある人件費がBPO事業を加速させた要因だと思っています。
前述の通り、テクノロジーの変化による影響はあるものの、オペレーションを担う当地の人々の想像力をスパイスとして効かせることができれば、より多様なオペレーションがフィリピンにオフショアされると考えます。
編集部
今後の展望をお聞かせください。
井出氏:NTTのグローバル事業の統合を契機に、従前のオフィス内装、オフィスICTと言ったサービスをベースに、AIやディープラーニング等のソフトウェア領域にも着手し、お客様業務のデジタル化の実現を支援します。
あと、私は、フィリピンをもっと世界にプロモートしたいと思っています。そのためには、しっかりした基盤整備が必要との考えのもと、安心安全な街作りが必要と考えます。弊社ではラスベガスのスマートシティプロジェクトに参画するなど、海外でも街作りの実績がありますので、当地のステークフォルダの協力を得ながら、ポテンシャルを秘めたフィリピンで挑戦する企業を集め、より多くの雇用を創出することでフィリピンに貢献したいと思います。
編集部
経営者として大事にされていることを教えてください。
ミゲル氏:情熱をもって誠実に、そして懸命に働きたいと考えています。リーダとして大切にしているのは、とにかく顧客を中心に物事を考えるということ。単に利益を上げるためだけにビジネスをするのではなく、社会全体をより良い方向に変えていけるよう事業を展開していきたいと思います。
井出氏:NTTはグローバル事業を拡大するために、これまで多くのM&Aを行い、グローバルでフットプリントを拡大しながら、顧客基盤を増やしてきました。この流れもあり、私は、入社以来、多国籍なメンバーと仕事をする機会に恵まれましたが、異なる国民性や習慣を受け入れ、何より尊敬を払うことを基本スタンスとしています。マネジメントして、何を目的とし、そのために何をするのか、つまり、目的に向かって地図を描くことが私の役割だと思っています。当社の事業を支える人、競争優位性、顧客満足度は私にとって非常に大切なものですが、多様化するお客様のニーズに併せて、私たち自身も変化を受け入れ、お客様にとってベストなパートナーであり続けるために、変革を続けて行く必要があります。
編集部
好きな言葉やプライベートの過ごし方を教えてください。
ミゲル氏:「あなたがほかの人から接してもらいたいように、ほかの人に接するようにしましょう」という言葉を大切にしています。人は信頼できる人と一緒にビジネスをしたいと思い、信頼しているリーダーにこそついていきたいと思うもの。だからこそ相手には常に尊敬の意をもって接するようにしています。
井出氏:日日是好日の教えを大切にしています。与えられた環境の中で、毎日を大切に、常に最善を尽くし続けることを心掛けています。これに加えて、3つの目、鳥の目、魚の目、虫の目をもって当地のミッションに従事していますが、鳥の目、つまり俯瞰的な視点を更に広げるために、多くの本を読むようにしています。もともと野球が好きと言うこともあり、往年の名選手・名監督の野村克也さんが執筆された本をよく読みます。最近では、リーダー論を読みましたが、分析・観察・洞察・決断・コミュニケーションなどの日々向上させていく能力をベースに、未来を創造する力を身に着けると言ったリーダーシップのあるべき像に触れられていて、学びがたくさんありました。
プライベートな時間は、家族と共にジムで汗を流すなど、心身ともに健康維持に努めています。あとは、映画鑑賞もしますが、子供達の英語の上達の早さに驚くばかりで、観賞後の感想会で話題についていけないことが多々あり、会話に入れないのが悩みです。